いきなりですが、マンガ読んでますか? ついついページを捲る手が止まらず、あと少しだけと思いつつ、結局ラストまで読まされて寝不足……なんて経験もあるのではないでしょうか。
なぜこんなにも人はマンガに惹きつけられるのか、ということに興味を持って調べたところ、ストーリーはもちろんですが、「コマ割り」こそがその要因であることが私なりに追究されました。
で、今回ご紹介したい本は、こちら。
魂に響く漫画コマワリ教室
コマ割りとは、言わずもがなマンガのコマの割り方のことですね。その割り方の工夫次第で、マンガの魅力・おもしろさが圧倒的に決定されるというのが本書の主旨です。
そして、魅せる演出を織り込んだコマ割りのことを「コマワリ」と、カタカタで表記して区別しています。
では、そのコマワリの基本というものを、ざっとご紹介します。目次にもなっていますが、次の5点に集約されているのでした。
- 絵変わり
- アングル
- 奥行き
- フレーミング
- フリとキメとウケ
「絵変わり」は、同じ絵ばかりにならないようにすることですね。キャラクターたちの会話を、何も考えずに書いてしまうと、すっと顔ばかりな「顔マンガ」になりがち。そうらないように、コマを斜めに切ったりなどの工夫が必要。
「アングル」は、状況の見せ方を、俯瞰にするか、アオリ(見上げる感じ)にするかといったところ。俯瞰にすれば冷静なシーンになりますし、アオリにすれば迫力がでます。
「奥行き」は、近景・中景・遠景、どれくらいの近さで対象を描くか。読者の心理につながってきます。近い方が没入感が出て、感情移入できます。
「フレーミング」は、どこを描くか、フレームで切り取るかを決めることですね。アップ、バストアップ、全身、体の一部など、これも読者の視線をどこに向けたいか。
「フリとウケ」は、キメとなるインパクトのあるコマを描くためには、その前に、フリとなるコマが必要ということ。いきなりだと読者がついていけなくなる。同じく、キメのあとはウケとして、その反応を描く。これで時間的演出ができるわけですね。
このテクニックを使った例を、次の4つを1セットとしてたくさん見せてくれます。
- コマワリ教室の受講生の方の作品
- 先生のチェック
- 先生ならこう書く
- 先生の解説
なるほどの連続で、後半になってくると、ここはこうした方がいいのではと自ら想像できるようになるからすごい。
マンガのコマ割り以外でも応用できそう
そして、気づいたのですが、これはマンガのコマ割りにだけ使える手法ではないのです。
本書にはいろいろなアドバイスが出てくるのですが、メモしたものをご紹介すると、
- 1コマ目(めくり)は大きく
- 情報を詰め込みすぎない(ページを分ける・省く・強調する)
- 光と影を意識する
- 見開きを1枚の絵として描く
- 同じ面積でも広く見せることができる(パース・奥行き)
- メリハリをつける(見せたい絵を決めて大きく、他を削ぎ落とす)
などあって、これらはそのままプレゼン資料の作り方に使えそうです。コミュニケーションでも使えますね。
また、小説を書いている人にとっては、マンガの「コマ」を、小説の「文」や「段落」といった単位に置き換えて考えてみると、発見があると思います。
段落の書き出し(めくり)はインパクトを与えるように書き、段落の最後はフリにして、次の段落の冒頭でキメるとか。情報を整理して、伝えたいこに集中して、余計な文は削るとか。
ぜひ、マンガを意識して、プレゼン資料や小説を書いてみてはいかがでしょう。
ジャンプ編集部のカンガの描き方もすごい
さらに、マンガの描き方といえば、昨年発売されたこちらを合わせて読んでいただきたい。
あのジャンプ編集部が教える描き方の本。とても勉強になって、おもしろかったです。ジャンプの第一線で活躍されるマンガ家の先生たちが、マンガを描くことについてのコメントを寄せています。
そして、先生たちに同じお題を出して、それぞれの先生が作ったネーム(さらに先生の解説付き)を読み比べることができるという、たいへん贅沢なページも。
白井カイウ先生(『約束のネバーランド』原作)、附田祐斗先生(『食戟のソーマ 』)、筒井大志先生(『ぼくたちは勉強ができない』)、空知英秋先生(『銀魂』) のネームが見られます。
他にもジャンプの看板作家の先生方が答えたアンケートなど、なんでこれが990円(税込)!? という、驚異の一冊。
読めば、マンガに限らず創作意欲が掻き立てられること間違いなしです。
伝えることって、根底ではつながっているのだなと思いました。
(文・しーなねこ)