アメリカのSF・ファンタジー作家である、ル=グウィンが書いた小説の書き方についての本をご紹介します。日本では『ゲド戦記』の作者として、ご存知の方が多いのではないでしょうか。

 言葉の響きや、品詞の使い方、リズム(句読点の打ち方)といった基本的で重要なことから、人称や視点、物語論的なことまで、広く深く書かれています。

 また、演習問題や実例もあってわかりやすく、執筆の楽しみを満喫することができる一冊。おもしろいです。

 

 章は次のようになっています。

第1章 自分の文のひびき
第2章 句読点と文法
第3章 文の長さと複雑な構文
第4章 繰り返し表現
第5章 形容詞と副詞
第6章 動詞――人称と時制
第7章 視点(POV)と語りの声(ヴォイス)
第8章 視点人物の切り換え
第9章 直接言わない語り――事物が物語る
第10章 詰め込みと跳躍

 英語で小説を書くことを前提として書かれており、第6章までは文法についてのことなので、ちょっと違和感を感じるのではと思います。

 しかしながら、書いた文章を声に出して見るや、形容詞や副詞は使わないようにする(「脂肪よりも筋肉が必要」)などといったことは、共通することで参考になります。

 第7章以降は言語に関係なく、なるほどが連発。視点(POV:Point Of View)と語りの種類と、それを使い分けて、いかにして効果を発揮するかが、ディケンズやトルーキンなどの名文を例に説明されています。

 第9・10章は物語論。物語に対しての、プロットやアクションの関係について。プロットについては「確かに筋を立てるのは素晴らしい工夫である。ただし物語以上に重要なものではないし、必ずしも物語に要するとは限らない。」、アクションについては「アクションが続くのなら、たいていは要するに語られる物語がないという印である。」と書かれています。

 物語とは、何かの筋ではなく、語る中にあり、語ることそのものが進行して流れていくものであると。そして、その「語る」ための技巧として、直接言うことなく事物に物語らせたり、詰め込みと跳躍(細部にこだわること・省くこと)をしたりすることを、実例とともに説明しています。

 ハリウッド脚本術や、書き方マニュアルなどで説明されるプロットについては触れず、「物語」を書くということが命題としてあり、そのために文体(技巧)の舵をとる。というところが本質的で、やっぱり『ゲド戦記』の作者はすごいな! と思ったのでした。ぜひ。

(Visited 101 times, 1 visits today)