2017年に刊行され、タロットカード占いの教則本としては異例のヒット作となった『78枚のカードで占う、いちばんていねいなタロット』。続くシリーズ3部作も含め、精力的な執筆活動で次々と著書を発表している「占術家」のLUA(るあ)さんをお迎えして、占いを始めたきっかけから、ご自身の著作についてのお話などを伺ってみました。

(聞き手:中村航、相良洋一)


『ステキチャンネル』では、LUAさんをゲストにお迎えした特別鼎談の動画も公開中です。特集記事とあわせて是非ご覧ください。


定年がなくて、キャリアを積めば積むほどいい仕事ってなんだろうかと考えた

LUA

中村航(以下:中村):LUAさんの肩書は「占術家」ということなんですが、それは占い師さんということですか?

LUA:占術研究家とか、いろんな呼ばれ方があると思うんですけど、私はミリタリーとかも好きなのであえて紛らわしく「戦術家」との同音異義語を狙おうかなと思って、占術家にしています。

相良洋一(以下:相良):僕が週刊誌で働いていた頃の話なのでかなり遡るんですが、知り合いから「六本木にすごく面白い店がある」って教えられて、行ったのがLUAさんが当時やっていた「LUA’s Bar」っていうお店だったんですよ。

中村:何年くらい前の話ですか?

LUA:15年くらい前ですかね。

相良:LUAさんがお店に立ってシェーカーを振りつつ、希望する方には占いをしてくれるお店だったんですよ。当時からトークもキレッキレですごく楽しいお店だったんです。内装も凝ってましたよね?

LUA:全部アンティークで、ゴールドの壁に赤い照明だったんですよ。だから「酔っぱらってても酔っぱらってなくてもみんな赤ら顔だよ」って(笑)。

相良:いま東京ミッドタウンがある辺りの近くで、マスコミ関係者とかがいっぱい集まってたんですよ。

LUA:でも、まだミッドタウンの開業前だったので、「ミッドタウンがオープンしたらもっとお客さん来るかもね」とか言っていたくらい、閑古鳥が鳴いてるような日も、すごく賑わう日もありました。

中村:へえー、行ってみたかったな。

相良:伝説の店ですね。それで、その占いが当たると評判で、いまにつながるわけなんですが、LUAさんはそもそもなんで占いを始めたんですか?

LUA:私は前職がコンピューター・グラフィックスのデザイナーだったんですけど……。

中村:なんと!

相良:へえ、そうだったんですね。

LUA:そう。バリバリのコンピュータ系だったんですよ。だから名前もアルファベットで「L・U・A」と書きますが、これ実は、そのころから使っている、「LADY YUKA」というハンドルネームの略なんですよ。

中村:レディー・ユカ? レディー・ガガより先

LUA:ええ、先です、先です。「LUA」という言葉にはポルトガル語では「月」という意味があって、偶然それらしいものになってるんですけど、「LADY」のL、「YU」「KA」の母音を取ってLUAです。CGデザイナーだったころにネットゲームとかで使うハンドルネームとか、ハイスコア出したときのエントリーネームを「LUA」にしてたんです。ハンドルネームって、いまは日本語でもなんでも使えるんですが、その当時は“アルファベット大文字3文字のみ”だったんですよね。

中村:はいはいはい。なんか懐かしい話ですね(笑)。

LUA:名前だけを使うと「YUK」になっちゃって、ダサくてやだなあって思って生み出した名前です。

相良:「ゆか」さんは本名なんですね。

LUA:そうです。CGデザイナーだったころは徹夜も多かったんですが、30歳前後になってこのまま続けるかどうか迷いが生まれて。というのも、コンピュータってバージョンアップするたびに覚え直さなきゃいけないことも多いじゃないですか。

