第166回(2021年下半期)芥川龍之介賞、直木三十五賞候補作品が決定しました。

 選考委員会が行われ、受賞者・受賞作が発表されるのは2022年1月19日(水)。今回は「ナニヨモ」編集部による、ひと足早いご勝手予想を加えて、候補作をご紹介します。 

【第166回芥川賞候補】(五十音順) 

石田夏穂「我が友、スミス」(集英社) 

「別の生き物になりたい」――ジムに通い自己流トレーニングで筋トレに励んでいた会社員・U野は、ボディ・ビル大会への出場を勧められ、本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし大会で結果を残すためには、筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった――。前代未聞の筋トレ小説、誕生!

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1991年生まれ。本年、「我が友、スミス」で「第45回すばる文学賞」佳作受賞。雑誌『すばる』本年11月号への同作品掲載でデビュー。単行本は2022年1月19日刊行予定。 

九段理江「Schoolgirl」(文藝春秋) 

14歳の娘から「お母さんは空っぽ」だからといわれてしまった「私」。本年の新語・流行語大賞トップ10にも選ばれた「Z世代」と呼ばれるデジタル・ネイティブたちの姿を母親の視点で描き出したデビュー後第2作。

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1990年生まれ。本年、「悪い音楽」で「第126回文學界新人賞」を受賞。雑誌『文學界』本年5月号への同作品掲載でデビュー。同誌12月号に「Schoolgirl」を発表。 

島口大樹「オン・ザ・プラネット」(講談社) 

同じ車に乗り込んだぼくら四人は、映画を撮るために鳥取砂丘を目指す。記憶すること、思い出すこと、未来に向かって過去を見つけ直すこと。現実と虚構の別を越えて、新しい世界と出会う旅。重層する世界の「今」を描く、ロード&ムービー・ノベル。 

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1998年生まれ。本年、「鳥がぼくらは祈り、」で「第64回群像新人文学賞」を受賞。雑誌『群像』本年6月号への同作品掲載でデビューし、その後単行本として刊行。同誌12月号に「オン・ザ・プラネット」を発表。単行本は1月14日刊行予定。 

砂川文次「ブラックボックス」(講談社) 

自転車で街を駆け巡り、配送を行うメッセンジャー。その内側に、白く爆ぜ、暴発する怒りを抱えながら……。元自衛官、現在は都内で公務員として勤務しているという異色の作家。2018年、2020年に続き3度目のノミネート。 

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1990年生まれ。2016年、「市街戦」で「第121回文學界新人賞」を受賞、雑誌『文學界』2016年5月号への掲載でデビュー。同作を含む単行本『戦場のレビヤタン』を2019年に上梓。「戦場のレビヤタン」が第160回、「小隊」が第164回の芥川賞候補作となっている。雑誌『群像』本年8月号に「ブラックボックス」を発表。単行本は2022年1月26日刊行予定。 

「ブラックボックス」は、「群像」2021年 08 月号に掲載
http://gunzo.kodansha.co.jp/58959/60147.html

乗代雄介「皆のあらばしり」(新潮社) 

幻の書の新発見か、それとも偽書か――。高校の歴史研究部活動で城址を訪れたぼくは、そこで出会った中年男とともに、旧家の好事家が蔵書目録に残した「謎の本」の存在を追い始めた。人を喰った大阪弁でうさん臭さを放つ男を警戒しつつも、ぼくはその博識に惹かれていく。 

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1986年生まれ。2015年、「十七八より」で「第58回群像新人文学賞」を受賞。雑誌『群像』2015年6月号への掲載でデビューし、その後単行本として刊行。2019年に「最高の任務」が第162回、2020年に「旅する練習」が第164回芥川賞候補となっている。 


【第166回直木賞候補】(五十音順) 

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)  

1942年、独ソ戦のさなか、モスクワ近郊の村に住む狩りの名手セラフィマの暮らしは、ドイツ軍の襲撃により突如奪われる。母を殺され、復讐を誓った彼女は、女性狙撃小隊の一員となりスターリングラードの前線へ──。受賞すれば22年ぶりとなる「デビュー作ノミネート」も話題。 

