記録的な猛暑となっている今年の夏。熱帯夜続きで眠れない夜をお過ごしの方も多いのでは? そんなときには背筋も凍るホラー小説で、アタマの中から冷やしてみるのはいかがでしょうか?  もちろん、怖すぎて眠れなくなるのは、また別のハナシ。

 

『怪談小説という名の小説怪談』(澤村伊智) 新潮社
 発売:2022年06月30日 価格:1,760円(税込)

狂気とは、怪奇とは、そして、それを語るということとは――。恐怖の概念を揺さぶる、唯一無二の「怪談小説」集。深夜の高速道路で語られる百物語、学校を彷徨う伝説の幽霊、子連れでの散歩中に遭遇した呪いの物件……。古今語り継がれる「怪談」の数々を、ホラー界の旗手が戦慄のアップデート。精緻な技巧と無慈悲な想像力が邂逅を果たすとき、そこに真の〈恐怖〉が現出する――。「小説」ならではの企みに満ちた、著者真髄特濃短編集。 

★こちらもチェック→ホラー作家・澤村伊智、最新作『邪教の子』を語る!(2021年8月21日)

【著者プロフィール】

1979年、大阪府生まれ。2015年に「第22回日本ホラー小説大賞」を受賞し、受賞作を改題した『ぼぎわんが、来る』でデビュー。2019年に「学校は死の匂い」で「第72回日本推理作家協会賞(短編部門)」を受賞。2020年には『ファミリーランド』で「第19回センス・オブ・ジェンダー賞」特別賞を受賞している。主な作品に『ずうのめ人形』『恐怖小説 キリカ』『予言の島』、近著に『怖ガラセ屋サン』『邪教の子』『ぜんしゅの跫』などがある。

『あさとほ』(新名智) KADOKAWA
 発売:2022年07月01日 価格:1,760円(税込)

幼い頃、夏日の目の前で双子の妹・青葉は「消失した」。両親を含めた誰もが青葉のことを忘れ、彼女を覚えているのは、夏日と、消失の瞬間を一緒に目撃した幼馴染の明人だけだった。青葉を忘れられないまま大学生になった夏日は、研究室の教授が失踪したとの報せを受ける。先生は、平安時代に存在したがその後失われてしまった「あさとほ」という物語を調べていたらしい。先生の行方と未詳の物語「あさとほ」を追う夏日は、十数年ぶりに明人と再会し、共に調査を始めるが――。二人が「行方不明の物語」の正体に辿り着くとき、現実は大きくその姿を変える。

【著者プロフィール】

1992年、長野県出身。2021年『虚魚』で「第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」大賞を受賞し、デビュー。

『煉獄蝶々』(岩井志麻子) KADOKAWA
 発売:2022年07月27日 価格:1,760円(税込)

明治38年、岡山。名家・大鹿家に拾われた一人の赤子。保和と名付けられた彼は、大鹿の養子として乳母の春に育てられることに。春の語る残酷な怪異譚を聞きながら、愛憎渦巻く名家で青年となった彼は、この世ならざるものを感じることができた。昭和3年、失踪していた文学の師で放蕩者の作家・金光から保和に帳面が届く。そこには、自ら殺し、そして蘇らせた妻とのおぞましくも妖しい旅行記がつづられていた。金光の記録に魅せられ、読みこんでいくうちに精神を浸食される保和。日常さえも次第に歪められていく中、彼はことの真相を確かめるべく、金光夫妻が逗留しているという新嘉坡へ向かう。

【著者プロフィール】

1964年、岡山県生まれ。少女小説作家として活動後、1999年に「ぼっけえ、きょうてえ」で「第6回日本ホラー小説大賞」を受賞。同作を表題とした短編集で2000年に「第13回山本周五郎賞」を受賞。2002年には『岡山女』で直木賞候補となる。同年には、『trái cây〔チャイ・コイ〕』で「第2回婦人公論文芸賞」、『自由戀愛』で「第9回島清恋愛文学賞」も受賞している。主な著書に『魔羅節』「現代百物語」シリーズ、『小説 エコエコアザラク』「忌まわ昔」シリーズなどがある。

『アナベル・リイ』(小池真理子) KADOKAWA
 発売:2022年07月29日 価格:1,980円(税込)

