人間と魔女が共存する惑星アニン。たびたび現れ、惑星を覆い尽くしかねない「穢れ」を魔女たちが祓うことで、アニンの平穏は長く保たれていた。しかしいま、科学の力で穢れを浄化する術を手に入れた人間たちは魔女への感謝を忘れはじめ、そんな人間たちをそれでも護るべきか、それとも排除してしまうのか、魔女たちもふたつの意見の間で揺れ、それは一触即発の域にまで達していた。――今回はそんな壮大な物語『魔女のお茶会』をデビュー書籍として刊行したばかりの木野かなめさんにお話を伺いました。

クラウドファウンディングで達成率2200%超を果たし製品化される同名ボードゲーム『魔女のお茶会 /TEA PARTY OF THE WITCHES』(制作・LAUGHSKETCH.inc)プロジェクトの一環となる本作への思いや、創作活動のなかで目指すものなどをたっぷり語っていただきました。

自分の書いたものがボードゲームや音楽という別のコンテンツと連動するのはとても興味深かった

――今回の『魔女のお茶会』について、これから読む方へ、どのような作品かをお教えいただけますでしょうか。

アニンという星では、魔女と人間が共生しています。魔女には、人間と仲良くしようというグループと、人間を淘汰しようと主張するグループがあるのですが、ある日この二派が全面戦争を開始するのです。『魔女のお茶会』とは、主人公の遠野華茂(とおの・かも)が、この戦争を止めようと世界の各地を旅するお話です。また、穢れ、という存在がありまして、これはアニンから「星のエネルギー」を吸い取る厄介な存在です。魔女たちはこの穢れを祓う役割を担ってきたのです。そして華茂は旅の先でこの穢れの正体に行き着く、というシナリオになっています。本作では、心と心の繋がり、というものをテーマとして扱っています。

――この作品は同名のボードゲーム『魔女のお茶会 TEA PARTY OF THE WITCHES』の小説化企画となっていますが、このプロジェクトに参加することになったのはどのようなきっかけだったのでしょうか。オファーを貰ったときのお気持ちや引き受けようと決めた理由、ゲームの概要を聞いて生まれたイメージなども含めてお教えください。

PJ(プロジェクト)が立ち上がった当時、ラノベを主戦場にしている作家は限られている、ということで運良く私にお声がかかりました。自分の書いたものがボードゲームや音楽という別のコンテンツと連動するのはとても興味深く、PJの成功を願って引き受けたものとなります。ゲームに用いられる作品ですから、ゲーム性に繋げるため、バトルを中心とした作品に仕上げようと考えました。

限られた字数の中で、どうやって10名の魔女を読者に印象づけるか。そういうところで、あれこれ悩み工夫した記憶があります

――ご執筆にあたって、苦労されたことや、当初の構想から変わった部分など、なにかエピソードがありましたらお聞かせください。

一作の長編小説という意味では、そこには本来、「適正な主要登場人物数」というものがあります。私がこれまでに書いた長編では、読者の印象を深めるためにも、できる限り5名以内程度のイメージで主要な登場人物の数をセットしてきました。しかし今回はゲームに用いる10名の魔女を、主要登場人物として描かないといけません。限られた字数の中で、どうやって10名の魔女を読者に印象づけるか。そういうところで、あれこれ悩み工夫した記憶があります。

――本作は、特にどのような方にオススメの作品でしょうか? 読みどころなども含めて教えてください。

本作は全年齢の方に楽しんでいただけるよう尽力しておりますので、世代に制限を設けるものではございません。ただ、あえて申し上げるのであれば、本作の大枠のジャンルは「ライトノベル」です。ライトノベルについての私なりの定義は、「中高生を対象とした作品」ですから、その定義通り、中高生の方々に読んでいただけるといいなと感じております。個人的な推薦ポイントは次の四つです。

 ①工夫を凝らしたバトル
 ②主人公の遠野華茂を取り巻く、「穢れ」の謎
 ③それぞれの魔女の詠唱
 ④クライマックス付近(書籍内P.326とP.327)の表現

作家木野かなめは、常にあなたのそばにいたい、あなたとともに歩いていきたいと思っています

――小説を書くうえで、ご自身にとっていちばん大切にしていることや拘っていることをお教えください。

テーマを設けることです。小説は、「小さな」「説」と書きますが、小さくも「説」を有したコンテンツであると私は考えているのです。それは、学園ラブコメであっても、異世界でハーレムを構築する物語であっても変わりません。「説」すなわちテーマを設けることが、私にとって最も大切なことです。テーマとは、その作品の中だけで完結し閉じこめられるものではありません。ゆえに「説」なのです。私は、そのテーマが読者の明日に繋がるものであるように、と心がけております。この物語を読んで読者は明日、何を思うだろうか。何を感じるだろうか。その想像をけして欠かさぬよう、作品に取り組んでいる次第です。