中村:そういう面はたしかにありますね。

LUA:それにもう疲れてきちゃっていたんです。「そろそろこの仕事は引退して、ほかのことをやろうかな」と思いはじめて、なにをやろうか考えたんですね。覚えたことを蓄積していける仕事がしたいなと思ったので、そうするとコンピュータとかテクノロジー関係じゃないなと思って。そうしたら、定年がなくて、キャリアを積めば積むほどいい仕事ってなんだろうかと考えた末に、伝統工芸師か占い師っていうのが浮かんできたんですよ。それで占いの学校に行ったというのがきっかけです。

相良:意外な理由ですね。“堅い仕事をやりたくて占い師に”っていうことですもんね。

LUA:占い師の世界では、十分「若手」でいける年齢でしたしね。

中村:占いに対する興味、とか、ご自身が占ってもらった経験から、とか、そういうことではなかったんですね。

LUA:どちらもなかったです。だから伝統工芸師とすごく迷ったんですよ。ただ、当時ネイルアートにハマッていて爪を長く伸ばしてたんですよ。もし伝統工芸を目指すなら多分爪は切らなきゃいけないじゃないですか。それはちょっと嫌だったから、とりあえず占いは学校もあるみたいだし、爪も切らなくていいだろうから行ってみようかな、っていうくらいの考えで。ところが行ってみたらハマッてしまったんです。

中村相良:(笑)。

LUA:もともとオカルトはすごく好きだったんです。気味の悪い世界とかホラーとか、オカルティックな儀式への憧れみたいな、中2病的なものが。タロットカードはミステリアスだと思っていました。不用意に扱うと呪われるとかいう話も聞くし、そういう魅力を感じて、いいなと思ってました。


タロットに怒られてる感じもして、これは本気出してやってみないといけないかな、と

LUA

中村:それから占いの学校を出て、占いの仕事をはじめたわけですね。

LUA:そうですね。民間のものですけど学校でライセンスを取って、はじめました。

中村:そのときにはもう、「占いって楽しいな。天職だな」っていう気持ちだったんですか?

LUA:人を占うことよりも、占いというもの自体が深くて面白いなと思ってました。面白い経験があるんですけど、占い師が自分に向いているかどうかでタロットカードを引いてみたんですよ。そうしたら≪魔術師(マジシャン)≫のカードが出たんです。≪魔術師≫って、「なんでもできる」っていう意味を持つカードで、「才能がある」って読めるんですね。普通、それって「向いてる」っていうことだと理解するじゃないですか。

中村:そうですね。めっちゃ向いてる、ってことですね。

LUA:それで……、学校では「同じことで何度もカードを引いてはいけない」って教わるんですけど……。

相良:それはタブーって聞いたことがあります

LUA:そうですそうです。でも私は、それは「偶然に同じカードが出ることはないので、答が変わっちゃうのは困るから」っていうことだと思ってたんですね。だから2度占わないでくれっていうことなんだと。

中村:建前でタブーって言い方をしてるんじゃないかって疑ってたんですね。

LUA:ええ。それで、もういちどカードを引いたら、また≪魔術師≫が出たんです。さらに引いてもまた≪魔術師≫。

相良:3回連続?

LUA:それでも私は穿った見方をしてて、使ったのが自分のカードだから、トランプの神経衰弱とかでもついつい同じカードを引いちゃうみたいに、なんとなく見分けがついちゃってたのかもしれないって思ったんです。それでインターネットの無料のタロット占いのサイトで引いてみたらやっぱり≪魔術師≫。

中村相良:へえ~(驚)。

LUA:ちょっと気持ちが悪いなって思ったんですよ。なんか、タロットに怒られてる感じもして、これは本気出してやってみないといけないかな、と。

中村:「お前、まだ気付かないのか!?」って?(笑)

LUA:「目を覚ませ!」みたいなことなのかと。

中村:そういえば、実は僕も、デビューするときに「あなたの名前はちょっと……」的なことを言われたんです。つまり、ペンネームを考えてくれと。そういう、本名へのダメ出しという珍しい事態があって(笑)。それで考えたんですよ。だけど、字面とかに凝りはじめたらなにがいいのかわからなくなっちゃって……。で、なんとなくこれかなって思った名前を姓名判断にかけたら、向いてる職業が「小説家」って出たんですよ。それで迷いなく「中村航」に決めたんですけど、なんかいまの話とちょっと似てますよね。

LUA:へえ~! 本当ですね。

相良:背中を押してくれたってことですよね、占いの結果が。


印象に残るお客さんは?

