ひさびさにお届けする、話題のトピックをテーマに文芸作品を紹介する「ナニヨモトレンド」のコーナーです。
いま「話題のトピック」といえば誰もが思い浮かべるのは――そう、11月20日から中東・カタールで開催中の「2022FIFAワールドカップ」でしょう。
1930年の第1回大会から数えて今回で22回目となるこの大会、開催国以外は地域ごとに振り分けられた出場枠を長期間にわたる予選大会で奪い合い、勝ち抜いたチーム(第22回大会は32か国。次回大会より48か国)だけが出場できる、サッカーにおいては世界最高峰と位置づけられる、4年にいちどの世界選手権大会です。
1998年フランス大会にて悲願の初出場を果たして以降、「SAMURAI BLUE(サムライ・ブルー)」と呼ばれる日本代表チームは今回で7回目の出場を果たしています。
現在行われている1次ラウンド「グループステージ」では初戦で過去4大会で優勝した強豪・ドイツから大金星をあげ、第2戦のコスタリカに惜敗。決勝トーナメント出場を懸けて、日本時間12月2日に行われる世界ランキング7位(大会前発表。日本は24位)のスペインに挑みます

現実世界で熱戦が繰り広げられているサッカーですが、ここからは同じだけの熱量で描かれた「サッカーをテーマにした文芸」3冊をご紹介していきましょう!

最初にご紹介するのは、サッカーを中心にスポーツ・ジャーナリストとして活躍する木崎伸也さんの『アイム・ブルー サッカー日本代表「もう一つの真実」』(講談社)です。
2018年の前回大会直後に刊行された本書は、ジャーナリストとして取材で代表チームに深く関わってきた著者だからこそ知る真実をベースに、あのときの「日本代表」を描いたドキュメントタッチの小説です。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」での人気連載の書籍化となった本書。その「スポーツナビ」では本年10月まで、ペンネームを「木崎f伸也」として2030年を舞台にワールドカップ出場を目指す日本代表を描いた完全フィクションの続編も連載され、現在も公開中です。

続いてご紹介するのは、はらだみずきさん『サッカーボーイズ 再会のグラウンド』(KADOKAWA)です。
サッカーをテーマとした作品を数多く発表している著者ですが、その原点とも言えるデビュー作が本作です。
ジュニアサッカーチーム「桜ヶ丘FC」に所属する小学生・遼介を主人公に、チームメンバーたちとの友情や、周囲のコーチや家族が彼らを支える姿を真摯に描いた本作は、中学、高校と遼介らの成長を追い続け「サッカーボーイズシリーズ」としてスポーツ大河ドラマとなるまでの人気を集めています。

最後にご紹介するのは小野寺史宜さんの『ホケツ!』(祥伝社)です。
こちらも「部活モノ」ですが、主人公はサッカー部に所属しながら引退間近の現在までいちども公式戦の出場経験がない、万年補欠の高校3年生・大地。両親の離婚後、一緒に暮らしていた母も亡くし、同居する伯母の絹子にはレギュラーだと嘘をついてきたが、最後の大会は目前、そのあとには進路を決めなくてはいけない。そんな迷いの中にいる大地に、12年前に別れた実父から突然連絡があり……。
ヒューマンドラマの名手による、「表舞台に立つこと」だけではない人生の意味や価値が描かれた、爽やかな青春小説です。

日本代表の勝敗の行方が気になるのはもちろんですが、これを機にサッカーに触れ、その魅力に目覚めた方は、「文芸で描かれるサッカー」の熱さ、爽やかさにも注目してみてはいかがでしょうか?

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