自らの楽曲を原案とした絵本『誰もがみんなサンタクロース』(ステキブックス)を制作した、BIGMAMAのボーカリスト・金井政人(かないまさと)さん。

前回は制作のきっかけのお話を伺ったので、今回はその作品内容や、作品に込めた想いを聞かせていただきました。

聞き手:amehal)


たくさんの動物たちの耳が出てくるページが、いろんな意味で余白が生まれていて、すごく象徴的でいいなあと思っています

――『誰もがみんなサンタクロース』では、前作『眠らぬ街のメリーゴーランド』に引き続きmikimikimikky1016.さんに絵を担当いただいておりますが、今作の絵の魅力などを教えてください。 

今回の作品では動物の描写がたくさんあるといいなと思っていたのですが、前作でメリーゴーランドの馬を描いていただいていましたし、拝見した個展でもたくさん動物テーマの素敵な作品を描いていたので、イメージが合うと思いました。

これまでまったく関わったことのない方と一から作るお仕事も楽しいのですが、今回の場合はもう僕の頭の中に強くイメージがある状況だったので、それを汲んでくださる方と一緒に作業するのがベストだと考えて、mikiちゃんにお願いすることにしました。

――『誰もがみんなサンタクロース』の見どころを教えていただけますか。

これはたぶん、絵を描いてくれたmikiちゃんはどう思っているかわからないんですけど、最初のほうの、見開きにたくさんの動物たちの耳が出てくるページがあるんですけど、すごく象徴的でいいなあと思っています。

あのページ、ワクワクするんですよね。いろんな意味で余白が生まれているページだなあって感じるんです。

絵としての余白というのもそうなのですが、たとえばこの本に僕が書いた文章が入っていなかったとして、「この絵を見てなにか物語をつけてください。なにかお話をしてください」って言ったら、あのページがいちばん話せると思うんですよ。

だからいちばんエネルギーが生まれているページって、あのページなんじゃないのかなと僕は思っていて、だから好きなんです。

5歳児の自分だったら、「このあとこうなってこうなって、こうでしょ?」って言いたがるだろうなって。エネルギーが生まれそうなページになっていると思います。

このページは冒頭で、通り過ぎてしまいそうなページなんですけど、絵にはけっこう細かくオーダーをした記憶があります。

ほかにもお勧めしたい点はいろいろありますが、そのページを見ながらお子さんと親御さんが一緒になってワクワク話を膨らませてもらえたりしたら嬉しいですね。


自分の言葉がロープだとしたら、なにか繋ぎとめることもできるけれど、それが自分の首を絞めることもある

――前回のお話でもちょっと伺えましたが、この本を届けたい読者のイメージはありますか?

僕たちのバンドってキャリアも長くて、一緒に年を重ねて、ずっとBIGMAMAのことを好いてくれているファンの方も多いんですね。そうするとご自身に子供が生まれたり、甥っ子や姪っ子かもしれないけど小さなお子さんとかかわる機会も増えてきてると思うんです。

もしファンの方が、そういう子供たちにこの本をプレゼントしたとき喜んでもらえることに責任を持ちたいと思いながら制作していましたから。

ものすごく僕の個人的な部分でも、小さな子供のいる友人を訪ねる時に、
出来れば何か手土産を持っていきたいと思いますし、そう言う時に自分が心を込めて作った絵本を、万が一喜んでもらえたら、それはとても幸せなことですから。

ファンの方たちって、少なくともどこかに僕と価値観を共有している部分があると思っているので、ご自分や誰かの小さなお子さんにこの本をプレゼントしたときに、「わあ、ありがとう!」って言ってもらえるところまでは責任を持たないといけないなと思っていました。

だから「いちばん届けたい相手」というのは、そこなんだと思います。

――贈り物をひとつのテーマとして描いた絵本が、素敵な贈り物になってほしいという、意味の重なりを持って制作されたということですね。

押しつけるような形になってしまったらちょっとおこがましいですけれど。

でも相手に喜んでもらえることを一生懸命考えることの、誠実さだったり有意義さって大切だと思うんです。贈り物って、選んでるときがいちばん楽しいっていうこともあるじゃないですか。

まだこの絵本の中身を知らないまま予約してくださっている方もいるし、本ってその中身の詳細まではわからないまま買うものじゃないですか。表紙とかキャッチコピーが手掛かりにはなるけれど。それってすごく、信用とか信頼の為せることだと思うんです。

その信用はずっと積み重ねていきたいものですよね。本来の音楽でももちろんですけど、今回は特にそれを感じています。

贈り物にもそういうところがあって、中身がわからないものを受け取って「ありがとう」って言う、それが素敵なものかどうかっていうのは、目に見えないお互いの信頼関係の上に成り立っているんだと思うんで、それもまたロマンティックなことだと思います。

目に見えないもののやりとりで、結果として幸福感が生まれたりとか。

もちろんそれがストレスを生むこともありますけど、結局それが世の中のすべてなんだと僕は思っていますので。

僕も人に「与える」とまでは思っていないんですけど、でもそういう仕事をしているわけですからね。自分の言葉がロープだとしたら、なにか繋ぎとめることもできるけれど、それが自分の首を絞めることもあるんだということを感じてはいますし、それを仕事にもしていますから、届けることの責任感みたいなものはずっと持っているつもりです。


