コミックスで人気を博し、2022年4月からTVアニメが放送開始された『SPY×FAMILY』。スパイ人気が高まっている(?)ということで、今回は「スパイ」に関する本をご紹介します。
まずは、『スパイのためのハンドブック』。CIAやKGBと並び、世界最強の諜報機関といわれるイスラエルの秘密諜報部モサドのトップエージェントだった、ウォルフガング・ロッツ氏による、ガチの元スパイによる、スパイのためのハウツー本です。
読者の適正検査から始めて、退職後の生活設計に至るまで、豊富な体験にもとづいて、ユーモラスなタッチで解説してくれています。偽装や尾行などで必要な情報を収集する方法、不測の事態への対処法、刑務所などに入れられたときのことなど。敵国に逮捕拘禁され、処刑されるところを切り抜け、捕虜交換で釈放されたという経験などがあり、軽い語りですが内容に重みがあります。
続いては『FBIフーバー長官の呪い』。スパイという職業は秘匿されるものでありますが、元CIAや、元FBIの局員らによる内部告発書の出版も多くあります。米国で半世紀もの間FBIトップの座に君臨していたジョン・エドガー・フーバー長官について、彼の側近が書き残したファイル。これが強烈。
フーバー長官が、盗聴マニアで女装趣味がある同性愛者であることなどが書かれています。また、ケネディ暗殺やモンローの死などにどのように関与していたか。様々な諜報活動と情報戦略、それによって個人の情報や弱みを握り、どのようにして権力を思い通りにしてきたかが克明に描かれています。FBIのおそろしさ。フーバー長官を題材にした映画もおもしろい。
最後にご紹介したいのは、『華麗なる騙しのテクニック』。人に取り入ったり、協力させたり、敵を寝返らせたりすることで必要な情報を手に入れ、物事を目的に適うように動かすというのがスパイ活動の一面でありますが、その点では本書も共通するところが多く、大変おもしろい。
伝説的な世界No1詐欺師、フランク・W・アバグネイル氏による危険な本。信用詐欺、小切手詐欺、身分詐称、脱出などの犯罪歴があり、航空機パイロット、医師、連邦刑務局職員、弁護士など少なくとも8回の身分詐称をしているし、警察の勾留や刑務所からも何度も脱出している。そんな人が具体的な詐欺の方法を書いてしまってます。
詐欺の才能がすごすぎて、服役中は、詐欺罪の調査を助けるために連邦当局に無給でアドバイスなどをして、早めに出所することができ、出所後は詐欺を防ぐためのセキュリティコンサル会社を作って成功している。もはや、わけがわからない。
アバグネイル氏をモデルにした映画もおもしろい。フーバー長官もだけど、こちらもレオナルド・ディカプリオ氏が演じている。
以上でご紹介した本は、数十年前の内容なので、現代のテクノロジーを使った高度な諜報活動や情報戦からすると、どうしても古さを感じてしまうことは否めません。しかしながら、人間の心理という点では、根底にあるものはほとんど変わっていないようです。悪用してはいけませんが、こういう知識は、あっても損することはないのではと思います。