松本清張賞を受賞されデビュー、青春小説・スポーツ小説を中心に執筆されている、小説家の額賀澪さんの最新作!
自殺した最愛の弟の死の理由を、双子の兄が探りながら世界を巡るという物語。コロナ禍で旅ができない今、見ることのできない世界を見せてくれる作品です。
額賀澪さん に本作について、お聞きしました。
ずっと書きたかった、道を違えていく双子の話
――『世界の美しさを思い知れ』について、これから読む方へ、内容をお教えください。
遺書を残さず自殺したとある若手俳優。その双子の兄が、弟のスマホを見つけるところから物語が始まります。
スマホのロックが顔認証だったため、兄は弟のスマホの中身を見ることができ、弟が旅行の予定を立てていたことを知ります。
墓から弟の遺骨を持ち出した兄は弟になりすまし、弟が行こうとした北海道・礼文島に向かうのですが、これをきっかけにマルタ共和国、台湾、イギリス、アメリカ、ボリビアを巡る「弟の死の理由を探す旅」が始まります。
――今回、このような物語を描こうとされたきっかけや、着想に至った具体的な経験がありましたら、お教えください。
道を違えていく双子の話を書きたいとデビュー前からずっと思っていて(実は初めて書いた小説も双子の男の子が登場する話でした)、そこに「死」という大きなテーマが入ってきたのは、十代、二十代の間に近しい人や親しい人が唐突にいなくなることが何度もあったからです。
特に祖母は「唐突」としか言いようのない旅立ち方をしたので、数年たった今でも正直、悲しみ方がわからないままでいます。
自殺だったり事故死だったり突然死だったり行方不明だったり、形はさまざまでしたが、そういった経験が「遺された側のその後」というテーマに結びついたのではないかと思います。
賛否両論!? 単行本化で加筆したラストシーン
――ご執筆にあたって、苦労した部分や、執筆時のエピソードがございましたらお聞かせください。
世界各地を巡る物語なのに、現実世界ではコロナ禍によってそれができない社会になってしまったことでしょうか。
「取材に行けない」というのが非常にネックでした。現地を旅行したことがある、暮らしていたことがあるという人を取材しながらの執筆でした。
――どのような方にオススメの作品でしょうか? また、注目ポイントをお教えください。
弟の自殺の理由を探す兄という非常にシリアスなストーリーですが、彼が行く先々には美しいものばかりが待ち受けています。
コロナ禍によって停滞した「ここではないどこかで未知のものにであう」という行為を、物語の中で楽しんでいただけたらと思います。
また、これまでの私の作品と大きく違うのが、物語の閉じ方ではないかと。「小説推理」での連載時にはなかったラストシーンを、単行本化にあたって加筆したのですが、この閉じ方は賛否両論なのではないかなと思っています。
それでも書くことにしたのは、私なりに主人公の人生に責任を持ってやりたかったからです。
彼らの人生は幸せだったのか不幸だったのか
――今回の作品に限らず、小説を書くうえで大切にされていることや、こだわっていることをお教えください。
書いている自分が物語を楽しむことと、常に読者の視線を意識することです。
――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします!
『世界の美しさを思い知れ』に関しては、これしかないです。
「彼らの人生は幸せだったのか不幸だったのか、どうか見届けてください」
Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?
身長が伸びました。
Q:ご自身は、どんな小説家だと思われますか?
「興味が湧いたことをすぐ小説にしたくなる作家」でしょうか。
知り合いの作家さんからは「無駄に情報通な作家」とよく言われます。
Q:おすすめの本を教えてください!
せっかくなので、最近読んで面白かった本を。
『あの子の秘密』村上雅郁/フレーベル館
『かぞえきれない星の、その次の星』重松清/KADOKAWA
『ばにらさま』山本文緒/文藝春秋
額賀澪さん最新作『世界の美しさを思い知れ』
発売:2021年12月22日 価格:1,650円(税込)
著者プロフィール
額賀 澪(ぬかが みお)
1990(平成2)年、茨城県生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒。2015年に『屋上のウインドノーツ』で松本清張賞を、『ヒトリコ』で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。その他の著書に『猫と狸と恋する歌舞伎町』『タスキメシ』『さよならクリームソーダ』『君はレフティ』『潮風エスケープ』『ウズタマ』『完パケ!』『拝啓、本が売れません』『風に恋う』『ウズタマ』などがある。