2001年9月9日、『セーラー服と機関銃』『台風クラブ』『ションベン・ライダー』『あ、春』など数々の名作を遺して映画監督・相米慎二氏が惜しまれつつこの世を去りました。まだ53歳。国内外で高い評価を受け、同年には遺作となった『風花』(主演・小泉今日子)が発表されたばかりでの訃報に、相米監督のファンのみならず、日本映画ファンは大きな悲しみに包まれました。
没後20年となる今年、その相米監督の足跡を振り返る2冊の書籍が相次いで刊行されます。
1冊は、三浦友和さん、小泉今日子さんらキャストや制作スタッフへのインタビューを通じて、いまなお色褪せない相米作品の魅力を読み解く、9月8日に発売される書籍『相米慎二という未来』(発行:東京ニュース通信社/発売:講談社)。
そして命日である9月9日には、ファンの間では幻のエッセイと呼ばれる、かつて相米監督が行った雑誌連載を収録したエッセイ集『最低な日々』(発行:A PEOPLE/発売:ライスプレス)。これはなんと、相米監督にとっても初の著作となります。
往年の相米監督ファンはもちろん若い世代の映画ファンも、ぜひこの機会に日本映画のレジェンドに触れてみてはいかがでしょうか。

『相米慎二という未来』(金原由佳/編、小林淳一/編) 発行:東京ニュース通信社 発売:講談社
 発売:2021年09月08日 価格:2,970円(税込)

相米慎二監督が遺した13本の監督作品それぞれを、「邂逅」「巡礼」「回想」「証言」の四つの切り口で振り返る書籍です。
相米作品をリアルタイムで見ていない若年層の代表として、唐田えりかさんや板垣瑞生さん、村上淳さんら若手俳優が相米映画に触れ、感じたことを語る「邂逅」。一方、「回想」では三浦友和さん、斉藤由貴さん、牧瀬里穂さん、佐藤浩市さん、浅野忠信さん、小泉今日子さんといった相米作品に出演したキャストらが当時を語ります。
生前の相米監督自身、そして作品を支えたスタッフによる「証言」。そして「巡礼」では『セーラー服と機関銃』や『東京上空いらっしゃいませ』など作品の舞台となったロケ地を改めて探訪します。
相米監督が使っていた、書き込みのある当時の台本の写真なども盛り込まれたこの書籍は、当時の息吹を感じさせると同時に、日本の映像文化の未来のための大切な記録集ともいえるでしょう。

【著者プロフィール】

金原由佳/兵庫県神戸市出身。映画ジャーナリスト。約30年で1000人以上の映画監督や映画俳優のインタビューを実施。現在、「キネマ旬報」ほかの映画誌、劇場パンフレット、朝日新聞、「母の友」などで映画評を執筆。著書に『ブロークン・ガール 美しくこわすガールたち』『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(共著)など。相米慎二没後20周年特集のトークイベントなど講演・司会も多数。
小林淳一/東京都出身。編集者。大学卒業後、ぴあ株式会社に入社。「TVぴあ」、「Weeklyぴあ」を経て、「Invitation」編集長に。ぴあ退社後、「東京カレンダー」編集長を務める。担当した書籍に『踊る大捜査線THE MAGAZINE』『ケイゾク/雑誌』『雲のむこう、約束の場所 新海誠2002―2004』など。「女優美学」シリーズ編集長を務める。2021年2月に行われた特集上映「作家主義 相米慎二」を企画。現在、フリーで活動しつつ、カルチャーサイト「A PEOPLE」編集長を担当している。

『最低な日々』(相米慎二) 発行:A PEOPLE 発売:ライスプレス
 発売:2021年09月09日 価格:2,750円(税込)

1994年から1995年にかけて月刊誌で連載され、ファンの間ではもはや「幻」とも言われていたエッセイの書籍化。生活の中で相米監督の目に映る世界は、監督が映画作品で見せる破天荒で摩訶不思議な世界観へとつながっていることを感じさせてくれます。
エッセイパートでは「あとがきにかえて」として、1983年の『ションベン・ライダー』でデビューした俳優・永瀬正敏さんがあとがきを担当。当時からの交流の思い出もたっぷりと語ってくれています。
また『相米慎二という未来』も手掛けた映画ジャーナリストの金原由佳氏が過去に行った、デビュー作『翔んだカップル』以前の助監督時代から『夏の庭The Friends』までの自作について語る貴重なインタビューの再録や、50問に及ぶQ&Aなど、資料性も高い1冊となっています。

【著者プロフィール】

1948年、岩手県生まれ。1972年の大学中退後、契約助監督として日活撮影所に入所し、長谷川和彦や曽根中生、寺山修司の元で主にロマンポルノの助監督を務めた。1976年にフリーランスとなり、1980年、『翔んだカップル』で映画監督としてデビュー。1981年に同じく薬師丸ひろ子主演作品『セーラー服と機関銃』で興行的な成功を収めた。1982年6月、長谷川和彦、根岸吉太郎、黒沢清ら若手監督9人による企画・制作会社「ディレクターズ・カンパニー」を設立。1985年の『台風クラブ』は第1回東京国際映画祭(ヤングシネマ)でグランプリを受賞。その後、1993年の『お引越し』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。同作は第46回カンヌ国際映画祭のある視点部門にも出品された。1998年の『あ、春』は1999年度キネマ旬報ベストテンの第1位に選出されたほか、第49回ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した。2001年、小泉今日子主演の『風花』を発表。同年9月9日、肺癌のため死去。享年53歳。

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