Webを中心に精力的に執筆活動を続け、各種文芸賞への投稿活動を続けてきた虹乃ノランさん。本年5月には「第9回カクヨムWeb小説コンテスト」にてエンタメ総合部門特別賞を受賞し、その受賞作となる『そのハミングは7』がいよいよ刊行されました!

9月に発表された「第四回ステキブンゲイ大賞」においてもSTORYTOON特別賞(コミカライズ特別賞)を受賞している虹乃さん。本書の刊行と合わせてSTORYTOON作品『パーテルノステル』の配信もスタート。

年末に、注目の2作品をリリースした虹乃さんに緊急インタビューを行いました!

大人になり、子供の頃に感じていた「どうして?」「なぜ?」という素直な心を知らず知らずのうちに忘れていることを思い知った

――今回の『そのハミングは7』について、これから読む方へ、どのような作品かをお教えいただけますでしょうか。

ハリケーンに遭い、視力を失った9歳の少年トビーの成長物語です。物語としては13歳のときの出来事が主に語られます。両親の愛に恵まれ、なんの不自由なく育ってきた少年が、天災に見舞われて全盲となり、心の闇に埋もれてしまいます。学校にも教会にも行かず、日々苛立ちながら4年という歳月を過ごしますが、ある日、父に与えられた仔犬のハミングと森を散歩していると、古い鍵を拾って……。というようなお話です。

鍵の持ち主であるジャンナ・グッドスピードという人物や、隣町のウェイトレスのサラ、田舎町ニネベに暮らす住人たちとの出逢いを通して、トビーはそれまで見えていなかった景色に気づきはじめます。

それぞれの心に映る事実と真実を描く長編小説です。

――この作品が生まれたのはどんなきっかけだったのでしょうか。

友人との会話でふと出た、「目から鱗が落ちる」という聖書由来の慣用句がはじまりだったような気がします。複雑な家庭環境のせいで学校教育を充分に受けられずに育った友人は、その言葉の意味を知らず、いかにも変な表現だと言って私を笑い飛ばしました。大袈裟で、滑稽に映ったようでした。その頃まだ私は小説を書き始めていませんでしたが、成長し、大人になり、子供の頃に感じていた「どうして?」「なぜ?」という素直な心を知らず知らずのうちに忘れていることを思い知りました。

今となっては当たり前となり、すっかりスルーしてしまう出来事の数々。依然として世界に蔓延る問題を、仕方ないとして見過ごしていないだろうか。それは人が「幸せに」生きていくためには、ある意味必然の「盲目性」かもしれませんが、その事実そのものがとてつもなく悲しい現実であること。

また同時期に、「聖地エルサレムの帰属問題をめぐる討論番組」の中で、コメンテーターが「事実と真実は違うんです!」と叫んでいたことが心に残っていました。戦争や対立は、どちらもが「正しい」と思ってはじまります。どちらにも「真実」があり、その真実に則るのであれば、どちらの言い分も「正しい」のです。

ハードルを上げるつもりは毛頭ないのですが、テーマはなんですか? と訊ねられたら「事実と真実」です、と答えるでしょう。翻訳小説のようだとよく言われますが、文体は難しくありませんし、語り口調もあって読みやすいと思います。ぜひお手に取っていただければと思います。

できるだけ難しく考えず、ニュートラルな心でお読みくださったらうれしいです

――ご執筆にあたって、苦労されたことや、当初の構想から変わった部分など、なにかエピソードがありましたらお聞かせください。

『そのハミングは7』の初稿を書き上げたのは2016年の2月です。もちろんその後大幅に加筆していますが、私にとってこれが二作目の小説となりました。新約聖書「使徒行伝」第9章のエピソード「目から鱗が落ちる(見えていなかったものが見えるようになる)」をきっかけとして、生まれたストーリーでしたので、目の見えない少年の物語であることは自ずと決まりました。

