VTuberによるラノベ文学賞！「第一回夜見ベルノ小説大賞」受賞者インタビュー特集 - ナニヨモ

小説投稿サイト「ラノベストリート」との連動企画として今春に開催された「第一回夜見ベルノ小説大賞」の結果が2022年7月に発表されました。

夜見ベルノ小説大賞は、ラノベストリートの配信番組『VTuber奉城アイル×夜見ベルノのラノベストリーム』で、おすすめのネット小説の紹介などバーチャルスコッパーとして配信・活動をしている夜見ベルノがその名を冠し、「小説発掘VTuber」としての本領を発揮すべく企画された公募文芸賞です。

今回、優秀賞に選ばれた三作品『堕天使と私』、『○と×の距離』、『6時30分30秒のアイドル』の著者ぱいんさん、空枝良さん、天音こかげさんに受賞作についてお話を伺いました。

（聞き手：夜見ベルノ）

――受賞された感想をお聞かせください。

ぱいん：ただただ驚いております。発表日を知らず、夜中に偶然ラノベストリートさんを覗きに行ったところ受賞していることを知り、その晩は嬉しすぎて朝方まで寝られませんでした。ちなみに人生初の受賞になります。

空枝良：たいへん光栄な賞を頂きまして、ありがたく思っております。ラノベストリームの発表をリアルタイムで見ていたのですが、一次通過作品の中に名前がなくてしょぼんとしていたら、優秀賞で名前が出て来て……。びっくりして涙が出ました。本当に嬉しいです、ありがとうございます。

天音こかげ：感謝の気持ちでいっぱいです。素敵な作品の数々から自作を選んでくださり、嬉しく思うばかりです。選考に携わりました方々には深く御礼申し上げます。ありがとうございます。

――5000字という制約でしたが、難しかった点や工夫した点をお聞かせください。

ぱいん：実はこちらの作品はコンテスト用に書いたわけではありません。ネタ自体は十年くらい前にふと思いつき、ネタ帳に書き溜めていたものですね。それを二年くらい前に偶然PCの中から発見し、暇だったので書いてみるか、という経緯がございます。なので難しかった点は無く、コンテストに応募したのもたまたま条件に合った作品を偶然持っていたから試しに応募してみるか、という感じでしたね。

工夫した点は罠を仕掛けたこと。衝撃のラストというタグを付けた理由は、前半の主人公である『ぼく』の正体が実は堕天使だったというところで読者を安心させる為ですね。そこでこれが衝撃のラストなんだ、へー、と油断したところでラストの展開、ということになります。

空枝良：字数制限は苦手で、いつも初稿は大幅にはみ出します。5000字の中に入りきる意味のある設定や場面の切替えは難しいです。5000字だと思うと絶対にはみ出るので、3000字だと思って考えます！

また、字数に関して工夫しているとすれば、登場する人数は２人までにしています。人が増えると書きたくなることが増えてしまうので（笑）特に今回賞を頂いた『〇と✕の距離』は、それこそ「私」の「藤田」との関わりだけにフォーカスしたお話なので、余計な情報がないように気をつけました。削って削ったので収まった次第です。良かったです。

天音こかげ：物語を5000字程度にまで膨らませることが逆に難しかったなぁと（笑）やろうと思えばすぐに終えられてしまうような物語だったので……。ほんの少しだけ壮大にしたり、かと言って冗長にならないようにしたり。その塩梅が難しかったです。そこを考えるのがまた楽しみのひとつでもありました。

――作品をどのように着想されたか、あるいはコンセプトがあればお聞かせください。

ぱいん：この作品を思いついたのは日頃作品の構想を練っている時のことですね。作品の構想を練る＝妄想にふけっている。その最中、ふと現実世界に引き戻される。妄想の中ではあんなに楽しくて幸せな世界だったのに、現実世界はあんまり楽しくないな。そうだ、これを作品にしたらどうだろうか？　せっかくだからとことん自分に酔った作風にしてみよう。なら、主人公はイケメンでその正体は堕天使にしよう。でも、妄想から覚めたら現実の私がいる。結果『堕天使と私』が誕生しました。

空枝良：私が高校生のとき、男子の中で〇✕ゲームが流行っていたことが元ネタです。
それからモチーフとしての受験期が好きなんです。いろんなことを我慢したりよく分からない駆り立てられ方で勉強して、気づいたら卒業してた……みたいな未来は明るいのにどこか喪失感がある季節だと思っていて。……というのは半分建前で、単に、一生の傷跡を残してしまう少女が書きたかっただけかもしれません（笑）

天音こかげ：執筆活動をするにあたり、私が強く影響を受けた作品が『どうでもいいことを全力で楽しむ物語』で、そんなコンセプトの話をつくりたいと思ったのが発端でした。

着想は実体験です。実家で同じ壊れ方をした時計を延々と眺めていたことがあって、これを大人数で眺めて騒がしくしたら面白そうと思い、作品の執筆に至りました。

――第一回の受賞作は今後VTuberによるボイスドラマ化が進行中ですが、今後も『夜見ベルノ小説大賞』が開催されるとしたら、期待することはありますか？

ぱいん：ボイスドラマ化以上のものですと、数秒程度の作品のPVなどを賞品にしてくだされば最高ですね。後は五千字の他にも千字程度の超短編部門もあれば参加してみたいです。

空枝良：副賞のボイスドラマ化はこの上ない喜びです！是非、次回もお願いします。さらに欲を言えば、賞金か記念品も欲しいです（笑）それから（まだあるのか）選考して下さった方からの講評など頂けたら、きっと跳び上がるほど嬉しいです。よろしくお願いします！

天音こかげ：個人的にはボイスドラマ化はとても魅力的なので、これからも続いたら嬉しいです。もし、次があれば今回のような5000字以内のフリー部門もありつつ、『書き出しを指定』し、全員が同じ始まり方をしてどんな物語が展開していくか。そのような条件の部門があったら面白そう（私もやってみたい……）と思いました。

Q：最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか？

ぱいん：もちろん、第一回夜見ベルノ小説大賞にて受賞したことですね。それ以外ですと他サイトのコンテストで応募作品が一次選考を通過したことです。

空枝良：もちろん賞を頂いたことと、自宅で飼育しているウーパールーパーの前脚が再生したことです！

天音こかげ：こちらの賞を受賞させていただいたことです。家族や親戚、親友に祝ってもらえたこと。オリジナル作品を書く前からつながりのあったTwitterのフォロワーさんだったり、長らく音信不通だった地元の友人だったりが「おめでとう！」と言葉をかけてくれて感無量でした。多くのご縁に感謝の限りです。

Q：ご自身は、どんな小説家だと思われますか？

ぱいん：料理人作家。本業が調理師ですので、物語を何でも料理で例えるのが理由です。

空枝良：作家だなんてとんでもないです。好きなお話を好きなように書いているだけの民です。

天音こかげ：楽しんで書くのが得意な作家、と思います。書き続けて10年目と、趣味では一番長く続いております！

Q：おすすめの本を教えてください！

ぱいん：教本は『まんがでわかる物語の学校』（構成：大塚英志、漫画：野口克洋）この本を読んで物語の構成を学ばせていただきました。小説は『夏と花火と私の死体』（著：乙一）何から何まで衝撃的な作品。

『まんがでわかる物語の学校』構成：大塚英志、漫画：野口克洋（KADOKAWA）