「あやかし」「もののけ」をテーマとした和風ファンタジー小説は、年齢を問わず幅広い層に人気の小説ジャンルです。
妖怪やおばけたちが巻き起こす騒動から、巷の不可思議な現象を解き明かすミステリ・タッチの作品まで、この冬、注目の「あやかし小説」をピックアップしてみました。

『またあおう 』(畠中恵) 新潮社
 発売:2021年11月27日 価格:649円(税込)

最初にご紹介するのは、刊行開始から20周年を迎え累計940万部を突破した人気の「しゃばけ」シリーズ最新刊であり、外伝となる短編集『またあおう』
廻船問屋であり薬種も扱う大店・長崎屋の、病弱だけど優しく知恵も回る若だんな・一太郎と、彼を見守る妖たちが江戸の町で起こる怪事件・珍騒動を解決する、テレビ・ラジオでのドラマ化や舞台化、コミカライズとメディアを超えて大ヒット中の大人気シリーズです。
文庫オリジナル企画となるこの『またあおう』には、一太郎の周りの愉快な妖たちを紹介しようとして楽しい騒動が起きる「長崎屋あれこれ」、屏風のぞきや金次らが『桃太郎』の世界に迷い込む「またあおう」、若だんなが長崎屋を継いだ後のお話で、妖退治の高僧・寛朝の形見をめぐる波乱を描く「かたみわけ」など豪華5編が収録されています。
また、同時発売としてやはり文庫オリジナル企画『しゃばけごはん』も発売中。そのタイトル通り、作中で一太郎たちが食べた美味なる江戸料理、全33品を再現できるレシピ集となっています。
現在、20周年を記念した「大しゃばけ祭」も開催中。詳しくは、今夏配信された20周年記念スペシャルアニメも観られる下記公式サイトをご覧ください。

畠中恵「しゃばけ」新潮社公式サイト

『しゃばけごはん』(畠中恵、川津幸子) 新潮社
 発売:2021年11月27日 価格:781円(税込)

【著者プロフィール】

畠中恵/1959年、高知県生まれ。1988年に漫画家としてデビュー。その後、都筑道夫氏の小説講座に通って作家を目指し、2001年に『しゃばけ』で「第13回日本ファンタジーノベル大賞」優秀賞を受賞。2016年には「しゃばけシリーズ」で「第1回吉川英治文庫賞」を受賞した。「しゃばけシリーズ」本編最新刊は今夏刊行された『もういちど』。その他の著書に『ゆめつげ』『とっても不幸な幸運』『まんまこと』『つくもがみ貸します』『アイスクリン強し』『明治・妖モダン』『けさくしゃ』『まことの華姫』など。

川津幸子/1955年、福岡県生まれ。出版社勤務を経てフリーとなり、栗原はるみの『ごちそうさまが、ききたくて。』の編集を手がけ大ヒットさせる。その後、料理の楽しさを伝えるためには自ら作らなくてはと、料理編集者と料理研究家の二足のわらじを履くようになる。著書は「100文字レシピシリーズ」のほか、『ビンボーDeli.』『ごはんよ、急げ!』『さあ、腕まくり』『そろそろ大人のおいしい暮らし』『台所デビュー 楽々!』『おいしい和食がつくれたら。』『川津さんちのおうちごはんのレシピとヒント204』『これであなたもひとりごはんのベテラン』など。

『博物館の少女 ――怪異研究事始め』(富安陽子) 偕成社
 発売:2021年12月06日 価格:1,540円(税込)

