恩田陸さんの最新長編作品『夜果つるところ』が発売されました。
恩田さんといえば、5月にも600ページを超える大長編作『鈍色幻視行』を刊行したばかりですが、実はこの2作品は、それぞれ独立した小説でありながら、深い繋がりを持った作品なのです。
発売:2023年06月26日 価格:1,980円(税込)
遊廓「墜月荘」で暮らす「私」の3人の母。産みの母である和江は孔雀の声を真似し、日がな鳥籠を眺めている。その代わりに身の回りのことを教えてくれるのは育ての母・莢子。そして表情に乏しく、置き物のように帳場に立つ名義上の母・文子。ある時、「私」は館に出入りする男たちの宴会に迷い込む。着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近しさを感じる「私」。だがそれは、夥しい血が流れる惨劇の始まりで……。
「謎多き作家『飯合梓』によって執筆された、美しくも惨烈な幻想譚」と位置づけられた小説――それが『夜果つるところ』という作品です。
そして、「過去に3度、映像化が頓挫した呪われた作品」であるこの『夜果つるところ』に吸い寄せられるように集まったキャラクターたちが、2週間のクルーズ旅行の中で、その呪いの真実に迫ろうとする物語が『鈍色幻視行』なのです。
発売:2023年05月26日 価格:2,420円(税込)
撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜果つるところ』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜果つるところ』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――。
構想・執筆に15年をかけた壮大なメタフィクション!
恩田さんが『鈍色幻視行』の執筆・連載をはじめたのは2007年。何度かの中断を経て2022年に連載を終えました。その途中、2010年から1年をかけて発表されたのが『夜果つるところ』。これまでにもひとつの小説の中に、鍵となる別の物語を織り込む作中作の手法で描かれた恩田作品はありましたが、今回はその作中作自体が1冊の書籍として刊行されたのです。
『夜果つるところ』は、カバーが「飯合梓」名義版とのリバーシブル仕様となっていて、この2作品が生み出すメタフィクションとしての味わいにより臨場感を与えてくれます。
稀代のストーリーテラーが仕掛けた幻惑のような読書体験に、ぜひ身を委ねてみてはいかがでしょうか。
【著者プロフィール】
1964年、宮城県生まれ。1992年、前年の「第3回日本ファンタジーノベル大賞」最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年に『夜のピクニック』で「第26回吉川英治文学新人賞」と「第2回本屋大賞」、2006年には『ユージニア』で「第59回日本推理作家協会賞」、2007年には『中庭の出来事』で「第20回山本周五郎賞」をそれぞれ受賞。2017年に『蜜蜂と遠雷』で「第156回直木賞」と、2度めとなる「第14回本屋大賞」を受賞した。その他の作品に『スキマワラシ』『灰の劇場』『薔薇のなかの蛇』『愚かな薔薇』『月曜日は水玉の犬』(エッセイ集)、『なんとかしなくちゃ。 青雲編』などがある。