昨年末にスタートしたマンガ配信サービス「ステキコミック」。

「読者にとってもマンガ家にとっても、フェアで持続可能なサービス」をコンセプトに、スマホやPC・タブレット等で楽しめる新しいWEBコミックサイトとして注目を集めています。

オリジナル作品から人気の名作コミックまで、ラインナップも続々増加中。特にオリジナル作品には、小説投稿サイト「ステキブンゲイ」「ラノベストリート」との連動企画として生まれたフレッシュなコミカライズ作品も顔を揃えています。

今回は、昨年の「第一回ステキブンゲイ マンガ原作大賞」で2作品が受賞を果たし、大賞作品『秘密の恋は、満月の夜に』(漫画/青沼)と、優秀賞受賞作『サンクトゥス・ファミリア』(漫画/薫子)の2本のコミカライズが大好評連載中の村田真奈美(Manami.M)さんにお話を伺ってみました。

コミカライズ作品の公開の際には、何度も頬をつねってしまうほど、浮かれておりました

――昨年、「第一回ステキブンゲイ マンガ原作大賞」にて大賞と優秀賞として2作品が同時受賞し、現在2作品がコミカライズ連載中ですね。

初めてご連絡を頂いたときは「最終候補」という状況でしたので、期待と不安が入り混じっていたのですが、その後、中村先生に2作品が候補になっているとうかがって期待が膨らみ、結果を見た時は卒倒しそうでした。

まさか、2作品ともに賞を頂けるとは、夢にも思ってもいませんでした。選んでくださった皆様には、感謝しかありません。

そして、コミカライズ作品の公開の際には、何度も頬をつねってしまうほど、浮かれておりました。

コミカライズをご担当いただいた青沼様、薫子様、携わってくださった皆様に、あらためて心より感謝申し上げます。ありがとうございました!

オフィスラブ的な、大人な恋愛を描いてみたいと思う気持ちから生まれました

――最初に、大賞を受賞した『秘密の恋は、満月の夜に』について、どのような作品かお教えください。

コンサルティング会社が舞台の、プロジェクトの主軸となる上司からの信頼も厚い優秀な社員、美海と陸の恋物語です。

美海の視点から描かれるストーリーは、陸の気持ちがまったくわからない状況で進んでいきます。

そのため、好きになれば好きになるほど大きくなる不安は、美海を悲観的な気持ちへと追い込んでいきます。

届きそうで届かない、近くて遠い切なさに、共感していただけたら嬉しいです。

河合美海/仕事は有能ながら、ひそかに抱える虚しさを複数のセフレで埋めている
水城陸/2年前に美海の会社に中途入社してきたときは、女子社員が色めき立ったイケメン

――この物語が生まれたきっかけを教えていただけますか。

オフィスラブ的な、大人な恋愛を描いてみたいと思う気持ちから生まれました。

そのため、官能的な表現もフル活用して挑戦したのですが、現在(小説版の)その部分はプレミアム設定とさせていただいています。

とはいえ、その部分が一番力を入れた部分でもあるので……、ぜひ、のぞいてみていただけたら嬉しいです。

――コミック化に際してなにか要望を出した部分はありますか。また逆に、編集部側からの提案なども含め、コミカライズがスタートするまでの期待や不安などお気持ちをお教えください。

個人的に、コミカライズは、漫画家様の感性を大切にしたいと思っています。

そのため、コミック化に際して、最初のキャラクター造形に少し触れるくらいで細かい要望等は出さなかったのですが、今はそれが正解だったと感じています。

なぜなら、今現在公開されているコミックが、私の想像をはるかに超えて、より魅力的な作品へと進化しているからです。

青沼様、ありがとうございます。次の展開、期待しています!

――コミカライズ版のお気に入りのシーンをお教えください。

個人的にハッとしたのは、第三話の後半、葛西さんと会った時の「寂しくなったらここに来るの」と言う美海の表情と、その後の美海の瞳、そして、第四話の冒頭、葛西さんが「眠れないか」と言って頭を撫でるシーンが印象的でした。

この二つの場面には、美海の人恋しさや甘えたがりの本心が凝縮されているように感じて、青沼様の表現に瞼が熱くなりました。

陸よりも以前に、美海が夜の街で出会い関係を持った葛西。大人の男の持つ包容力に心地よさを感じていた美海だったが……。

心から思いあえる者どうしが穏やかに暮らす「聖なる家族=サンクトゥス・ファミリア」

――続いて優秀賞受賞作『サンクトゥス・ファミリア』についても、どのような作品かお教えください。

両親の再婚で兄弟となる瑛と和也が、未来への諦念や過去のトラウマを乗り越えて、「聖なる家族」へと希望をたくす物語です。

幼い頃の虐待の傷を持った和也と、性の自認に揺れる瑛が、お互いの心に踏み込んでいく過程を描いています。

そして、そのバックボーンとなるのが、血のつながりや雑多なものに左右されない、心から思いあえる者どうしが穏やかに暮らす「聖なる家族=サンクトゥス・ファミリア」です。