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1985年生まれ、。本年、「第11回アガサ・クリスティー賞」を受賞し、受賞作『同志少女よ、敵を撃て』でデビュー。 

彩瀬まる『新しい星』(文藝春秋)  

順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機――娘の死から、彼女の人生は暗転した。離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり……。

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1986年生まれ。2010年に「花に眩む」で「第9回女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、雑誌『小説新潮』2010年6月号に掲載。その後、2013年に『あのひとは蜘蛛を潰せない』で単行本デビュー。2017年の『くちなし』が第158回直木賞候補となっている。 

今村翔吾『塞王の楯』(集英社)  

越前・一乗谷城は織田信長に落とされた。幼き匡介はその際に父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎に助けられる。匡介は源斎を頭目とする穴太衆(=石垣作りの職人集団)の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。

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 1984年生まれ。2017年に書下ろし文庫『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。2018年「童神」で「第10回角川春樹小説賞」を受賞し、同年に『童の神』と改題のうえ刊行。同作が第160回、2020年の『じんかん』が第163回直木賞候補となっている。

柚月裕子『ミカエルの鼓動』(文藝春秋)  

大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。やがて難病の少年の治療方針をめぐって、2人は対立。そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。

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1968年生まれ。2008年に「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、翌2009年に受賞作『臨床真理』でデビュー。2015年の『孤狼の血』が第154回直木賞候補となっている。

米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)  

4年後にはあの本能寺の変が起こる天正6年の冬、織田信長を裏切り有岡城に立て籠もる荒木村重と、彼の手に落ち囚われの身である黒田官兵衛が、場内で起こる難事件に挑む。戦国時代の軍師・黒田官兵衛を探偵役に据えた異色のミステリ。

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1978年生まれ。2001年に「第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門」奨励賞を受賞し、受賞作『氷菓』でデビュー。2014年の『満願』が第151回、2015年の『真実の10メートル手前』が第155回直木賞候補となっている。


ナニヨモ編集部の予想!

 まず芥川賞ですが、一般的に”現代”を強く反映した作品が受賞する傾向が高いと言えるでしょう。その点から、「Z世代」と呼ばれるデジタル・ネイティブたちの姿を描いた、九段理江さんの『Schoolgirl』を推したいと思います!

 砂川文次さん「ブラックボックス」は、自転車で街を駆け巡り、配送を行うメッセンジャーのお話。「ブラックボックス」=「黒い箱」というのは、よく目にするあのバッグのことでしょうか。ついに来ました、ウー○ー小説。これも今っぽくて可能性大だと思います(ナニヨモ編集部、未読です。すみません!)

 そして、直木賞。どの作品も傑作です。注目は、逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」。なんと本作がデビュー作。それも、11月17日に発売されたばかりなので、約1ヶ月でノミネート。

 第11回アガサ・クリスティー賞大賞を、史上初の全選考委員が5点満点をつけて受賞。もし、本作で直木賞を受賞すると、デビュー作での受賞は22年ぶりの快挙とのことで、話題沸騰中です。

 しかしながら、ナニヨモ編集部の予想は、手堅く、米澤穂信さん「黒牢城」とします! 直木賞は実績を積み重ねた作家さんが受賞される傾向があるのと、作品がいかにも直木賞を受賞しそうな作品ということで、こちらを推させていただきます!

 さて、どうなるでしょう。選考会は1月19日。発表が楽しみです。

芥川賞予想

(初)石田夏穂さん「我が友、スミス」
(初)九段理江さん「Schoolgirl」
(初)島口大樹さん「オン・ザ・プラネット」
(3)砂川文次さん「ブラックボックス」
(3)乗代雄介さん「皆のあらばしり」

直木賞予想

(初)逢坂冬馬さん「同志少女よ、敵を撃て」
(2)彩瀬まるさん「新しい星」
(3)今村翔吾さん「塞王の楯」
(2)柚月裕子さん「ミカエルの鼓動」
(3)米澤穂信さん「黒牢城」

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