――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。

このたびはこちらの記事を読んでくださり、ありがとうございました。私のことを初めて知った方もいらっしゃるとは思いますが、名前を心の隅に置いていただけると幸いです。私は今後、五つのことに取り組みたいと考えております。

一つ目。本PJのように、出版社様からの案件に関して積極的に取り組むこと。

二つ目。自分にとって新しいジャンルである、児童文庫に挑戦すること。

三つ目。作家仲間との縁を大切にし、ゆくゆくは文学フリマなどのイベントに参加すること。

四つ目。創作を海外に展開すること。特に英語圏については優先的に進めたいと感じています。

五つ目。自作の広報となる動画を作成し、youtubeで展開し、知名度を上げること。

四つ目と五つ目は少し大きな話になってしまいますし、実際全てやるだけの時間はとれないと思います。ですが構想としては、上記の五つについて取り組んでいきたいと考えております。これからも末永く、ご愛顧をいただけると幸いです。作家木野かなめは、常にあなたのそばにいたい、あなたとともに歩いていきたいと思っています。

Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?

やはり第一は、『魔女のお茶会』の出版・刊行になります。幼い頃からの夢が叶い、たいへん嬉しい気持ちです。これも、出版社の関係者様、背中を押してくれた友人、そしてなにより読者様のおかげです。あらためて、深くお礼を申し上げます。

あと、本作の刊行に際して前職の方々に連絡をしてみたのです。学生時代の友人にも連絡をしました。そうすると、もう長く会っていないにもかかわらず、まるで昨日会ったかのように親しくお祝いの言葉をくださりました。またこれがきっかけで、何人かの方々とはお食事に行く約束をしました。時間が過ぎてしまっても、こうやって優しく接してもらえる。これもまた、刊行と合わせて嬉しいことの一つでした。

Q:ご自身はどんな小説家だと思われますか?

木野かなめという作家の特徴はいくつかあるのですが、一つ絞って申し上げますと、作品をつくるにあたって、入念な事前準備や取材を行うことだと思います。つまりしっかりと下調べをするのです。かつてSFを書いた時、タイと北海道を舞台にした小説を書いた時、陸上の小説を書いた時、それぞれ100冊近い書籍を読み込み、事前準備としました。本作『魔女のお茶会』においても、過去の風景を描くために準備と調査を試みています。それが、作品の輪郭を太くすると考えるからです。

Q:おすすめの本を教えてください!

それでは影響を受けた本を三つ紹介させていただきます。

■『避暑地の猫』宮本輝(講談社)

私の作品には、人間の心理に深く潜りこんでいたり叙情的だったりする箇所があるのですが、これは宮本先生の作品に影響を受けていると思います。

『ナオミとカナコ』奥田英朗(幻冬舎)

私は各シーンを描くにあたり、「事件を起こしてシナリオを進める」ということを心がけています。これは奥田先生の作品から、強く学んだことです。

■『僕は友達が少ない』平坂読(KADOKAWA)

小説という媒体を生かしてどれだけ面白いことができるか、という挑戦者的な試みについて影響を受けています。また、ヒロインの造形についても、大変勉強になるところがありました。

どの先生の作品もお勧めですので、ぜひご一読いただけるとよいかと存じます。しかし3冊に絞るのはなかなか難しかったですね(笑)。他にもお勧めしたい本がありますが、それはまた、別の機会にてお話ししましょう。こういった、本のお話でもかまいませんし、他のことについてのお話でもかまいません。Xに生息しておりますので、ぜひお気軽に絡みに来ていただけると幸いです。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


木野かなめさんデビュー作『魔女のお茶会』

『魔女のお茶会』(木野かなめ) ステキブックス
 発売:2025年02月26日 価格:1,500円(税込)

著者プロフィール

木野かなめ(キノ・カナメ)

奈良県生まれ。千葉県在住。小説投稿サイトなどでの執筆活動を経て、2022年より小説担当として本プロジェクトに参加し本書を上梓。

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