今集まって志を共にしている人間とどんな楽しいことができるかっていうのが大切

――ありがとうございます。ここでBIGMAMAの活動についてもお話を伺いたいと思います。今年の母の日に、正式にビスさんをメンバーに迎えてからの初めてのクリスマスライブのご予定があると思いますが、そこに込めた思いなどを教えてください。

「BIGMAMA Christmas 2021 -360° acoustic Live-」

クリスマスにライブをしようと考えたときに、東京都内で選択肢となるライブハウスやホールが、僕がいままで思っていた場所とどんどん変わっているような気がして、改めて“ライブをする場所”の考え方が振り出しに戻ったような感じがありました。

どこでどう思い出を作っていこうかなとか、どんなところで自分たちの音楽が鳴り響くと、より沁みたり吹き飛ばせたりするのかなっていうことを常々考えていて、もともと円形ステージをやってみたかったんですね。

今回はアコースティックであることや、360度から見えるステージでライブをやってみたかったことや、会場スケジュール、それからクリスマスっていうようなことが上手く噛み合って、こういう形でライブができることになって。

全方位的に、どこから観ても楽しめますよ、素敵だと思いますよ、BIGMAMAってそういうバンドですからっていうライブをやりたいっていうことが表現欲求としてあって。それが、アコースティックでより肉体的というか、ごまかしがきかないところでも楽しんでもらえたらと思っています。

新体制になったから今までとは……とかいう気持ちは、正直あまりなくて、今集まって志を共にしている人間とどんな楽しいことができるかっていうのが大切ですね。

過去は過去で宝物で財産ですけど、そんなに気にしなくてもと思っています。

選択肢は多いほうがカッコいいし、味方は多いほうが嬉しいから、それに対してはできる努力はするしやるべきことはやりますけど、年を重ねると時間が流れる速さが変わってきてあっと言う間に毎日が過ぎちゃいますから。同じ場所で2回目という状況に、なかなかドキドキしづらくなってますから、そういうことに対して自分から、ドキドキする方向に持っていかないと、ドキドキしてもらうこともできないですよね。それがたとえばライブの会場であったり演出であったりするのかもしれないですが。

同じ映画を2回観せられて、2回目のほうが良かったって思えるのはよっぽど素晴らしい作品じゃないですか。だから、ずっとその戦いをしているというようなことでもあるんですけど、より感情というか感覚を動かすのがアーティストの仕事であり、そこがいちばんの腕の見せどころなだと思うので、相手の感情や感覚を動かすためには、自分自身も動いていかなきゃできないんですよ。

そういうときに、今回のライブの会場とかクリスマスっていうシチュエーションだったりとか全部でポジティブな状況というか、絶対に楽しくなる要素が揃えられたので、それはすごくよかったなと思います。

楽しみにしていてください。


幸せな気持ちになれる出来事のひとつになれたら

――それでは最後に、『誰もがみんなサンタクロース』という作品について、改めてメッセージをいただけますでしょうか。

この本では、サンタクロースって気持ち次第で誰でもなることができて、それでいて受け取るだけじゃなくて、贈る側にもその贈った瞬間になにか心の中で受け取っているものがあるんだよっていうことを、ひとつの物語として自分なりに表現できたと思っています。

大人でも子供でも、誰でも楽しめるように書けたと思いますので、一緒に楽しんだり読み聞かせてあげたりプレゼントしたりと、いろいろな形でこの絵本を誰かへの「贈り物」にしていただけたら嬉しいです。

いまの時点では、今年のクリスマスがどういう状況なのか、街に人が溢れているのか、家族や友達とパーティーができているのか、そのときの状況を予想するのは誰にとっても難しいことだと思います。でもクリスマスという日に起きる出来事ってとても幸せな気持ちになれることが多いと思うんです。この本がそういう出来事のひとつになれたら幸せです。


プロフィール

ヴァイオリンとバケツを含んだ5人編成のROCKバンド「BIGMAMA」のヴォーカルであり、ほぼ全楽曲の作詞・作曲を担当。BIGMAMAは2002年八王子にて結成し、2017年の初の武道館公演はソールドアウト。今日もどこかで楽器を鳴らしたり歌ったりしながら、たまに本を書いたりもする。

2021年11月17日(水)に3作目となる絵本『誰もがみんなサンタクロース』を発売。特設サイトにて絵本の試し読みもできます。

▶︎「誰もがみんなサンタクロース」特設サイト


最新シングル『誰もがみんなサンタクロース』

11月17日には本書と同時リリースでリアレンジされた『誰もがみんなサンタクロース』のデジタルシングルの配信が開始される。

・M1 誰もがみんなサンタクロース(acoustic ver)
・M2 Anyone can be Santa Claus (acoustic ver)
・M3 誰もがみんなサンタクロース(kids ver)

▶︎詳細はこちら


「BIGMAMA Christmas 2021 -360° acoustic Live-」

また12月23~25日の3日間、東京・クラブeX 品川プリンスホテルでクリスマスライブ「BIGMAMA Christmas 2021 -360° acoustic Live-」を開催予定(12月23日はFC限定)。

アコースティックセットにて、360°円形ステージでの演奏となる特別なライブ。BIGMAMAのライブを全方位からお楽しみいただけます。

・12月23日(木) クラブeX 品川プリンスホテル(東京) <BIGMAMA mobile FC限定リクエストライブ>
・12月24日(金) クラブeX 品川プリンスホテル(東京) <Christmas eve>
・12月25日(土) クラブeX 品川プリンスホテル(東京) <Christmas>

▶︎詳細はこちら

(Visited 751 times, 1 visits today)