『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』(井上荒野) 朝日新聞出版
 発売:2022年04月05日 価格:1,980円(税込)

動物病院の看護師で、物を書くことが好きな九重咲歩は、小説講座の人気講師・月島光一から才能の萌芽を認められ、教室内で特別扱いされていた。しかし月島による咲歩への執着はエスカレートし、肉体関係を迫るほどにまで歪んでいく――。7年後、何人もの受講生を作家デビューさせた月島は教え子たちから慕われ、マスコミからも注目を浴びはじめるなか、咲歩はみずからの性被害を告発する決意をする。なぜセクハラは起きたのか? 家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 被害者の傷は癒えることがあるのか? 被害者と加害者、その家族、受講者たち、さらにはメディア、SNSを巻き込みながら、性被害をめぐる当事者たちの生々しい感情と、ハラスメントが醸成される空気を重層的に活写する、著者の新たな代表作。

【著者プロフィール】

1961年、東京都生まれ。父は小説家・井上光晴。1989年、「わたしのヌレエフ」で「第1回フェミナ賞」を受賞し、1991年に短編集『グラジオラスの耳』を発表するが、体調不良により活動を中断。2001年に『もう切るわ』で活動再開後、2004年に『潤一』で「第11回島清恋愛文学賞」し、2008年には『切羽へ』で「第139回直木賞」を受賞。その後も2011年『そこへ行くな』で「第6回中央公論文芸賞」、2016年に『赤へ』で「第29回柴田錬三郎賞」、2018年に『その話は今日はやめておきましょう』で「第35回織田作之助賞」を受賞している。近著に『百合中毒』『ママナラナイ』『そこにはいない男たちについて』など。

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