2000年代に入ったころから、日本各地で地域振興や企業PRを託された「ご当地キャラクター」がたくさん生まれ、一大ムーブメントになりました。動物や擬人化された地域特産品などをベースにデザインされた「ゆるキャラ」と呼ばれるマスコットキャラクターのブームも記憶に新しいところでしょう。

そしてもうひとつ、マスクとヒーロースーツに身を包み、正義の心と派手なアクションで子供たちを魅了する「ご当地ヒーロー」も、全国区のTVヒーローとは違った地域密着型の活動で大きな人気を集めています。

元お笑い芸人にして、漫画家、小説家とマルチな才能で活躍するおぎぬまXさんの最新小説『爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー』は、そんなご当地ヒーローをモチーフにしたユニークな作品です。

誘拐された子供を救ったのは、諸事情で世に出ることのなかった企業オリジナルのヒーロー? しかもそのヒーローが犯人を殺害!? そして起こるさらなる事件……!! ご自身の経験も活かしたご当地ヒーロー事情とともに「わが街のヒーローによるわが街の殺人」を描いたおぎぬまXさんにお話を伺いました。

『爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー』(宝島社文庫)

実際に二年ほど、ご当地ヒーローの運営会社のデザイン部で働いていた時期がありました

――今回の『爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー』について、これから読む方へ、どのような物語かをお教えいただけますでしょうか。

物語は東京都町田で奇妙な殺人事件が起きることからはじまります。身代金目的で誘拐された子どもが、ヒーローの姿をした何者かに救出されます。しかし、そのヒーローは子どもを救出する時に誘拐犯の首を絞めて殺害していたのです。

一方、町田のご当地ヒーロー「マチダーマン」の運営会社で働いている志村という青年は、事件の詳細をニュースで知り衝撃を受けます。子どもが描いたヒーローのイラストは、自分がかつてデザインしたものの、諸事情でお蔵入りとなった「幻のヒーロー」とそっくりだったからです。

倉庫で封印されているはずのヒーロースーツを持ち出したのは何者なのか?

子どもを救ったとはいえ、殺人を犯したヒーローは、正義なのか、悪なのか?

町田を舞台とした熱いミステリです!

――この作品が生まれたきっかけを教えていただけますでしょうか。

実際に二年ほど、ご当地ヒーローの運営会社のデザイン部で働いていた時期がありました。

平日は怪人やヒーローのデザインをして、土日はアクションショーの手伝いをするので、本当にツラかったのですが、その中でしか見れない世界や、個性的な人たちは、いつか小説で書きたいなとずっと思っておりました。

怪人たちはそれぞれエゴや秘密を抱えた、不気味ながらも魅力的な存在

――ご執筆にあたって、苦労されたことや、当初の構想から変わった部分など、なにかエピソードがありましたらお聞かせください。

町田の悪人を狩る〈殺人ヒーロー〉の正体に迫る過程で、主人公の志村は何体もの〝怪人〟と対峙します。その怪人たちはそれぞれエゴや秘密を抱えた、不気味ながらも魅力的な存在で、この怪人たちとの対決を書いてるうちに、どんどんと物語が大きくなっていきました。

特に最終章の怒涛の対決ラッシュは、書きながらクラクラとしてしまいました。

――どのような方にオススメの作品でしょうか? また、本作の読みどころも教えてください。

ご当地ヒーローはもちろん、特撮作品、少年マンガなどが好きな人には、ぜひ読んでいただきたいです。

ミステリ小説というと、お堅いイメージがあるかもしれませんが、『爆ぜる怪人』はとにかく熱い作品なのです! 普段あまりミステリを読まないという方も、安心して手に取っていただきたいですね。

具体的な推しポイントでいうと、アクションショーの裏側を徹底的に書き切った第三章や、これまでに登場した全ての怪人と決着をつける第五章は、ぜひ一気読みしていただきたいです!

町田出身であったり在住の方は、作品でいくつも登場するロケーションにニヤリとするはずです

――小説を書くうえで、いちばん大切にされていることをお教えください。

冒頭のつかみや、中盤の急展開、ラストシーンなど……物語を盛り上げるシーンが、きちんと目に浮かぶか。ずっと書きたかったシーンを、想定以上の盛り上がりで書けたかどうか、そういった手応えを大切にしています。

――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。

『爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー』は、咽せるような熱いミステリです!

ご当地ヒーローや特撮作品が好きな方はもちろん、僕の地元である町田が舞台なので、町田出身であったり在住の方は、作品でいくつも登場するロケーションにニヤリとするはずです。

6月25日「池袋ムーブメントスタジオ」でのサイン会では、このためだけに作ったヒーロースーツで、謎解きとアクションショーが合体した熱いイベントを開催します。ぜひ、本書を持っていらしてくださいませ!

Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?

自分が小説の凄さを知ったきっかけでもある、小説家の宮内悠介先生とお会いできたことです。

こうして思い出しただけでも、胸が熱くなります……!!

Q:ご自身は、どんな小説家だと思われますか?

まだ道の途中ですが、“熱さ”を追求している作家です。

見せかけの熱さではなく、本物の熱さを全国の読者にお見せできるように精進します……!!

Q:おすすめの本を教えてください!

■『盤上の夜』宮内悠介(東京創元社)

■『地図と拳』小川哲(集英社)

■『十角館の殺人』綾辻行人(講談社)


おぎぬまXさん最新作『爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー』

『爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー』(おぎぬまX) 宝島社文庫
 発売:2023年06月06日 価格:820円(税込)

著者プロフィール

おぎぬまX(オギヌマエックス)

1988年、東京都生まれ。お笑い芸人として活動後、ギャグ漫画家に転身。2019年に「だるまさんがころんだ時空伝」で「第91回赤塚賞」に入選し雑誌デビュー。テレビ出演や雑誌連載『謎尾解美の爆裂推理!!』などで人気を集める。2020年には『地下芸人』で「ジャンプ小説新人賞2019【小説フリー部門】」銀賞を受賞し小説家として執筆活動も開始。2022年の「第21回『このミステリーがすごい!』大賞」で最終候補作となった本作が、「2023年隠し玉」として刊行の運びとなる。近著に『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』がある。

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