高校時代からの女友達同士の4人が、20代の半ばを過ぎ、これからの人生の最良を考えたときに導き出した答え。それは「4人での同居」だった――今回ご紹介する、発売されたばかりの小林早代子さんの新刊『たぶん私たち一生最強』は、ひと言で表すならそんな物語です。

別に男がいらないとは思わないし、結婚や出産を選択肢から除外したわけでもない。でもそれとは別に、いま自分が「将来にわたって最高に過ごせる」と思えるのは、ずっとみんなと一緒にいることなんじゃないだろうか? それを信じて選んだ花乃子・百合子・澪・亜希の4人それぞれの想いを真摯に、そして赤裸々に描いた小林さんにお話を伺いました。

男性と結婚しても最終的には友達のような関係になっていくなら、長年培った友情のもと女同士で家族になるのはかなりアリなんじゃないか?

――今回の『たぶん私たち一生最強』について、これから読む方へ、どのような作品かをお教えいただけますでしょうか。

高校の同級生である女4人が一緒に暮らし、家族になることを目指す物語です。

東京在住の26歳である4人は、友人たちが結婚や出産など、「幸せっぽい」方向に駒を進めていく中で、どうせ男性と結婚しても最終的には友達のような関係になっていくなら、長年培った友情のもと女同士で家族になるのはかなりアリなんじゃないか? と考えます。

女友達との暮らしでは満たされない「性愛」や「生殖」の問題を、彼女たちがどう解決し、どう折り合いをつけていくかを登場人物それぞれの視点から描きました。

――この作品が生まれたのはどんなきっかけだったのでしょうか。

私自身が26歳くらいの頃、長く交際した恋人と別れて2年くらい気が動転していました。もう女友達と一生暮らせたらいいのにな〜と考えていたけどけどそんなこと友人たちにお願いする勇気はなく、旧Twitterの鍵アカウントで女友達4人でルームシェアしている体の虚妄ツイートをまことしやかに投稿し続けたり、本作を書き進めたりすることで心を保っていました。その後、それを見かねた友人が声をかけてくれ、実際に親友と二人で二年間ルームシェアをすることになりました。そのルームシェア経験が本作の元になっているわけではありませんが、細部や実感としては作品に活きたと思います。

女同士の人生や友情に焦点を当てて書いていたつもりが、終わってみれば、セックスについても多くの熱量を注いでいたことに気づきました

――ご執筆にあたって、苦労されたことや、当初の構想から変わった部分など、なにかエピソードがありましたらお聞かせください。

女同士の人生や友情に焦点を当てて書いていたつもりが、終わってみれば、セックスについても多くの熱量を注いでいたことに気づきました。執筆中はセックスに強くフォーカスしているつもりはなかったので、セックスとはそれだけ20代後半の登場人物や作者である私にとって、とても自然なことであり、かつ重要事項だったのだと思います。

――本作は、特にどのような方にオススメの作品でしょうか? 読みどころなども含めて教えてください。

この作品は、主人公たちのように、私の人生どうすんの? 幸せってな〜んだろ? と思い悩んでいる女性たちだけでなく、もうそのステージにはいないけど気持ちはわかるという方々、あるいは正直こんな生活はnot for me だな〜と感じる方々にもぜひ読んでいただきたいです。こういう選択肢もアリなのかも? 世の中にはこういう選択をしてる人もいるのかも? と、皆様の人生の視野をほんのちょっぴり自由にできたらいいなと思います。

この6年間、小説以外の私生活に全力で七転八倒・七転び八起きしていたからこそこの作品が書けた

――小説を書くうえで、ご自身にとっていちばん大切にしていることや拘っていることをお教えください。

物語上必要だからという理由で、ただの嫌なやつを書かないことです。嫌な登場人物が意地悪なことをして嫌悪感を抱かれ、のちに痛い目を見て読者がスカッとするというような流れがあまり好きではありません。今後もしかしたら「根っから嫌なやつ」を描写することがあるかもしれませんが、その時は相応の覚悟と愛情を持って書きたいと思っています。

――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。

この作品は私の6年ぶり2冊目となる単行本で、私の20代の集大成とも言える本になりました。書きあぐねて苦しい時間も長かったですが、この6年間、小説以外の私生活に全力で七転八倒・七転び八起きしていたからこそこの作品が書けたと思っています。これからは執筆活動に本腰入れて、もっと良いペースで作品をお届けできるよう頑張りたいです!

Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?

今カリフォルニアに住んでいるのですが、日本に一時帰国して家族や友人に会えたこと。本作の発売に立ち会えたこと。

Q:ご自身はどんな小説家だと思われますか?

古びることを恐れずに、時代の空気を読める作家でありたいと思っています。

Q:おすすめの本を教えてください!

■『望むのは』古谷田奈月(新潮社)

■『ハジケテマザレ』金原ひとみ(講談社)

■『しき』町屋良平(河出書房新社)


小林早代子さん最新作『たぶん私たち一生最強』

『たぶん私たち一生最強』(小林早代子) 新潮社
 発売:2024年07月24日 価格:1,760円(税込)

著者プロフィール

小林早代子(コバヤシ・サヨコ)

1992年、埼玉県生まれ。2015年に「くたばれ地下アイドル」で「第14回女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。同作を表題とした短編集を2018年に上梓。

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