旧約聖書の『創世記』の冒頭、「天地創造」では、神が天と地を造り世界がはじまった最初の7日間が描かれています。

そして発売されたばかりの本書『神様がくれた最後の7日間』では「世界の終わる最後の7日間」を共に過ごす少年と少女が描かれているのです。

人生に倦み、この世から消え去ろうとしていた三枝翔の前に現れた少女・那由。世界を創造した神だと名乗る彼女によると、この世界はあと7日で終わるらしい。そして彼女は翔にある提案をします「どうせ死んじゃうなら、私の最後の7日間に付き合ってよ」と。

「世界の終わり」に精一杯の恋をする、究極にせつないボーイ・ミーツ・ガールの物語を描いた遊歩新夢さんに、お話を伺ってみました。

幼少のころから『死』について異常な興味があり、人は死んだらどこに行くのか、を親に質問し困らせていたようです

――今回の『神様がくれた最後の7日間』について、これから読む方へ、どのような作品かをお教えいただけますでしょうか。

神様って何だろう。この世界は誰が作ったのだろう。この世界の行く末はどこなのだろう。生きにくい時代に、ふと、身近で回答不可能な疑問にたいして、ひとつの物語を作ってみました、という感じです。

自分のことばかりに目を落とすと、死にたくなるような世の中かもしれません。特に若い世代は大変です。でも、ふと視線を変えれば、すごく不思議な魅力的な何かがあるかもしれませんよ、と伝えたいです。

――この作品が生まれたのはどんなきっかけだったのでしょうか。

幼少のころから『死』について異常な興味があり、人は死んだらどこに行くのか、を親に質問し困らせていたようです。『死』は、生物には避けることのできない結末ですが、それは、文化や文明や国家、組織、会社、ひいては地球や宇宙にも避けることのできないものかなとも思います。その中で、最も不可解な宇宙の成り立ちは、箱庭のような世界でも成り立つのじゃないか、と思ったところからです。

『神様がくれた』を、どう扱うか、というところに苦労しました

――ご執筆にあたって、苦労されたことや、当初の構想から変わった部分など、なにかエピソードがありましたらお聞かせください。

主人公とヒロインの関係性をどのように深めていくか、ヒロインについてどこまだ開示すべきか、そして、『神様がくれた』を、どう扱うか、というところに苦労しました。この辺りは読んでいただくとわかるかな、と思いますのでぜひ手に取ってほしいです。

――本作は、特にどのような方にオススメの作品でしょうか? 読みどころなども含めて教えてください。

今が生きにくい、とか、普段の生活で楽しみより悩みが多い、とか、なんとなく虚無感を抱いていて毎日がつまらないとか、そんな人が読んでくれたら視点が変わって人生も変わるかもしれません。

また、純粋にSFチックなお話が好きな人にもお勧めかと思います。

読み終わった瞬間に一瞬その世界に思いを馳せたり、そういうことが読んでくれた全読者の、たった一人にでも起こればいい

――小説を書くうえで、いちばん大切にされていることをお教えください。

自分の物語を読むことで、人生の視点が変わったり、なにか生きがいを見つけたり、少なくとも読み終わった瞬間に一瞬その世界に思いを馳せたり、そういうことが読んでくれた全読者の、たった一人にでも起こればいいな、と思って作っています。物語で人の人生を良い方に狂わせたい、が信条です。

――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。

そんなに多作でもないし、有名でもない自分ですが、一作一作メッセージを込めて書いています。そういったものを読み取っていただければ、きっと自分の人生における考え方に、一滴の刺激や方向性を加えることができると思います。これはライトノベルでもライト文芸でも、どちらの作品にも共通していることですので、ぜひ全作読んでいただきたいです。

Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?

自分がオーナーを務め、指揮指導をしているFrontier Brass OSAKA のコンサートが素晴らしい演奏だったこと。

Q:ご自身は、どんな小説家だと思われますか?

夢を追い続ける小説家だと思います。それは、作品世界においても、現実の生活においてもそうだと思います。

Q:おすすめの本を教えてください!

■『銀河英雄伝説』田中芳樹(東京創元社)

高校生の頃に読んで一気に世界観に惹かれた作品です。

SFというより一大叙事詩のような作品で、人々の生きざまに感動したものです。

(編集部注:オリジナル刊行は徳間書店)

■『死体は語る』上野正彦(文藝春秋)

これも学生の頃に読んで衝撃を受けた本です。

幼少期の疑問を消化し、死というものを常に意識しながら生きるようになったきっかけかもしれません。

■『夏への扉』ロバート・A・ハインライン(早川書房)

言うまでもなく時間旅行小説の名作ですが、猫好きの自分は、猫SF小説、という触れ込みを聞いて読み始めました。初期のタイムトラベルSFで非常にシンプルながら、タイムトラベルの物語における試行がなされた小説だと思います。また読み直したい、と思っているところです。


遊歩新夢さん最新作『神様がくれた最後の7日間』

『神様がくれた最後の7日間』(遊歩新夢) 実業之日本社
 発売:2023年10月06日 価格:814円(税込)

著者プロフィール

遊歩新夢(ユウホ・ニイム)

大阪府生まれ。2013年に『きんいろカルテット!』で「オーバーラップ文庫キックオフ賞」金賞を受賞しデビュー。2020年には『星になりたかった君と』で「第1回令和小説大賞」を受賞。同作は2021年に実写ドラマ化されている。その他の著書に『どらごんコンチェルト!』『小悪魔だけど恋愛音痴なセンパイが今日も可愛い 』『三日後に死ぬ君へ』がある。執筆活動のほかに、プロのユーフォニアム奏者としても活動。現在は英国式ブラスバンド「Frontier Brass OSAKA」を主宰している。

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