この春~夏にかけて発売される新刊書籍のなかに、気になる5人作家の名前がありました。その5人の共通点は舞台演劇を主戦場とする「劇作家」であること。戯曲、自身の脚本を基にした小説作品、そして小説として生み出された作品と表現の形はさまざまですが、いつもは役者の発する台詞という形を借りて、舞台というライブで紡がれる劇作家たちの物語を、活字として味わうことができるそれらの作品を特集してご紹介します!

『今、出来る、精一杯。』(根本宗子) 小学館
 発売:2022年04月21日 価格:1,760円(税込)

昨年、スマートホンでの鑑賞を前提として企画、作・演出した配信ミュージカル『20歳の花』が大きな話題を集めた根本宗子さんの初の小説。東京都三鷹市のスーパーマーケット「ママズキッチン」を舞台に、そこに集まったクセのある人々が徐々に自分の感情をさらけ出し、傷つけ合う様を劇的に描いた本作は、2013年に初演された根本さんによる同名舞台の小説作品。音楽劇として作り直して再演された2019年舞台映像が、本年9月に劇場上映される予定です。

【著者プロフィール】

1989年、東京都出身。2009年に劇団『月刊「根本宗子」』を旗揚げし、劇作家、演出家、脚本家、女優として活動を開始する。2018年には「2017年度第17回バッカーズ演劇奨励賞」を受賞。2021年末より女優としての活動を終了と劇作家・演出家としての活動に専念。2022年に「第25回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞」を受賞。

『ベター・ハーフ』(鴻上尚史) 講談社
 発売:2022年04月27日 価格:1,760円(税込)

恋愛より仕事に時間を使いたいと考えているサラリーマンと、仕事より幸せを求めているその中年上司。なかなか芽が出ないアイドル志望の女。マッチングアプリで恋人を探そうとするトランスジェンダーのピアニスト。みんな幸せになりたいだけなのに、大人になればなるほど思い通りにならない恋と仕事と夢と性。そのうえそれぞれに抱えた「秘密」が波乱を呼ぶ――。2015年に初演され人気を集めた、ぶつかり合う人の混線ラブストーリーを小説化。

【著者プロフィール】

1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学在学中の1981年に劇団「第三舞台」を旗揚げし、以降柞・演出を務める。1987年『朝日のような夕日をつれて’87』で「第22回紀伊國屋演劇賞」団体賞、1994年『スナフキンの手紙』で「第39回岸田國士戯曲賞」を受賞。2007年に旗揚げした「虚構の劇団」の旗揚げ三部作戯曲集『グローブ・ジャングル』で、2009年に「第61回読売文学賞戯曲・シナリオ賞」を受賞した。2012年をもって第三舞台は解散。現在は1999年に立ち上げたユニット「KOKAMI@network」と虚構の劇団での作・演出を中心としている。著書に『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』『八月の犬は二度吠える』『青空に飛ぶ』、『不死身の特攻兵』『学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか』(共著)などがある。

『ドライブイン カリフォルニア[2022]』(松尾スズキ) 白水社
 発売:2022年06月08日 価格:2,420円(税込)

竹が名産とされる町で「カリフォルニア」という名前のドライブインを経営するアキオのもとに、妹のマリエが、甥っ子を連れて14年ぶりに帰って来た。彼女は東京でアイドルとしてデビューしたあと実業家と結婚したが、夫は不動産事業で失敗して自殺。その影響で、ひとり息子のユキヲは、人の話し声だけが聞こえないという障がいを抱えていた……。ドライブインの裏にある竹林で首を吊った14歳の少年が、幽霊になって、一族をめぐる悲劇の歴史を語りはじめる―本年「日本総合悲劇協会」公演として再々演された、松尾スズキ版のホームドラマが戯曲書籍化。

