昨年の「第三回トゥーファイブクリエイターアワード」で小説部門賞を受賞した『ひび割れから漏れる』が発売となりました。
2013年に「ラノベ文芸賞」で大賞を受賞してデビューされた小説家、道具小路さんに、最新作 『ひび割れから漏れる』 について、創作について、お話をお聞きしました。
雷に不思議な魅力を感じて
――『ひび割れから漏れる』について、これから読む方へ、内容をお教えください。
「雷に打たれたい」という変わり者の女子高生と、そのクラスメイトの冴えない男子高生の、ひと夏の青春譚です。
ふたりは一生懸命、夏休みを使って避雷針(導雷針)を作っていきます。
どうしてヒロインは雷に打たれたがっているのか、そして彼女に惹かれていく男子高生の夢の行方を見守ってください。
――今回、『ひび割れから漏れる』を描こうとされたきっかけを教えていただけますでしょうか。着想に至った具体的な経験がありましたら、お教えください。
次作をどうしようかと考えていた時、いつも酔っぱらって書く構想ノートに「雷に打たれてえ女子高生の話」という殴り書きのべらんめえ口調のメモを見つけまして、これは青春小説の題材としていいんじゃないかと、その一文からお話を膨らませていきました。
雷には小さな頃から不思議な魅力を感じていて、無性に惹かれていました。
根気がないのですぐへこたれるのですが、好きなものを扱えば、長く苦しい執筆期間でも匙を投げずに耐えられます。
ハラハラがワクワクへ。青春を感じたいひとへ
――ご執筆にあたって、苦労した部分や、執筆時のエピソードがございましたらお聞かせください。
詳細にプロットを立てたり構想したりせず、大まかな流れだけ決めたらあとは登場人物に任せるという神のみぞ知る方式で書いたので、「これは本当に着地するのか?」とハラハラしながら最後まで進んでいきました。
そのハラハラが苦労でした。
けれど終盤はハラハラがドキドキ、ワクワクに変わっていったので、あ~よかったと思いました。
――どのような方にオススメの作品でしょうか? また、注目ポイントをお教えください。
現役の学生さんはもちろん、学生時代、もしくは今現在、他者や環境からの理不尽に苦しんだことがある・苦しんでいる方に読んで頂ければ嬉しいです。
主人公とヒロインも、その苦しみを抱えています。
自分と同じ苦しみを抱えている人が心の傍にいてくれたら、気持ちも少し楽になるだろうから……。
そして、子供ではないけれど大人でもない、高校生という人生で一番ヘンな期間にいる少年少女たちの青春の青臭さをふんだんに味わっていただければ……。
必ず希望が残る小説にしたい
――今回の作品に限らず、小説を書くうえで大切にされていることや、こだわっていることをお教えください。
目と耳さえ開けておけば脳みそにダイレクトな刺激を届けてくれるコンテンツが溢れ返っている中、能動的にページをめくり、行間を読み、自分でイメージを浮かべないといけない小説は、とても疲れる娯楽だと思います。
だからこんな娯楽をわざわざ選んでくれる人には、分厚かったけど頑張って読み終わってよかったなと感じてほしい。
どんなにダークな内容であっても、ちょっとだけでも必ず希望が残る小説にしたい。時間をかけて読んでくれた分、胸になかなか消えないものを差し上げたい。
というこだわりをデビュー当時から持っています。
はず!!!!
――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします!
いつも拙作を読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
このインタビューページで知ってくださった方も、見つけてくれてありがとうございます。
いつもより本の値段が上がっちゃってごめんなさい。でも高い分、編集さんデザイナーさんイラストレーターさんが、それはもう素敵な一冊に仕上げてくださいました。
こうしてご縁が繋がっているあなたに、『ひび割れから漏れる』を少しでも楽しんでいただけますように。
Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?
人生で一度はハードカバーの本を出したいなと思っていたので、 まさに本作で夢が叶って、飛び上がるほど嬉しかったです。
表紙も装丁も本当に豪華で素晴らしく、献本が届いた時は涙が出そうになりました。
Q:ご自身は、どんな小説家だと思われますか?
ものすごくビールを飲む、たいへんなものぐさだと思います。
Q:おすすめの本を教えてください!
・夏目漱石『こころ』
高校の教科書に載っていて、これを読んで初めて「文学って面白いんだ!」と思いました。
あの漢字だらけの小難しい内容で、タイトルが「こころ」というシンプルなひらがな三文字というセンスにも痺れました。
・斎藤洋さん『ルドルフとイッパイアッテナ』
「児童文学こそ究極の文学説」を勝手に提唱しているのですが、その証明になる一冊だと思っています。
わかりづらい言い回しをしていないのに心に迫ってくる物語というのは、書けそうで書けません。
・横内なおきさん『サイボーグクロちゃん』
サイボーグになった黒猫の日常を描いた作品で、1997年から2001年まで「月刊ボンボンコミック」で連載していた漫画です。
小学生時分にこれを読んで、あまりの面白さに衝撃を受けました。
現在33歳ですが、このすさまじい作品に届くものをいつか自分も書けたらなあと、10歳の頃から思っています。ずっと憧れです。
道具小路さん最新作『ひび割れから漏れる』
発売:2021年12月24日 価格:1,980円(税込)
著者プロフィール
道具小路 (ドウグ コウジ)
1988年生、宮崎県出身。
2013年、『やたらウロウロめったらドキドキ』で第四回京都アニメーション大賞小説部門奨励賞を受賞。
同年、第一回富士見ラノベ文芸賞大賞を受賞。受賞作を改題した『サンタクロースのお師匠さま』(富士見L文庫)でデビュー。
2021年、『ひび割れから漏れる』で第三回トゥーファイブクリエイターアワード小説部門賞を受賞。
登場人物たちの悩みや葛藤を瑞々しくも繊細な筆致で描く。