2023年にスタートしたマンガ配信サービス「ステキコミック」が、新たにお贈りしているピクチャーノベル・レーベル「STORYTOON」はもうごらんになったことはありますか?

60秒で読める業界初の新フォーマットのこのSTORYTOONは、イラスト×小説で描かれる、縦スクロールの新感覚ピクチャーノベルです。スマホでの閲覧に最適化させた新しい形で、文章による物語表現とマンガのような読みやすさを両立。世界観や情景をイメージしやすいフルカラーイラストや、ページ送りなく1話分を一気に読める縦スクロールの画面構成から、次の展開が徐々に見えてくるワクワク感を味わうことでき、作品への没入感がUPします!

すでに配信されている多数のSTORYTOON作品の中から、今回はその第1弾として昨年末から配信がはじまり、大きな反響を集めている『QRaiN』(イラスト:春)のストーリーを担当する井上ぼくるさんにお話を伺ってみました。

素直に複数人でコンテンツを創作することの喜びみたいなものを感じました

――まず最初に、この『QRaiN』がどのような作品か、内容をお教えいただけますでしょうか。

『QRaiN』は死にたがりの主人公が、頬っぺたにQRコードの描かれた不思議な女の子と出会い、不可思議な能力や怪奇現象などに巻き込まれていく話です。

情報化の進む社会でなんとなく情報として知るだけだった人生観や言葉を、経験に落とし込んでいきながら、そこでどうやってオリジナルの居場所を見出せるかという修行、巡礼の旅っぽいものでもあります。

――作品が生まれたきっかけを教えていただけますでしょうか。

アイデアが生まれたのはコンビニだと思います。

二次元コードで決済する機会が徐々に増え、そのうちにQRコードのカオスや無秩序性が押し込まれたようなデザインそのものが好きになり「もしかしたらこれ使ってなんか出来るかも」と着想にいたりました。

それからはディズニーランドやUSJでのフェイスペイントなどを見て頬にQRコードをつけたヒロインのシルエットが生まれ、ボブディランの【はげしい雨が降る】から青い瞳を借りたり、オペラ【魔笛】から鈴の音を借りたりして、心地鈴音の輪郭が徐々に浮かび上がってきました。

――本作は、新たなフォーマットのピクチャーノベル「STORYTOON」として発表されたわけですが、最初に依頼があったときのお気持ちを教えてください。また実際に出来上がった作品をご覧になった感想はいかがでしたでしょうか

中村航先生からの提案だったので、やっぱり素直に嬉しかったです。

しかもほとんど自由に書かせて頂ける、イラストレーターさんも僕の好みで声がけしていいとのことで「こんなチャンス滅多にねぇぞお前」と自分を奮い立たせました。ネームバリューなし。目立った受賞歴もなし。そんな僕を拾って頂いたので。

出来上がった作品を見たときは、素直に複数人でコンテンツを創作することの喜びみたいなものを感じました。

今まで一人で書いてきたので、その辺りは非常に新鮮で刺激的です。

――イラストご担当の、ノーコピーライトガールの春さんとの制作作業はいかがですか?

新しいラフや清書を見せられる度、嬉しさのあまり脳が揺れそうです。

春さんのイラストからしか得られない栄養があるらしく、目にした時に思わず「うわぁ」とか「まじか」とか声に出ちゃうときもありました。

また、春さんのイラストから着想にいたるケースもあります。

いいイラストをバンバン上げてくれますので、時には自分の実力不足や不甲斐なさを感じたりもしますが、それら含めて自分にとってはかなり良い刺激になってるのかなと思います。

――また本作のイメージソングとなっているLACCO TOWERの『花束』についても感想をお聞かせください。

イメージソングを起用して頂けることは知らなかったので驚きました。

『QRaiN』公開日はクリスマスだったので、思わぬところからプレゼントを貰えたなぁという感じです。

勉強不足で『LACCO TOWER』さんについては存じ上げなかったのですが「超絶ベテランさんじゃねぇか」と腰を抜かしました。

『花束』も、束ねた透明感を真っすぐドストレートでぶつけたような曲で素敵でした。歌詞もところどころシンクロしてる点があるなぁ、と思います。

【LACCO TOWER 「花束」を使用した『QRaiN』ショートPVがコチラからご覧いただけます】

いろんな物語や表現に触れていくうち、自分も創作を通じてなにかを表現したい、という気持ちが徐々に育まれていった

――創作活動についてお伺いします。小説の執筆をはじめたのはいつ頃、どのようなきっかけだったのでしょうか?

執筆を始めたのは大学1年になる直前の春ぐらいだったと思います。

人が木になっていく過程を描いた処女作を群像新人賞に送ったんですが、選考通過したものの当然の如くぶち落とされました。

過去を振り返って、ドラマチックかつオシャレなきっかけを探してみましたが、特にありませんでした。

いろんな物語や表現に触れていくうち、自分も創作を通じてなにかを表現したい、という気持ちが徐々に育まれていったのかなと思います。小さい頃から父親がよく映画を観せてくれたので、その影響もあるんだろうなとも思います。

――創作活動での今後の目標はありますでしょうか?

とにかく良い作品を創り、届け続け、多方面巻き込みながら広げ続けていければ、と思います。

書籍化だったり、大勢の人に認知されることだったり、五年、十年後に掘り起こされたりするようなカルト的コンテンツを創ることだったり、そういう目標はいくつかありますが、前提として目の前の作品が良くなることを追求しなきゃいけないので、とりあえずそれを頑張りたいと思います。

あとはシンプルに欲を曝け出せば、こういう仕事を貰い続けて日々研鑽していきたいし、いつか『King Gnu』とか『toe』とか『Bloc Party』に会えるようなとこまで行きたいとか、パッと浮かぶのはそんな感じのことです。

――最後に読者に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

こういった機会があるのも皆さんのおかげです。

ホントにアルティメット感謝です。

『QRaiN』はおかげさまでますます面白くなり、常に良くなり続けています!

魅力的な登場人物も、新たな謎も新たな真相も増えたり減ったり、世界も大胆かつ繊細に広がっていきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

それからついでに井上ぼくるも覚えていって頂ければ幸いです。

『QRaiN』

屋上で命を絶とうとしていた「僕」の前に、頬にQRコードを浮かべた少女が突如現れる。彼女は僕の絶望の理由を言い当て、「読んじゃったから、キミのQRコード」と告げる……。『ステキコミック』で2023年12月より連載中の、STORYTOON配信第1弾作品。

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著者プロフィール

井上ぼくる(イノウエ・ボクル)

「すミす」名義でWEBを中心に執筆活動を展開中。昨秋開催された「文学フリマ東京37」で真夜書房より発表されたアンソロジー『夜温』にも参加。

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