LUA

中村:それからいろんな人を占ってこられたと思うんですけど、エピソードというか、印象に残るお客さんとかはいましたか? 話せる範囲でいいんですけど。

相良:LUA’s Barで占っていたころなんかは、いろんなタイプのお客さんを占ったんじゃないですか?

LUA:なんかね……幽霊のお客さんが来ました。

中村相良:(爆笑)。

LUA:ちょっと電波系の話みたいになっちゃうんですけど(笑)。

中村:「占ってくれ」と?

LUA:占ってくれじゃなかったんですけど、ドリンクを作ったんですよ。

相良:幽霊相手に、LUA’s Barで?

LUA:ほかのお客さんが誰もいないときにいらして、ジン・トニックを注文されたんです。初めていらしたお客さんで、茶色いスーツの背の高い男性でした。上品な雰囲気の方だったので「常連になってくださるといいな」とか思いながら、作ってお出ししたんですよ。お待ち合わせだって仰ってて、どれくらい時間が経ったのかわからないんですけど、その待ち合わせの女性もいらしたんですよ。それで女性の注文を聞かなきゃと思って顔を上げたら、そこには誰もいないんですよ。ジン・トニックのグラスはそこにあって、ちょっと氷が溶けていて、注文の伝票も書いてあるんです。まあ、待ち合わせして落ち合えたから、その霊たちはどっか行っちゃったんでしょうけど。だけど無銭飲食ですよねえ。舐めてますよね、ある意味。

相良:すいません。いろいろと情報が渋滞を起こしてるんですけど(笑)。

中村:ちょっとよくわからなかったんですけど(笑)。まず、茶色のスーツの背の高いお客さんが来て、ジン・トニックを頼んだんですね? それで待ち合わせだと言った。で、女性の方は……どうしたんでしたっけ?

LUA:女性の方はワンピースでした。

中村:ワンピースの女性の方が、あとで現れたんでしたっけ?

LUA:はい、待ち合わせであとから。それでオーダーを聞こうかなって思って見たら、2人ともいなくなってる。

中村:その女性も幽霊なの?

LUA:幽霊ですね。

中村:あ、幽霊の待ち合わせ場所になってたってことなんですね!

相良:その茶色のスーツの男性が幽霊だって気づいたのはいつなんですか?

LUA:それはジン・トニックを残して誰もいなくなったとき。

相良:あ、じゃあそれまでは普通のお客さんだと思って接客していたんですね。

LUA:それで最初、私寝てたのかなってって思って、「あれ? 夢だったのかな」って思ったんですけど、ジン・トニックはあるし、伝票も出してあって、いつもお客さんにやるようなことがひと通りしてあったんですね。だから「ええー!?」って。

相良:それって、占いと全然関係ないじゃないですか(笑)。

LUA:あ、そうですね。変わったお客さんってだけですね(笑)。

中村:(笑)。まあでもたしかにいちばん変わったお客さんでしょうね。

LUA:でも、スピリチュアルな作業をするじゃないですか、占いをする場所って。だから幽霊も引き寄せられて来たのかなって。

相良:その幽霊はともかく、けっこうみなさん、占いが目的でお店にいらっしゃってたんですか?

LUA:そうですね。それを知らずにいらした方でも、「あ、占いをしてくれるんだ」って占っていかれましたね。

相良:お酒飲んでる方への占いだから、ちょっとめんどくさいお客さんもいらしたんじゃないですか?