一作目に書いた児童向け冒険ファンタジー『エルセトラ』(こちらは第四回ステキブンゲイ大賞にてSTORYTOONコミカライズ特別賞をいただきました)は、三人称で書いていますが、二作目に選んだのは全盲となった少年の一人称。絶望の淵から這い上がる繊細な心の道筋を描くには一人称しかありえない、自然とそう考えてのことではありましたが、我ながら無謀なことをしたものだと今となっては思います。当時のフレッシュな情熱があってこそ、これを書き切れたのかもしれません。

話が逸れました。苦労した部分といっていいかわかりませんが、視力を失った少年の一人称を書くと決めてまず始めたのは、自分自身の視界を塞ぐことでした。目にテープを貼り、光が漏れないように上から包帯を巻いて、まずは完全に視力を使わない生活を二週間ほど続けました。変化はすぐに現れました。五感――私の感覚機能がガラガラと崩れて再構築されていくのがわかりました。日常生活の中で、それまで視力にいかに頼り切っていたか思い知りました。聴覚や嗅覚、皮膚感覚がとても鋭敏になり、それまでは平気だった匂いに気持ち悪くなって吐いたり、ふと手にしたタオルの感触が気持ち悪くなり投げ捨てたり、平衡感覚がおかしくなってベッドに横たわっているだけで酔ったりしました。しかし比較的すぐに外を歩けるようになり、見えないはずなのに近くにある空気が動くのが感じられたり、触るだけでそれが何かおおよそ判別できるようになりました。指先の繊細な感触が私の脳内に鮮明なイメージを送ってくるようになりました。

包帯を外したあとも、たびたび目隠しを繰り返しながら書き進めました。とにかくトビーに憑依して、トビーが感じたことを書く、ということのみに集中しました。ハリケーンのシーンが冒頭にあるのですが、あのシーンを書くにあたっては、暗くしたお風呂場にパソコンを持ち込み、冷え切った湯船に浸かったまま、延々とループさせたハリケーン映画の1シーンに溺れながら書きました。ありがとう映画。ありがとうハリウッド。

第十章で、トビーが弁舌をふるうシーンがあるのですが、そこにこんな言葉があります。

“僕は無我夢中で話しながら、泣きそうになっていた。言葉はすでに、自分のものではない気がしていた。自分でも理解していなかった僕の事実から、隠されていた僕の真実を、誰かが乗り移って整理して、そこに見せてくれているような気さえした。”

これは他でもない私自身にもいえることで、『そのハミングは7』は、私という媒体を通して生まれてきた物語であると思っています。多くの方に愛されたいと願ってしまうのも、それもまた親心だと目を瞑ってくだされば幸いです。

余談になりますが、この小説の初稿を書きあげた後しばらくして、幼い頃から私をかわいがり、自分の子供のように接してくれたある知人男性が亡くなりました。そのおじちゃんは、私が小学六年生のときに事故で失明し、下半身不随といわれ車椅子生活となりましたが、何事をも恐れず、強く生き抜いた逞しい人でした。それでも、表向きは明るくても、彼が心に宿した悲しい光を私は何度か見ました。私が視覚障がいを持つ人物を恐れずに小説の中で描けたことの理由のひとつには、このおじちゃんの存在もあると思います。こうして一冊の本を出すことができ、天国のおじちゃんもきっと喜んでくれているはず。おじちゃん、見ていますか?

――本作は、特にどのような方にオススメの作品でしょうか? 読みどころなども含めて教えてください。

全体を通して読んでいただければ伝わるのかなと思う(希う)のですが、物語のモチーフとして、聖書の説話やネイティブアメリカンの自然哲学などが多分に含まれます。作中ではそれらを対立させることなく融合させることに努めました。できるだけ難しく考えず、ニュートラルな心でお読みくださったらうれしいです。文字に触れるように、トビーの聴覚や嗅覚、肌感覚や妄想(脳内イメージ)を存分に感じていただきたいです。決して難しい物語ではないです。読み終わった後に、心の有様がどことなく違うような、なにか世界が新しく映るような、そんな温かな気持ちがあなたの心に遺ればとても幸せです。

