テレビドラマ化された『サイレント・ヴォイス行動心理捜査官・楯岡絵麻』、 『白バイガール』シリーズなど、たくさんの人気作品の著者である、小説家の佐藤青南さん。

 最新作は、警察にかかってきた電話越しに、事件の真相を見抜いてしまう警察ミステリ『お電話かわりました名探偵です』の続編です!

  佐藤青南さん に、このユニークな設定が生まれた経緯や、創作についてお話をお聞きしました。

ある映画から着想。日本ならではの設定に

――『お電話かわりました名探偵です リダイヤル』について、これから読む方へ、内容をお教えください。

 市民からの110番通報を受け付ける警察の通信指令室を舞台に、千里眼を超える万里眼という通称を与えられた凄腕の女性通信司令員が、電話で聴取した情報だけをもとに事件の真相を見抜いてしまうコメディータッチの連作短編ミステリーです。

――電話で事件を解決するというユニークな物語を書こうとされたきっかけや、着想に至った具体的な経験がありましたら、お教えください。

 正直に言うと元ネタがあります。

『THE GUILTY ギルティ』という2018年のデンマーク映画です。

 誘拐された女性からの通報を受けた通信司令員が、電話から聞こえる音だけを頼りに被害者を救おうとする内容です。

 担当編集者との打ち合わせの際、あの映画みたいなのを小説で書きたいけど、日本が舞台だと無理だよねという話になりました。

 映画では発信地点が特定できなくてハラハラドキドキするのですが、日本だとほとんどのスマホがGPS対応になっていて、通信指令課が通報を受けた時点で発信地点が即座に特定されてしまうからです。

 だから仮に同じような事件が日本で発生したら、すぐに居場所がわかって三分で解決してしまう

 そういう理由でいったんは捨てようとしたのですが、三分で解決してしまうのなら、そういう話にしたらいいんじゃないかと思い直しました。

 通報を受けた通信指令員が聴取した内容だけで真相を見抜き、警察官が現着するまでに事件が解決してしまう話。

 その思いつきを口にしたら担当編集さんも乗り気になり、いっきに動き出しました。

<読書の入り口>に立つ作家を目指して

――ご執筆にあたって、苦労した部分や、執筆時のエピソードがございましたらお聞かせください。

 三分で解決する事件を考えるのが大変でした。

 僕の作品では取調室限定で物語が進行する『行動心理捜査官・楯岡絵麻』シリーズもそうですが、限定的シチュエーションの特殊設定は思いついた時点ではものすごい脳汁が出るものの、いざ具体的にプロットを組み始めると苦痛の時間に変わります。

 ただ執筆に入ってからは不思議なほど順調に筆が進んで、〆切前に完成していました。

 このシリーズは楽しんで書けています。

――どのような方にオススメの作品でしょうか? また、注目ポイントをお教えください。

 僕は「<読書の入り口>に立つ作家」を目指しています。

 自分自身がまったく本を読まなかったので、昔の自分のような人間に読書のおもしろさを伝えたいと考えながら、とりわけ読みやすさを意識して書いています。

 なのでふだんあまり本を読まない人、ミステリーに敷居の高さを感じている人に届いてくれればと思います。

 読みどころは読んでくれた人が決めてください。そういうのを著者自身が決めるのは傲慢だと思うので。

小説は”娯楽”。楽しい暇つぶしを提供できれば

――今回の作品に限らず、小説を書くうえで大切にされていることや、こだわっていることをお教えください。

 前述しましたが、もっとも意識しているのは読みやすさです。

 加えて、小説に過大な意味を与えないことは意識しています。

 小説はたんなる娯楽です。小説に救われる人もいれば、学ぶ人もいるかもしれませんが、やっぱり娯楽です。

 だから読後になにかが残らなくても、それなりに楽しい暇つぶしを提供できればそれでいいと考えています。

――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします!

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 僕の本も読んでいただけるとさらに嬉しいです。


Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?

 応援している東京ヤクルトスワローズが日本一になったこと。

Q:ご自身は、どんな小説家だと思われますか?

 自分ではとくに書きたいもののない職業作家。

Q:おすすめの本を教えてください!

・『深紅』(野沢尚)

・『柔らかな頬』(桐野夏生)

・『ハイ・フィデリティ』(ニック・ホーンビィ)


佐藤青南さん最新作『お電話かわりました名探偵です リダイヤル』

『お電話かわりました名探偵です リダイヤル』(佐藤青南) KADOKAWA
 発売:2021年12月21日 価格:748円(税込)

著者プロフィール

著者近影

佐藤青南(さとう せいなん)

 1975年長崎生まれ。『ある少女にまつわる殺人の告白』で第9回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、2011年同作でデビュー。2016年、『白バイガール』(実業之日本社)で第2回神奈川本大賞を受賞。

(Visited 428 times, 1 visits today)