1978年、悦子はアルバイト先のバーで、舞台女優の夢を持つ若い女・千佳代と出会った。特別な友人となった悦子に、彼女は強く心を寄せてくる。しかし、千佳代は恋人のライター・飯沼と入籍して間もなく、予兆もなく病に倒れ、そのまま他界してしまった。 千佳代亡きあと、悦子が飯沼への恋心を解き放つと、彼女の亡霊が現れるようになり――。耽美にして妖艶な幻想怪奇小説。

【著者プロフィール】

1952年、東京都生まれ。1978年、エッセイ集『知的悪女のすすめ』で作家デビュー。1985年には小説作品『第三水曜日の情事』を発表。1989年に「妻の女友達」で「日本推理作家協会賞(短編部門)」、1996年『恋』で「第114回直木賞」、1998年『欲望』で「第5回島清恋愛文学賞」、2006年『虹の彼方』で「第19回柴田錬三郎賞」、2012年『無花果の森』で「第62回芸術選奨文部科学大臣賞」、2013年『沈黙のひと』で「第47回吉川英治文学賞」、2022年に「第25回日本ミステリー文学大賞」をそれぞれ受賞。近著に『月夜の森の梟』(エッセイ集)、『神よ憐れみたまえ』などがある。

『とらすの子』(芦花公園) 東京創元社
 発売:2022年07月29日 価格:1,760円(税込)

「とらすの会」の人は皆優しくて、居心地が良かったんです。中でもマレ様なんて嘘みたいに綺麗で、悩みを聞いてぎゅって抱きしめてくれました。でも“会議”では、誰かが「許せない人」への恨みをマレ様に訴えて、周りの人たちも口々に煽って……翌日、その「許せない人」は死体で見つかるんです。それが怖くて行かなくなったら、裏切者って責められて……。時間がないです、私、殺されます──。錯乱状態に陥った少女は、オカルト雑誌のライター・美羽の眼前で突然、爆発するように血肉を散らして死んだ。スクープを狙った美羽は「とらすの会」を訪ねるが、マレ様に出会ったことで、想像を絶する奈落へと突き落とされる──。『ほねがらみ』『異端の祝祭』がSNSで話題を攫ったホラー界の新星が描く、美しい異常。

★8月12日の「新刊インタビュー」には芦花公園さんが登場! お楽しみに!

【著者プロフィール】

東京都出身。2018年頃からWEBでの小説発表をはじめる。そのなかの1編である「ほねがらみ——某所怪談レポート」が大きな注目を集め、2021年に『ほねがらみ』でデビュー。その他の著書に『異端の祝祭』『漆黒の墓情』がある。

『かわいそ笑』(梨) イースト・プレス
 発売:2022年08月09日 価格:1,650円(税込)

インターネット上に伝わる多くの怪談。その中に何故か特定の「あの子」が被害にあう奇妙な怪談が出回っていた。とある掲示板のQRコード、インタビューの書き起こし、出典不明な心霊写真、匿名のメールデータ。筆者がこれまでに収集した情報をもとに怪談を読み解く、読者参加型のホラーモキュメンタリー。一見バラバラに見える情報から、浮かび上がってくる「ネット怪談の裏側の物語」とは。一度読んだら引き返せない、怪異が侵食する恐怖のネット怪談。

【著者プロフィール】

インターネットを中心に活動する怪談作家。2021年10月より、Webメディア「オモコロ」のオモコロライターとしても活躍中。

『呪街 警視庁異能処理班ミカヅチ』(内藤了) 講談社
 発売:2022年08月10日 価格:748円(税込)

ヤクザに追われアルバイト先も失い、路上で寝ていたところにスカウトを受け、警視庁本部の地下に間借りする、警視庁の研究班「ミカヅチ班」に職を得た霊視の青年・安田怜。最高責任者は元警視正の首なし幽霊、班長は陰陽師、同僚は悪魔憑きに虫使い……。警視庁の秘された部署であるその異能処理班は、事件を解決せず救わず、ただ「処理」する。警視庁の底に棲む「やつら」を描く、前代未聞の警察×怪異の物語第2弾! 東京・麹町のアパートで祓いの依頼を受けた安田。当日、住人は遺体で発見されたが警視正の指示はなぜか「なにもしないこと」だった――。

【著者プロフィール】

長野市出身。2014年に「ON」で「第21回日本ホラー小説大賞」読者賞を受賞、改題の上『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』でデビュー。同作からはじまる「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズは2016年に連続ドラマ化された。その他の著書に「東京駅おもてうら交番・堀北恵平」シリーズ、「夢探偵フロイト」シリーズ、「ヨロズ建物困難帳」シリーズ、近著に『ハニー・ハンター 憑依作家 雨宮縁』などがある。