今から8年前、当時小学校5年生だった親友の娘さんが『そのハミングは7』を読んで面白いといってくれました。さらには、「この一年間に読んだ本のうち一番心に残っているものはなんですか?」という冬休みの宿題で、『そのハミングは7』と書いてくれました。中高生に限らず、読書が好きな子であれば、小学校高学年からでも理解できるし、心に届くのではないかと感じています。

事実と真実――わかりやすく言い換えるのであれば、気づいていないことに気づくこと。見えている出来事は、あらゆる方向から視点を変えてみれば、すべて異なるものになりうること。そのような「おそろしさ」を感じてほしい。そして逆説的に聞こえるかもしれませんが、そのおそろしさの中に目を向けることにこそ、「希望」が宿ると考えています。

ずるい答えかもしれませんが、広く、多くの方にお読みいただきたいです。

「パーテルノステル」の存在を知ったのは偶然で、「これが部屋だったらおもしろいよね」という単純な発想でした

こちらは、『パーテルノステル』というのぞき部屋に通う、ひとりの男性視点で描いたサスペンスミステリです。のぞき部屋といっても、少し特殊な構造をしています。覗く側のブースは固定なのですが、女の子のいる居室そのものが移動する循環式(観覧車のようにぐるぐると回る構造)で、マジックミラー越しに覗かれている女の子たちはその事実を知らない、という設定になっています。

主人公は、「もこちゃん」という女の子を目当てに通い詰めますが、ある日とつぜん、もこちゃんが消えてしまいます。パーテルノステルの管理人「青ひげ」の様子がなにやらおかしいことに気付いた主人公は……。というようなお話です。

映像化を前提として考えていましたので、キャッチフレーズとしている、

“冬の天使の涙のあと……夜空舞う花のように、君の花火はどんな色で咲くのかな”

の映像が、読了後にみなさまの脳裡に浮かび上がると作者冥利に尽きます。構造がややこしいので映像化も舞台化もなかなか難しいとは思うのですが、どなたか手がけられませんか!?(とても観たい)

こちらも語り始めると長い思い出話になります。『パーテルノステル』は、国際短編映画祭につながるショートフィルムの原案公募・創作プロジェクトである「ブックショートアワード」の協賛企画、「アットホームアワード」へ応募するために考えたものでした(2016)。なお、この公募には敢えなく落選しております。

アットホームは不動産情報共有の会社です。応募要項にいくつかお題がありまして、「お隣さん」「ひとり暮らし」「ご当地」の要素いずれかを含むこと。そして、童話や古い文豪作品(パブリックドメイン)の二次創作であること、などがありました。

二次創作の元としたものは、シャルル・ペローの『青ひげ』です。青いひげがもじゃもじゃと生えた怖い顔をしたお金持ちの男は、奥さんを次々ともらうのですが、みな、いつしかどこかへ消えてしまうのです。7人目にやってきたお嫁さんと青ひげは楽しく暮らしていましたが、ある日、青ひげは、じゃらじゃらとした鍵の束をお嫁さんに預けて旅に出てしまいます。「この小さな鍵だけは決して使ってはいけない。突き当たりの小さな部屋には絶対に入ってはいけない」と言い残して。――という感じのお話です。

この『青ひげ』の舞台を現代に置き換え、自分なりの「お隣さま」「ひとり暮らし」を含んだ一万文字の耽美派サスペンスにしてみました。循環式エレベーターである「パーテルノステル」の存在を知ったのは偶然で、「これが部屋だったらおもしろいよね」という単純な発想でした。

「女の子が囚われている話×賃貸住宅(観覧車)」

組み合わせとしてはシンプルな気がしますが、読んでくださった方からは「おもしろい!」「こんな発想みたことない!」とお褒めの言葉をいただきましたし、KADOKAWAの投稿サイト・カクヨム上のミステリランキングでも一位をいただいたり、朗読遊戯カタリネコ様という団体で朗読されたりと、うれしいニュースが次々に舞い込みました。

『パーテルノステル』は、“お題があるとトコトン離れてしまいがち(主催の思惑から外れる)”――という私の「弱点」が顕著に表れている短編のひとつですが、このたび中村航先生にも気に入っていただくことができて、またひとつ、STORYTOON化されるという大きな贈り物を授かりました。ありがとうございます。

STORYTOON「パーテルノステル」より
「STORYTOON」とは?

