昼間でも空に星が浮かんで見える世界――それも白く輝く美しい星と不安を呼び起こすような黒い星とが空に瞬いているその世界のとある街で、主人公の青年・アルベリオはもう5年もの間、病に苦しんでいた。自暴自棄になることすら許されない「無気力さ」に支配されるその病に冒され、ただただ失意だけが降り積もるような日々のなかで、ある日、アルベリオは少女の夢を見た。正しくは少女の姿をした戦闘用機械人形。オートリカと呼ばれ、操る機士とともに行われるバトルイベントは世界中で人気を集めている。その花形オートリカのひとりであるステラが夢に現れ、弱々しい声でアルベリオに助けを求めていた。「ある様……こわいナノ」と。夢から覚めたアルベリオの心のなかでは、病がまるで嘘だったかのように、ステラを救いたい気持ちが湧き上がっていた――。
プレイヤーが機士となってオートリカとともに戦う戦略カードゲーム『autorica』。予約が開始されるとたちまち売り上げ1位に躍り出て、6月に待望の発売を迎えたそのゲームの世界観を小説としてまとめあげた『願い仕掛けの機械人形(オートリカ)』も6月9日に発売され、こちらも大好評を博しています。
発売と同時に増刷が決定したこの注目のノベライズについて、著者の木野かなめさんにお話を伺いました!!

このキャラクターたちに、ぜひ物語という形で息を吹きこみたいと思いましたね
――今回の『願い仕掛けの機械人形(オートリカ)』について、これから読む方へ、どのような作品かをお教えいただけますでしょうか。
舞台となるのは「オートリカ」という少女型の機械人形と人間が共存する世界です。
主人公のアルベリオは幼い頃に不思議なお姉さんと出会い山の中で数日を過ごしますが、成長するに従って、無気力に陥る病気に罹患してしまいます。このアルベリオがこれからどうなっていき、オートリカとどのような関わりをもっていくのか、というのが本作のお話です。オートリカとは何者で、どこから来てどこへ向かって行く存在なのか、という謎を楽しんでいただけると幸いです。
――前作(『魔女のお茶会』)に続いてノベライズに挑戦されていますが、前作はプロジェクトの起ち上げのタイミングでの執筆依頼だったと思いますので、ある意味世界観の構築などにもかかわられていたと思います。今回はゲームの骨子がある程度固まってから執筆として参加されたと思うのですが、その点で執筆の面白さ、難しさなどの違いはありましたか?。
本作では、大前提となる世界観や設定、そしてキャラ同士の関係性が定まっていましたので、それを崩さないよう注意しました。私は今回関わらせていただいた「amii games.」というゲーム会社に、クリエイターとしての敬意ももっており、amii games.様の築き上げたものを崩してはならないという思いで書かせていただきました。楽しかったのは、amii games.様とお話する中で、私の希望する「スケール感」を形にできたことですね。ここはぜひオリジナリティを出したいと思い、先方と対話を重ねさせていただきました。
――ゲームの世界観を聞いたときの感想や思い描いたイメージはどのようなものでしたでしょうか。
まず、キャラクターが大変魅力的だと感じました。それにネーミングセンスが抜群で、これは私には思いつけないなと感じましたね。キャラクターのもつ雰囲気とネーミングセンスは、読者に注目していただきたい要素の一つです。だからこそ、このキャラクターたちに、ぜひ物語という形で息を吹きこみたいと思いましたね。そのためには、作中にて主人公は「オートリカは何者か」という問いに何度も直面する必要があるだろう、というイメージをもっていました。
――ご執筆にあたって、苦労されたことや新たに挑戦してみたことなど、ご執筆時のエピソードをお聞かせください。
これは先方ともよく議論したのですが、物語の中で「設定をどこまで説明するか」という落としどころが大事でしたね。私は以前からよく言っているのですが、ファンタジー格闘漫画において「主人公がエネルギー波を撃てる科学的根拠」は示されないじゃないですか。ああ、これはこういうものだと思って読者は楽しむ。だけどすべてがそれだと読者を置いてけぼりにしますし、意味がわからなくなってくるところも出てくる。そのいい按配というか、着地点について、議論を通じ、あらためて考えるきっかけとなりました。
読書という面白さを次の世代に繋げたいですし、自分が中高生の頃に得たものを今の中高生と共感したいという思いもあります
――本作は、特にどのような方にオススメの作品でしょうか? 読みどころなども含めて教えてください。
これは前作『魔女のお茶会』のインタビューでも申し上げましたが、全年齢の方に楽しんでいただきたいと思いつつも、あえて言うなれば中高生を中心に届けたいという思いがあります。やっぱり読書という面白さを次の世代に繋げたいですし、自分が中高生の頃に得たものを今の中高生と共感したいという思いもあります。その中で本作を読む際には、ぜひ「絵」をイメージしてもらえるといいかなと思います。プロローグの、山奥の情景。アルベリオたちの暮らす街。その他、作中に出てくるいろんな舞台のイメージ。私は本作において、なるべく舞台を移動させるよう努めました。各シーンの絵を、心に描いていただければと存じます。
――前回のインタビューで、「テーマ性をもって、それが読者の明日につながるものにしたい」ということを大切に小説執筆をされていると伺いました。それから1年ちょっと経ちましたが、執筆活動についてなにか変わった点・変わらない点などはありますか
そうですね、その点は木野かなめというクリエイターの普遍的な部分ですから、大きく変わることはありません。常に、読者は一人ひとりの人間であると考え、みなさんそれぞれに訪れる日々の生活を想像しています。
今回の取り組みを経て再認識したのは、クリエイターに対するリスペクト、という部分でしょうか。もちろん以前から多くのクリエイターを尊敬しているのですが、「その方のどんな部分をすごいと思っているのか」を具体的な言葉で自分に落としこむのが大事だと感じました。これからもいろんなクリエイター様と関与し、自分の血肉にしていきたいと思います。
――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。
本作を手に取ってくださった読者様には感謝の念が絶えません。ぜひ長く、お手元に置いていただけると嬉しいです。そして今後はやはり、長い取り組みになると思いますが、海外展開を個人的に進めていきたいと考えています。また、現在は新作のシナリオとキャラクター作成中でして、それも形にしていければいいなと思っています。私は昔から新しい取り組みをするのが好きですから、これからも皆様に喜びと驚きを届けられるよう努めてまいりたいと存じます。

Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?
まず、本業でポジションを上げてもらえたことでしょうか。私は企業の監査部で働いているのですが、各監査の監査長を任されるようになりました。こうやって他者に「あいつならやってくれるかな」と思ってもらえること、必要としてもらえることはとても嬉しいですね。私のペンネーム「木野かなめ」も、「森という多くの人々の間で、必要とされる木になりたい」という意味でつけています。
あとは高校時代に作った曲に伴奏をつけ、YouTubeでUPしていることですね。ぜひ、「木野かなめチャンネル」に遊びにきてください(笑)。
Q:ご自身はどんな小説家だと思われますか?
前回のインタビューでは、事前調査を大事にすると申し上げましたので、今回は別の側面で考えてみましょうか。
そうですね、人間の喜怒哀楽をなるべく描こうとする小説家だと思います。どんな人間も喜ぶものごとがあり、怒るポイントがあり、悲しむ側面があるわけです。シーンを通じて、キャラクターたちのいろんな側面や温度感、そして雰囲気を描きたいなと思っています。本作『願い仕掛けの機械人形』にもコメディシーンを入れてみましたので、どこにあるのかぜひ探してみてくださいね。
Q:おすすめの本を教えてください!
では今回は、友達作家の作品を紹介させていただきます。
今やKADOKAWA様の看板作家といっても過言ではない夢見里龍先生のデビュー作『死者殺しのメメント・モリア』、GA文庫大賞を受賞して飛ぶ鳥を落とす勢いの志馬なにがし先生のデビュー作『透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。』、そして各種ノベライズの大家である田中創先生の最新作『都市伝説解体センター 断篇集 痕』ですね。
■『死者殺しのメメント・モリア』夢見里龍(KADOKAWA)
夢見里先生はとにかく言葉選びがすごい。よくこんな表現を思いつくなと尊敬します。なお、商業作家の浅田千恋先生と中華を食べに行ったことがあるのですが、その時浅田先生が「僕の中で、言葉選びに関してはツートップがいる。夢見里さんと、あなただ」と言ってくださいました。三国志の「君と余だ!」を思い出しましたね(笑)。
『透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。』志馬なにがし(SBクリエティブ)
志馬なにがし先生は、よく人間の性質を捉えていらっしゃるなと思いますね。シリアスパートと日常パートのバランスもよく、読者のことをしっかりと考えられている作家様だと感じます。
■『都市伝説解体センター 断篇集 痕』田中創、ほか(集英社)
田中先生の文章はとにかく読みやすい。流れるように頭の中に入ってきます。あっという間に作品世界に入ることができますね。
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三者ともが三様に、読者をとても大切にしていらっしゃると感じます。この3作、ぜひ楽しんでくださいませ。そして木野かなめの作品も、今後ともご愛顧いただけると幸いです!
木野かなめさん最新作『願い仕掛けの機械人形(オートリカ)』

発売:2026年06月09日 価格:1,900円(税込)
著者プロフィール
木野かなめ(キノ・カナメ)
奈良県生まれ。千葉県在住。小説投稿サイトなどでの執筆活動を経て、2022年より小説担当としてボードゲームプロジェクト『魔女のお茶会 TEA PARTY OF WITCHES』に参加。そのノベライズである『魔女のお茶会』で2025年にデビュー。その他の著書に『アイドルグループの作り方!』(共著)がある。




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