2021年10月13日に山本文緒さんが急逝されてから1年が経ちました。
闘病中であったこともあまり公にはされておらず、直前の9月には、結果的に遺作となってしまった短編集『ばにらさま』が刊行されたばかりでの訃報に、誰もが耳を疑ったのではないでしょうか。

『ばにらさま』(文藝春秋)2021年9月13日発売 1,540円(税込)

2000年に『プラナリア』で「第124回直木賞」を受賞し、恋愛小説の名手として知られた山本さん。2003年にうつ病を発症し、執筆活動の中断を余儀なくされたものの、約6年の闘病生活を経て復帰。2020年に発表した7年ぶりとなった小説『自転しながら公転する』が「第27回島清恋愛文学賞」と「第16回中央公論文芸賞」を受賞し、さらなる活躍に大きな期待が寄せられていた最中だっただけに、喪失感はいっそう大きく感じられました。
今年1月には、少女小説から一般文芸へと進出した第一作である、1992年の作品『パイナップルの彼方』が、彩瀬まるさんの解説を加えた新装刊文庫として発売されました。この10月28日には『自転しながら公転する』も新潮社より文庫化が予定され、山本さんの遺した小説作品はこれからもみなさんの中で生き続けます。
加えて、小説とは別の形で山本さんが遺した言葉の数々を収めた、2冊の新刊書籍が相次いで刊行となります。最期まで「言葉」を紡ぎ続けた小説家・山本文緒さんを、いつでも思い出すことのできる作品です。

『パイナップルの彼方』(角川文庫)2022年1月21日発売  748円(税込)
『残されたつぶやき』(山本文緒) KADOKAWA
 発売:2022年09月21日 価格:858円(税込)

まずご紹介するのは、これまで書籍未収録だった原稿を中心とした、新聞や雑誌に寄稿したエッセイと、山本さんが2008年から亡くなる直前までの13年間、SNSでつぶやいた日常の言葉をまとめたエッセイ集です。
「関西弁って深刻さが薄れる。スマホのメモ機能に『悩みメモ』というのをつけていて、そこへ書く悩みを関西弁にすることを思いついた」
「2021年の極めつけはNHK『あさイチ』のプレミアムトークに出演したこと。その数日前に自宅の階段から落ちて左足を負傷、服や靴を新調したのにサンダルで出演というガッカリな事態に」
――などなど、家族や友人、仕事についての山本さんの想いが、ご本人やご家族による自然や花の写真と共に、オールカラーの文庫になりました。

『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』(山本文緒) 新潮社
 発売:2022年10月19日 価格:1,650円(税込)

お別れの言葉は、言っても言っても言い足りない――。
山本さんが膵臓がんの診断を受けたのは2021年の春。おりしもコロナ禍の真っ最中のことでした。
その日から、ご主人とふたりきりで過ごす自宅での闘病生活が始まりました。それはあたかも、思いがけない大波にさらわれ、ふたりだけで無人島に流されてしまったかのように……。
これを書くことをお別れの挨拶とさせて下さい――。これは58歳で余命宣告を受け、それでも書くことを手放さなかった山本さんが、最期まで綴っていた闘病日記です。

【著者プロフィール】

1962年、神奈川県生まれ。1987年に「コバルト・ノベル大賞」佳作受賞作『プレミアム・プールの日々』でデビュー。少女小説での活躍を経て、1992年の『パイナップルの彼方』から一般文芸に進出。1999年、『恋愛中毒』で「第20回吉川英治文学新人賞」受賞。2001年には『プラナリア』で「第124回直木賞」を受賞。2021年『自転しながら公転する』で「第27回島清恋愛文学賞」と「第16回中央公論文芸賞」を受賞。その他の著書に『落花流水』『ファースト・プライオリティー』『なぎさ』『ばにらさま』など。

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