STORYTOONは、マンガ配信サービス「ステキコミック」発のピクチャーノベル・レーベルです。イラスト×小説で描かれる、縦スクロールの新感覚ピクチャーノベルは、スマホでの閲覧に最適化させた新しい形で、文章による物語表現とマンガのような読みやすさが両立しています。

★STORYTOON『パーテルノステル』はこちらから

皆様お一人お一人に、「はじめまして」とお声をかける気持ちで、常に緊張感を忘れず、そして堂々と、恐れることなく書いていきたい

――小説を書くうえで、ご自身にとっていちばん大切にしていることや拘っていることをお教えください。

誠実であること、一言でいえばそれに尽きるでしょうか。

小説技法や創作にまつわる書籍は比較的多く読んできましたが、最も心に残っている一冊として、『小説の秘密をめぐる十二章』河野多恵子著(文藝春秋)があります。小説を書くスタンスは、みなさまそれぞれ違っていて当然だと思いますし、良し悪しを論じるつもりはありませんが、河野多恵子氏の考え方は、私の理想とする姿にとても近いし、深いシンパシーを覚える。書くのであれば、こう書きたいと思う姿――それは書き手としての生き様でもある――がこの一冊に凝縮されています。

書き続けてさえいれば、おそらくテクニックは勝手についてくるものですが、根となる魂のあるべき姿。

「かきたいものを書くな、かきたいことを書け」

この言葉の真髄は、ぜひ『小説の秘密をめぐる十二章』全体を通して感じていただければと思いますが、部分的に引用すると、「書きたいこと――自分の精神と切り結んだモチーフを得て創作活動が発生しているときには、事柄上はその話のままであっても、想像性が生まれて、ただのお話ではなくなる」と本書内で説明されています。

誰かを傷つけるものは書かない(作中の物理的な意味でなく)。私はそう決めていますが、作品が世に出るということは、意図のあるなしにかかわらず、誰かを傷つける可能性がゼロではなくなるということです。その恐怖と向き合いながら、真摯に取り組んでいきたいと思っています。

――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。

今でもよく自信を失くしますが、皆様が支えていてくださるこの事実を思うと、私の書く物語もそんなに捨てたものではない……と自らを慰めることができます。また、今回『そのハミングは7』を見つけ出し、世に送り出すためにご尽力くださったKADOKAWAの担当編集者様への御恩を返すためにも、決して一作で終わることなく、これが遺作とならないように頑張りたいなと、決意新たに挑む所存です。

まだまだ未熟な私ではありますが、創作に関して誠心誠意努めております。版元の方々、取次店の方々、書店の方々、そして読者の方々……それらはもしかしたら袖を擦る程度の出逢いかもしれませんが、それでも皆様お一人お一人に、「はじめまして」とお声をかける気持ちで、常に緊張感を忘れず、そして堂々と、恐れることなく書いていきたいと願っています。

こんな私ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?

たくさんありすぎて……。12月22日に、名古屋市志段味図書館さんで、『そのハミングは7』刊行記念トーク&サイン会をやっていただくことになったのですが、遠方の方々からも「行きます!」と多くのお声をいただいています。また、普段からお世話になっている志段味図書館長さんは、私に落款印を贈ってくださいました。さらに愛媛の明屋書店(今治本店・西条本店)さんからサイン本の発注をたくさんいただきました。挙げれば限がありません。皆様から寄せられる熱い応援や、叱咤激励の数々。それはもうビシバシ、毎日届いています。皆様の温かい励ましと共に、ハミングが、そしてトビーが旅立ちの日をこうして迎えられることは、ありあまるほどの幸せです。ありがとうございます。

Q:ご自身はどんな小説家だと思われますか?

山に籠もって土を捏ねて壺を作っている人。もしくは、刷毛で黙々と遺跡発掘作業をしている人。みたいな感じ。間欠泉のごとく噴き出る〝わた飴〟を巻き取るように文章を紡ぐので、取りこぼすと二度と出逢えなかったりします。がんばれ、私。

Q:おすすめの本を教えてください!

