映画化された『ぼぎわんが、来る』など、衝撃のホラーやミステリーを放ち続ける小説家、澤村伊智さん。

ご自身のことを、不器用で非効率的な小説家だと語る澤村さんに、最新作『邪教の子』について語っていただきました。


ニュータウンを舞台に「囚われの姫を勇敢な若者が奪還する」!?

『邪教の子』はニュータウンを舞台にした、ある新興宗教とその信者の子供の物語です。
カルトの熱心な信者である母親に「治療のため」と監禁・虐待されている病弱な少女を助けるため、近隣に住む少年少女が奮闘する、というところから物語は始まります。

「ニュータウンを舞台にした物語が書きたい」「前半と後半でスパッと分かれる構造の物語が書きたい」という、大きく2つの気持ちから本作を書きました。 物語前半に関しては「囚われの姫を勇敢な若者が奪還する」という古典的なストーリーが基盤になっています。


当初の構想から変わった結末!?

本作は雑誌連載の書籍化です。連載前に自分としては細かくプロットを固めたのですが、編集者に何度も「もう一声」と突っ返されて難儀しました。

加えて、いざ連載が始まると編集者のみならず編集長からも、プロットとは異なる提案が頻繁に出されました。結果、連載最終回は当初のプロットとは「犯人」が別人になりました。また連載終了後、書籍では結末を変更してほしいとの提案を強く出され、悩みましたが承諾しました。

プロットからの大きな逸脱はこれまでにも何度かありましたが、こうした形での変更は初めてで、このやり方が正しかったのかは正直「分かりません」。
……などと言いつつ、この本が好評だったら上機嫌になると思います。


世の中の大変さを一時でも忘れられる、人生の清涼剤に

本作は、ジャンルとしてはサスペンスです。

「正義感の強い子供が悪い大人に立ち向かい、可哀想な子供を助ける話だ」と思って読んでいただければと思います。

今の世の中の大変さを一時でも忘れられる、人生の清涼剤になったらいいなと思っております。楽しんでいただければ幸いです。


小説を書く(構想する)うえでこだわっていることを、澤村さんは「娯楽作家には当たり前のことかもしれませんが……」と前置きし、
・ベタと通俗を恐れない
・ベタと陳腐さを履き違えない

と二つ、あげてくれました(これらはデビュー以前から意識されていたそうです)。
このこだわりが「正義感の強い子どもが悪い大人に立ち向かい、可哀想な子供を助ける」という骨太のプロットに繋がったのかもしれません。

Q、最近、嬉しかったことは?
A、近所の花屋が新鮮な野菜を安価で売っていると知ったこと。スーパーに行くのが馬鹿らしくなるレベルの品揃えです。


澤村伊智さん最新作『邪教の子』

『邪教の子』(澤村伊智) 文藝春秋
 発売:2021年08月24日 価格:1,870円(税込)

澤村 伊智(小説家)

1979年11月14日生まれ。
大阪府生まれ、兵庫県出身。東京都在住。

2015年、第22回日本ホラー小説大賞を『ぼぎわんが、来る』で受賞。本作にて小説家デビュー。2019年、『学校は死の匂い』で第72回日本推理作家協会賞<短編部門>受賞。

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