続いてご紹介する『博物館の少女 ――怪異研究事始め』は、文明開化に湧く明治時代の東京・上野を舞台に、古物にまつわる怪異の謎に迫る少女の物語。
西洋文明を取り入れて博物館や動物園を作ったり、鉄道馬車などの新しい交通手段が生まれる一方、江戸情緒もまだ残り、物の怪など、この世のものではないものも信じられているその時代、大阪の古物商の娘・花岡イカルは、親戚の用事で上野の博物館を訪れた際に館長に目利きの才を認められ、博物館の古蔵で怪異の研究をしている織田賢司(=通称トノサマ)の手伝いをすることになります。トノサマの指示で蔵の整理を始めたイカルですが、台帳と収蔵品の照合を終えた後、黒手匣(くろてばこ)という品物だけが何者かによって持ち去られたことが発覚します。
いったい誰が、何の目的で盗んだのか?  隠れキリシタンゆかりの品とも噂される、この匣に隠された秘密とは?
目利きの才をもつ少女という珍しい設定の主人公・イカルは、気立てが素直で、いきのいい大阪弁で感情が表に出てしまう魅力的なヒロインです。若くして名品の価値をぴたりとあてる姿は、すがすがしくかっこいい! その才能は謎解きにも一役買います。怪しげな古道具屋やカソリックの天主堂などを巡りながら、イカルが不思議な匣の秘密に迫っていくあやかしミステリをお楽しみください。

参考:【発売前から絶賛の声続々!】富安陽子が描く、上野の博物館を舞台にした明治時代×あやかしミステリー|株式会社 偕成社のプレスリリース

【著者プロフィール】

1959年、東京生まれ。1984年『クツなんていらない』でデビュー。1991年に『クヌギ林のザワザワ荘』で「第24回日本児童文学者協会新人賞」と「第40回小学館児童出版文化賞」を、1997年には「小さなスズナ姫」シリーズにより「第15回新美南吉児童文学賞」を受賞。2001年には『空へつづく神話』により「第48回産経児童出版文化賞」、2004年にも『菜の子先生がやってきた!』で第51回の同賞を受賞している。2012年には『盆まねき』により「第49回野間児童文芸賞」と「第59回産経児童出版文化賞フジテレビ賞」を受賞。2021年に『さくらの谷』により「第52回講談社絵本賞」を受賞した。その他の作品に『やまんば山のモッコたち』『キツネ山の夏休み』『天と地の方程式』『絵物語 古事記』など。

『妖怪の子、育てます』(廣嶋玲子) 東京創元社
 発売:2021年12月09日 価格:770円(税込)

最後にご紹介するのは昨年アニメ化もされた『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』で大人気の著者による、心温まるお江戸妖怪ファンタジー『妖怪の子預かります』シリーズの続編となる『妖怪の子、育てます』です。
江戸の片隅で妖怪の子預かり屋を営む若者、その名は弥助。妖怪に育てられたのですが、ある事件で育ての親を失い、かわりに授かった赤ん坊の千吉を、懸命に育てています。子供を預けに来る妖怪たちも訪れ、騒ぎの絶えない毎日。そんなある日、弥助の大家、久蔵の双子の娘が、不気味な黒い影に掠われた! 捜索は、妖怪奉行所西の天宮の奉行で、犬神の長・朔ノ宮の手に託されることに……。待望の第二部の開幕です!

【著者プロフィール】

1981年、神奈川県生まれ。2003年に「姫君と女騎士」が「第27回パレットノベル大賞」佳作に入選。同作は「翡翠の守護者」と改題のうえ受賞作アンソロジー『デビュタント・オムニバス』に収録された。2005年に「第4回ジュニア冒険小説大賞」を受賞し、受賞作『水妖の森』を2006年に刊行。2008年には「あぐりこ」で「第14回児童文学ファンタジー大賞」奨励賞も受賞している。2013年に刊行開始された『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』シリーズが子供たちの絶大な支持を受け大ヒット。2020年にアニメ化されている。そのほか『ゆうれい猫ふくこさん』シリーズ、「ナルマーン年代記」シリーズ、『十年屋』シリーズ、『鬼遊び』シリーズ、『猫町ふしぎ事件簿』シリーズなど多数の人気シリーズを持つ。近著に『銀獣の集い 廣嶋玲子短編集』など。

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