LUA:まあ、たしかにそういう方もいらっしゃいましたね。占いバーと知らずに入ってきて、わざわざ「俺、占いは嫌いなんだ」って言ってくるお客さんもいました。こっちは「そんなこと聞いてないよ」っていう話だし、嫌がらせとしか思えないじゃないですか。おしぼりを出したら手を拭きながら「占いは嫌いなんだよ」って言うから、「じゃあ帰るならいまがチャンスですよ。もうおしぼりは出しちゃいましたけど」って答えたら、「あ……じゃあ1杯だけ」って(笑)。

相良:さすがの迫力ですね(笑)。

中村:あの、まだ占いらしい話がひとつも出てきてないんですけれど(笑)。

相良:ヤバい客との話しか出てこない(笑)。

LUA:たしかにそうですね(笑)。そういう思い出のほうがいっぱいあるんですよ。

中村:でも大部分のお客さんからは、占いで感謝されてたんですよね。

LUA:カードを混ぜているときに、私の手に自分の手を重ねてくるお客さんもいましたよ。男性の。

中村:ああー。

LUA:セクハラですよ。こっちは真剣に占おうとしてるのに、そういうことをしてくる。それで頭にきたから睨みますよね。

中村:うんうん。

LUA:すると「あ、邪魔ですね」って半笑いで誤魔化そうとするから、睨みつけたまま「無論です」って。

中村相良:(爆笑)。

LUA:そうしたら「あ、すいません」って言っておとなしくなりました。

中村:ようやく、ちょっと占いの話になりましたね。「無論です」いいですね!

相良:無論ですね。僕は満足しました。もう十分な気がします。


3つのアプローチで書籍を導き出したお薦め書籍フェア開催中です

相良:今回、LUAさんにお話を伺おうと思ったのは、LUAさんがいま書店様とコラボをしてるというお話を耳にしたからなんですが。

LUA:2020年に創業70年を迎えた東京の書店の「書泉」さんが、「芳林堂書店」さん4店とグループで開催中の『書泉70周年祭』(~11月14日・日曜日まで)で、私が監修した「あなたにお勧めしたい本フェア」という企画をやっています。私が占いでタイプ別でお薦めの本を導き出して、書店員さんたちがそれに沿ったレコメンドする書籍を揃えてくださってるんです。店員のみなさんが熱く語る手書きのポップをつけて。

中村:面白そうな企画ですね。

相良:「ナニヨモ」らしい話になりましたね(笑)。でも、書籍も結構な数になったんじゃないですか?

LUA:タロットで大アルカナの22枚分、血液型で4つ、それと星座別の12で分かれていて、冊数としては38冊になっています。いちおう占いの種類によってもポイントを分けてあります。血液型ではたとえば「小難しいのは好きか?」とか性格的なところで合いそうなもの。星座占いの場合はその時期の運勢で見た、ラッキーアイテムになりそうなもの。タロットは引いたカードで「いまのあなたに必要なのはこの本ですよ」っていうもの。そういう3つのアプローチで導き出しています。まだあと少し期間が残っていますから、ぜひ覗いてみてください。

中村:せっかく書籍の話になりましたので、次回はLUAさんがこれまで出版された著書について、お話を伺わせてください。

LUA:はい。よろしくお願いします。


占術師・LUA先生監修 あなたにお勧めしたい本フェア

日時:2021年10月1日(金)~11月14日(日) 
場所:書泉・芳林堂書店 全店

書泉70周年祭
https://www.shosen.co.jp/fair/149469/


後編 > なにをするにしても、ポジティブでいたい。”世界平和”が大きなテーマ。


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著者プロフィール

LUA

占術家
2004年、コンピュータ・グラフィックスのデザイナーを経て占術家に転身。東京・六本木でLUA’s BAR(占いバー)を営んでいたことも。月刊誌『MISTY』の連載で個性派占い師として注目され、2017年発売の著書『78枚で占う、いちばんていねいなタロット』(日本文芸社)は大ヒットベストセラーに。占いやおまじない、心理テストのほか、コラムや児童向けの怖い話などを執筆・監修している。蜘蛛好き。ホラー好き。東京都出身。大阪府在住。
占術:タロット、西洋占星術、ルーン、ダウジング、数秘術など

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