音羽(佐伯)和也/母の再婚で瑛の弟になった。文武両道のイケメンだがどうやら裏の顔が……?
音羽瑛/和也の学校の美術教師。父親の再婚を祝福し、和也と兄弟になることを楽しみにしていた。

――男女の恋愛を描いた『秘密の恋は、〜』とは打って変わった「家族の物語」ですが、この作品を書こうと思ったきっかけはどんなことだったのでしょうか。

最初の発想時にはBL的な流れがあったのですが、一般文芸の賞に応募するために、BL的に始まって実は違うという展開を選びました。

その上で、瑛の諦念に満ちた心に、どこまでもまっすぐな感情を向けてくる和也の言葉が希望を灯すためには、揺るぎない家族の存在が必要と思い、結果として家族を描く形になりました。

応募時に設定していたキャッチコピー、≪君の明日に「聖なるかな」と唱えたい≫は、和也の気持ちであり、瑛の言葉でもあります。

――こちらもお気に入りのシーンを教えいただけますか。

とてもささいなシーンなのですが、第三話の「借り物競争」の回想で和也が「俺かよ…」とつぶやくところが好きです。

素直そうに見せながら実は……、という和也のキャラクターがにじみ出ているように感じました。

あとは、瑛の戸惑ったように笑うシーンや心配そうな視線などに、和也との距離感を測りかねている心情が見えて、コミカライズならではの表現に感動しています。

薫子様、ありがとうございます!今後の展開、楽しみにしています!

両親の再婚の1年前。体育祭で救護係を担当していた和也のもとに、怪我をした女子生徒を連れてきた瑛。これが2人のファーストコンタクトだった。

私自身、一読者として続きを心待ちにしておりますので、ぜひ皆様もご一緒に、楽しみにしていただけたら嬉しいです

――今回コミカライズされた2作品の他にも、「ステキブンゲイ」では「恋愛」や「友情」を描いた現代劇から時代小説、ファンタジーと幅広いテーマで多数の作品を発表されています。小説を書く上で、大切にされているのはどんなことですか?

最初の発想はカケラぐらいで、散り散りバラバラのメモになっています。好きなシーンだけを、書き散らしていきます。

それを繋げて書き始めると、いろんなエピソードが思い浮かんで、やがてひとつの作品になっていく、という感じです。

書き上げてからは、声に出して読んでみて、リズム感を確かめるようにしています。

そして、ストーリー展開で大切にしているのは、読んでくださった方が共感できるような、納得の着地点です。

そのため、あまりに唐突な展開などは避けがちなので、驚きが足りないと評されることもあるのですが……誰かの琴線を震わせるような作品を生み出したいと、いつも願っています。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。

今回コミカライズいただいている2作品は、私の想像以上に素晴らしい展開を迎えています。

私自身、一読者として続きを心待ちにしておりますので、ぜひ皆様もご一緒に、楽しみにしていただけたら嬉しいです。

そして、「小説家・村田真奈美(Manami.M)」としての夢は、何度も読み返したいと思ってもらえるような一冊を出版することです!

紙の本として、誰かの大切な一冊になるべく精進してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

『秘密の恋は、満月の夜に』あらすじ
仕事は楽しく、充実した日々を送りながらもどこか満たされない美海。彼女はその気持ちを”セックス”でなんとかごまかしていた。そんな彼女の部署に新しく配属されたのは水城陸。優秀、けれどそっけない。 ある日、ホテルから出た所で、彼と出くわしてしまい……。

『サンクトゥス・ファミリア』あらすじ
兄として現れた男は、学校の先生だった――。 母の再婚相手とその息子・音羽瑛と会うことになった和也。 瑛は偶然にも和也の学校の教師だった。 「家族」に特別こだわる瑛は、教師と生徒ではなく和也と本当の兄弟になろうとする。 過去のトラウマを抱えた和也は「良い子」ではいられなくなり、次第に家族は壊れていく。 だが、どんなときでも寄り添ってくれた瑛の優しさに、だんだんと和也の心は解けていく。瑛もまた誰にも言えない悩みを抱えていて――。 真の家族の物語。

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著者プロフィール

村田真奈美(ムラタ・マナミ)

「Manami.M」名義でステキブンゲイ等で活動中。2006年に刊行した『翠雨に消えた約束』が電子書籍として昨年配信開始された。詳しくは下記URLをご覧ください。

https://d21.co.jp/book/detail/978-4-910906-63-8

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