『パンダ・パシフィカ』(高山羽根子) 朝日新聞出版
 発売:2024年10月07日 価格:1,980円(税込)

春先になると花粉症で鼻が利かなくなるモトコは、副業で働くアルバイト先の同僚・村崎さんから自宅で飼う小動物たちの世話を頼まれる。その後、職場を辞めた村崎さんのメールからは、パンダと人類をめぐる狩猟、飼育、繁殖の歴史がひも解かれ、ある目的で海外を転々としていることが見えてくるのだった。モトコが村崎さんの指示を仰ぎながら動物たちの世話をつづけるなか、上野動物園では日本が所有する最後のパンダ・リンリンが亡くなり、中国ではオリンピックを前に、加工食品への毒物混入事件と大地震が起きる――。命をあずかることと奪うこと。この圧倒的な非対称は、私たちの意識と生活に何を残すのか? 「命をあずかる」というケアの本質に迫りながら、見えない悪意がもたらす暴力に抗うための、小さく、ひそやかな営為を届ける問題作。

【著者プロフィール】

1975年、富山県生まれ。2010年に「うどん キツネつきの」で「第1回創元SF短編賞」佳作を受賞。同作がアンソロジー『原色の想像力』に収録されデビュー。2014年には同作を表題とした短編集を刊行。2016年に「太陽の側の島」(単行本『オブジェクタム』に収録)で「第2回林芙美子文学賞」を、2020年には『首里の馬』で「第163回芥川賞」を受賞。その他の著書に『居た場所』『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』『如何様』『暗闇にレンズ』『パレードのシステム』『ドライブイン・真夜中』などがある。

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