【著者プロフィール】

1962年、福岡県生まれ。1988年に劇団「大人計画」を旗揚げ。1997年に『ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~』での「第41回岸田國士戯曲賞」の受賞によって大きな注目を集める。2008年には映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』で「第31回日本アカデミー賞」最優秀脚本賞を受賞。2019年に立ち上げた「東京成人演劇部」で上演した『命、ギガ長ス』でも「第71回読売文化賞戯曲・シナリオ賞」を受賞している。2002年に『同姓同名小説』で小説家としても活動を開始。芥川賞候補となった『クワイエットルームにようこそ』『もう「はい」としか言えない』など話題作を発表。その他の著書に『108』『私はテレビに出たかった』、近著に『矢印』『人生の謎について』などがある。

『ブロッコリー・レボリューション』(岡田利規) 新潮社
 発売:2022年06月30日 価格:1,980円(税込)

泣いてるのはたぶん、自分の無力さに対してだと思う、わかんないけど。海辺のちいさな部屋で。もう二度と訪れることはないかもしれない東京で。延々と改装工事が続く横浜駅の地下通路で。そして、タイの洞窟にサッカー少年たちが閉じ込められていたあの夏、きみは部屋から姿を消した。離れてしまった「ぼく」には知り得ない「きみ」の過ごす日々をぼくが語るという構成の妙味を高く評価され「三島由紀夫賞」を受賞した表題作を含む、15年ぶりの第二小説集。

【著者プロフィール】

1973年、神奈川県出身。1997年に演劇ソロユニット「チェルフィッチュ」を起ち上げ。2005年『三月の5日間』で「第49回岸田國士戯曲賞」を受賞。2016年より4シーズンにわたりドイツの公立劇場「ミュンヘン・カンマーシュピーレ」のレパートリー作品演出を務め、2020年『The Vacuum Cleaner』が、ドイツの演劇祭「Theatertreffen」の“注目すべき10作品”に選出。2018年に『プラータナー:憑依のポートレート』をタイ・バンコク、フランス・パリで上演。2019年に東京で上演された同作品で、2020年「第27回読売演劇大賞」選考委員特別賞を受賞。2020年戯曲集『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』を刊行し、2021年に「第72回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞」を受賞。小説家としても、2007年に『三月の5日間』の小説化も含む『わたしたちに許された特別な時間の終わり』でデビュー。2008年に同作で「第2回大江健三郎賞」を受賞。2022年に「ブロッコリー・レボリューション」で「第35回三島由紀夫賞」を受賞。

『Q/フェイクスピア』(野田秀樹) 新潮社
 発売:2022年07月21日 価格:2,090円(税込)

ありがとうQUEEN! ごめんねシェイクスピア! この饗宴を神たちに捧げる! 愁里愛(じゅりえ)は源氏、瑯壬生(ろうみお)は平家。争い合う一族の運命をボヘミアン・ラプソディが奏でる、QUEEN全面音楽協力/野田版「ロミオ&ジュリエット」。森の闇から聞こえる匣の音―ニセモノな現代に盗まれた真実のコトバが、恐山のイタコによって召喚される1985年の「神様の声」。2019年にNODA・MAP第23回公演として行われ、本年第25回公演として再演されている『Q:A Night At The Kabuki』と、2021年の第24回公演『フェイクスピア』を収録した、沙翁(シェイクスピア)悲劇のレガシーを更新する世紀の戯曲集!

【著者プロフィール】

1955年、長崎県生まれ。1976年、東京大学在学中に「劇団夢の遊眠社」を結成し人気を博す。1992年に劇団を解散後、英国留学を経て1993年に演劇企画制作会社「野田地図(NODA・MAP)」を設立。NODA・MAPでのプロデュース公演を中心に、2001年からは歌舞伎、2004年と2015年にはオペラ演出なども手がける。劇団夢の遊眠社時代の1983年の「第27回岸田国士戯曲賞」をはじめ数多くの演劇関連の賞を受賞。2009年に名誉大英勲章OBE受勲。2011年には紫綬褒章を受章した。2009年からは東京芸術劇場芸術監督(初代)も務めている。

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