90年代の終わりごろからはじまり、いまやすっかり定着した「女性アイドルグループ」ブーム。しかし、ひと口に女性アイドルグループとは言っても、その動向が華やかにメディアを賑わすグループもいれば、小さなステージでのライブでファンと交流することのみが活動の主体というグループもいます。発売されたばかりの、遠藤かたるさんのデビュー作に登場する三人組・ベイビー★スターライトも後者のタイプ。
いわゆる「地下アイドル」と呼ばれ、いくつもの問題を抱えながらも活動を続けてきた彼女たちに訪れた最大のピンチ。それは「殺人」。メンバーのひとりが犯した罪を前に、その隠蔽を決めた彼女たちは死体を山中に埋めることを決意し――。アイドルの光と闇を描いたノンストップ・サスペンス『推しの殺人』で、「第22回『このミステリーがすごい!』大賞」文庫グランプリを受賞しデビューを飾った遠藤さんにお話を伺いました!
過酷な状況にある人たちが連帯して抗う話を書きたい、と思ったのがはじまりです
――今回の『推しの殺人』について、これから読む方へ、どのような作品かをお教えいただけますでしょうか。
アイドルが殺人を犯し、それを隠蔽する物語です。
主人公は、大阪で活動する地下アイドルグループの少女三人。メンバーのひとりが人を殺してしまい、その罪を隠すためにメンバー全員で死体を山に埋めます。
そして罪を隠したままアイドル活動をつづけますが、次から次に問題が起き、切り抜けたと思ったら、また新たなトラブルが発生して……。
ずーーーっとハラハラドキドキのノンストップ・サスペンスです。
――この作品が生まれたのはどんなきっかけだったのでしょうか。
過酷な状況にある人たちが連帯して抗う話を書きたい、と思ったのがはじまりです。
そんな物語のなかで輝くのはどんな人だろうと考えたときに、アイドルが最もふさわしいと思い、地下アイドルが完全犯罪を目指す話を書きました。
作品を書く上で最も影響を受けたのは、主婦たちが殺人事件を隠蔽する桐野夏生さんの小説『OUT』です。他には映画『テルマ&ルイーズ』にも影響を受けたので、作品の主役であるアイドルグループ三人の名前は映画タイトルから拝借しました。
大阪が舞台の作品なので関西にゆかりのある方はより楽しめるかと思います
――ご執筆にあたって、苦労されたことや、当初の構想から変わった部分など、なにかエピソードがありましたらお聞かせください。
主役のアイドルたちを女性グループにするのか、男性グループにするのかでとても悩みました。今回は女性アイドルにしましたが、男性アイドルを主役にした作品もいつか書いてみたいです。
――本作は、特にどのような方にオススメの作品でしょうか? 読みどころなども含めて教えてください。
ハラハラドキドキしたい人、サスペンスが好きな人、アイドルが好きな人、シスターフッドが好きな人にオススメしたいです。
大阪が舞台の作品なので関西にゆかりのある方はより楽しめるかと思います。
それまで創作の類は一切したことがなかったのですが、ある日突然、「そうだ、小説書こう」と……
――本作がデビュー作となりますが、小説を書きはじめたのはいつごろからでしょうか? きっかけも合わせてお教えください。
七年ほど前から書いています。それまで創作の類は一切したことがなかったのですが、ある日突然、「そうだ、小説書こう」と、京都に行こうみたいな感じで思い立ちました。
――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。
『推しの殺人』は、絶体絶命の少女たちが連帯し、運命に立ち向かう物語です。
世の中のさまざまな理不尽が顕在化している今だからこそ、多くの人に読んでほしいと思います。
Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?
デジタルメモ「ポメラDM250」を買ったことです。
Q:これからどんな小説家になりたいと思っていますか?
プリンのような作品を書ける小説家になりたいです。
さらっと読むだけでもプリンのカスタードみたいに濃厚で、さらにじっくり奥まで読みこめばカラメルソースのように極上の味わいがある。
そんな物語を書いていきたいです。
Q:おすすめの本を教えてください!
■『Ank: a mirroring ape』佐藤究(講談社)
■『君のクイズ』小川哲(朝日新聞出版)
■『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』呉勝浩(光文社)
遠藤かたるさんデビュー作『推しの殺人』
発売:2024年02月06日 価格:790円(税込)
著者プロフィール
遠藤かたる(エンドウ・カタル)
1988年、愛媛県出身。大阪府大阪市在住。2023年に「第22回『このミステリーがすごい!』大賞」文庫グランプリを受賞し、受賞作となる本書(受賞時タイトル「溺れる星くず」)でデビュー。