『神と黒蟹県』(絲山秋子) 文藝春秋
 発売:2023年11月13日 価格:1,980円(税込)

県のシンボルのようにそびえたつ黒蟹山。県庁や裁判所を有する県のビジネス拠点である紫苑市と、かつての中心地で重要文化財・黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、仲が悪い。巨大な敷地のショッピングモールの向こうには延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体された百貨店に由来する「デパート通り」の名称がいつまでも残り、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある――黒蟹県は、そんな日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する「半知半能」の神。彼らのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。

【著者プロフィール】

1966年、東京都生まれ。2003年に「第96回文學界新人賞」を受賞し、翌2004年に受賞作『イッツ・オンリー・トーク』でデビュー。2004年に『袋小路の男』で「第30回川端康成文学賞」を、2005年には『海の仙人』で「第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞」を受賞し、2005年、『沖で待つ』で「第134回芥川賞」を受賞した。2016年には『薄情』で「第52回谷崎潤一郎賞」を受賞している。その他の著書に『逃亡くそたわけ』『ラジ&ピース』『ばかもの』『妻の超然』『末裔』『小松とうさちゃん』『夢も見ずに眠った。』『御社のチャラ男』『まっとうな人生』などがある。

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