『屋久島トワイライト』(樋口明雄) 山と溪谷社
 発売:2022年08月16日 価格:1,540円(税込)

「この島には異世界がたくさんあるんです。それぞれ別々の場所にあって、複雑に重なり合ってる。 けれども、どの世界もふつうの人間には立ち入ることができないんです」――オカルト雑誌<オーパーツ>の編集者である野々村舞は、伝説や実話怪談を集めて記事にするため、世界自然遺産・屋久島へ飛んだ。ツアーガイドの狩野哲也とともに、“河童博士”や口寄せを行う巫女に会った後、屋久島最高峰の宮之浦岳縦走へと向かった舞。彼女はそこで、不思議な世界に迷い込んでしまう――。現実と虚構が交錯する、屋久島山岳怪異譚。

【著者プロフィール】

1960年、山口県生まれ。2008年に刊行した『約束の地』で、「第27回日本冒険小説協会大賞」と「第12回大藪春彦賞」を受賞。2013年には『ミッドナイト・ラン!』で、「第2回エキナカ書店大賞」を受賞。主な著書に「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズ、『北岳山小屋物語』(ノンフィクション)、『ストレイドッグス As Time Goes By』『還らざる聖域』などがある。

『いるの? ノコナロくん』(黒史郎) PHP研究所
 発売:2022年08月18日 価格:1,210円(税込)

旧校舎の屋上に出る鉄扉の前で、おまじないを唱えると、ノコナロくんがあらわれて悩みを解決してくれるんだって――学校の噂を信じて、忘れものが多いことをノコナロくんに相談したユカが、家に帰ると、家族全員が「ぴぃぃぃ……」と笛のような声を出しはじめた!? ノコナロくんがリコーダーを忘れていることを教えてくれていたのだ。だけど、ノコナロくんの教え方はどんどんエスカレートしていって……!?「忘れんぼのユカ」)1編5分で楽しめる、ホラー連続短編12話を収録。あなたもノコナロくんに相談すれば、怖~い方法ですべて解決してくれますよ……。

【著者プロフィール】

1974年、神奈川県出身。2007年に「第一回『幽』怪談文学賞長編部門」大賞受賞作である『夜は一緒に散歩しよ』でデビュー。主な著書に『獣王』『黒水村』『100KB[キロババア]を追いかけろ』『ラブ@メール』「黒丸ゴシック」シリーズ、「幽霊詐欺師ミチヲ」シリーズ、「未完少女ラヴクラフト」シリーズ、「実話蒐録集」シリーズ、「異界怪談」シリーズなどがある。

『営繕かるかや怪異譚 その参』(小野不由美) KADOKAWA
 発売:2022年08月26日 価格:1,870円(税込)

渓谷で起きた水難事故で若者が亡くなる。彼は事故の直前、崖上に建つ洋館の窓から若い女に手招きされていた。一方、洋館に住む多実は、窓の外に妖しい人影を見る。「待ち伏せの岩」)/イビリに耐えて長年介護してきた順子には、死後も姑の罵詈雑言が聞こえる。幻聴だと思っても、姑の携帯番号から着信を受け、誰もいない家の階段で肩をつかまれ……。「火焔」)――建物にまつわる怪現象を解決するため、営繕屋・尾端は死者に想いを巡らせ、家屋に宿る気持ちを鮮やかに掬いあげる。待望の第3弾には恐怖と郷愁を精緻に描いた全編を収録。我が家は安心……だから危うい。 怖ろしくも美しい。哀しくも愛おしい怪談文芸の最高峰

【著者プロフィール】

1960年、大分県生まれ。1988年に少女小説作家としてデビュー。翌年からはじまった「悪霊」シリーズがコミカライズ、テレビアニメ化され人気を得る。1992年、「十二国記」シリーズの第1作となる『月の影 影の海』を発表。一方で「第5回日本ファンタジーノベル大賞」最終候補作となった『東亰異聞』や『屍鬼』『黒祠の島』も高い評価を受ける。2012年には『残穢』で「第26回山本周五郎賞」を受賞。同作は2016年に映画化された。2020年、「十二国記」シリーズで「第5回吉川英治文庫賞」を受賞している。その他の著書に「悪霊」シリーズを大幅リライトした「ゴーストハント」シリーズ、「営繕かるかや怪異譚」シリーズなどがある。

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