よく尋ねられる質問です。そのたびに同じ本を取り上げるのもつまらないので、毎回違う角度から紹介できればと思います。さて今回は――、

季節柄、大切な人や子ども達への贈り物にも適した絵本三冊をご紹介します!

■『アンジュール ある犬の物語』ガブリエル・バンサン(BL出版)

ベルギーの絵本作家さん、ガブリエル・バンサンの処女作、“un jour, un chien”(邦題『アンジュール ある犬の物語』)。タイトルの意味は「ある一日、ある犬」。鉛筆デッサンのみの、字が一切ない絵本ですが、強く訴えるものがあります。

この絵本との出逢いは18歳。ふと立ち寄った書店で目に留まり、パラリ、パラリ。とたんに涙が溢れ、止まらなくなりました。――捨てられた一匹の犬と僕との出逢い。寂しさを伴ったお互いの孤独が、孤独でなくなる瞬間を描ききったこの絵本。ぜひ大切な人へ贈ってください。

■『ビロードのうさぎ』マージェリイ・W・ビアンコ著  酒井駒子訳・絵(ブロンズ新社)

言わずと知れた名作絵本。多くの版が出ていますが、酒井駒子さんの絵がついたブロンズ新社のものをおススメします。あるぼうやの元へクリスマスの贈り物としてやってきたビロードのうさぎ。うさぎはぼうやに愛されいつも一緒。うさぎの体は汚れていきましたがとても幸せでした。そんなある日、ぼうやが病気になりました。部屋を清潔にするため、古く汚れてしまったうさぎは燃やされてしまうことに。そして……。

本物の生きたうさぎたちから、にせものだと相手にされなかったビロードのうさぎは、最後には「ほんもの」になります。あたたかい気持ちをはぐくみ、愛を伝えることのできる普遍的な物語を酒井駒子さんの絵で堪能できます。

■『ぼくを探しに』シェル・シルヴァスタイン著 倉橋由美子訳(講談社)

『大きな木』などで有名な、Shel Silverstein の“The missing piece” です。自分の体がまんまるでないことを気に病んだ主人公が、自分にぴったりのピース(Piece)を探しに行きます。かけらは大きすぎたり、小さすぎたり、尖りすぎてたりなんかして、なかなか見つかりません。いろいろ失敗したあげく、とうとう最後にはぴったりのかけら(Piece)を見つけるのですが、まんまるになった自分があまりにもすごいスピードで道を転がっていくので、ついにはそのかけら(Piece)を手放して、ひとりに戻ってしまう。というお話です。

最初にこの絵本を読んだとき、私はとても悲しくて、こんなのは嫌だ! と思いました。でも、少し時間をおいてもう一度読み返してみると、ああ、そうか、それでいいのか。という気持ちが湧き上がりました。最後のシーンで、動かなくなったこの子の一部に、一羽の蝶がとまります。そしてまた飛び立っていく。私はこのラストに命の循環を感じました。

どう受け取るかは人それぞれですが、あなたはあなたのままでよいという気づきを、深いレベルで与えてくれる。そんな絵本です。


虹乃ノランさん最新作『そのハミングは7』

『そのハミングは7』(虹乃ノラン) KADOKAWA
 発売:2024年12月18日 価格:1,760円(税込)

著者プロフィール

虹乃ノラン(ニジノ・ノラン)

愛知県出身。2017年に『ベイビーちゃん』で紀州文芸振興協会「第一回Kino-Kuni文學賞」にてコエヌマカズユキ審査員特別賞を受賞。同年には『銀盤のフラミンゴ』でディスカヴァー・トゥエンティワン「第17回ノベラボグランプリ」最優秀賞も受賞し、2作品とも電子書籍で刊行されている。2024年に『そのハミングは7』で「第9回カクヨムWeb小説コンテスト」エンタメ総合部門特別賞を受賞し、本書として上梓。また「第四回ステキブンゲイ大賞」においても「エルセトラ」でSTORYTOON特別賞(コミカライズ特別賞)を受賞している。

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