誕生日は誰もが公平に与えられている個人的な記念日です。

家族に祝われて、友人や愛する人と楽しく賑やかに、ひとりで寂しく? ――どんな過ごし方をするにしても、その日はあなたの人生の観測ポイントのように、毎年いちどやってきます。

もしその日が悲しい記憶を呼び覚ます日だったとしたら……?

麻加朋さんの発売されたばかりの新作『ブラックバースデイ』は、まさにその「誕生日」に起きた出来事がもたらした歪んだ日常を生きる家族の物語です。

新生児取り違えという不幸に結びつけられ、互いを支え合うことでいちどは前に進んだかに見えた2組の家族が、知らずに選んでしまった悲劇へと続く道。デビュー作とは思えない緻密な構成力でミステリファンを唸らせた前作『青い雪』に続き、家族の隠し持つ秘密を描いた新作について、麻加さんにお話を伺いました。

「この事件の当事者や周辺の人たちは、その後どんな生活、人生を送るのだろうか」と考える癖があります

――今回の『ブラックバースデイ』について、これから読む方へ、どのような物語かをお教えいただけますでしょうか。

鎌倉と瀬戸内海の島を舞台としたミステリーです。

主人公の駒之介は、将棋カフェを営む父と二人暮らし。母親の記憶はあまりない。

隣に不思議な家族が越してきて、人目を避けている様子を怪しく思い、探り始める。

隣人家族の女の子、心凪が同じクラスに転入してきた。やがて駒之介は家族の秘密を知る。

心凪への淡い恋心、変わっていく家族の形、そして駒之介に悲しいニュースが届く。

それでも駒之介は家族の真相を追い続ける。

誕生日に起こっていたことは何だったのか。

駒之介を見守りながら、最後まで物語をお楽しみください。

――この作品が生まれたきっかけを教えていただけますでしょうか。

ニュースなどを見聞きする度に「この事件の当事者や周辺の人たちは、その後どんな生活、人生を送るのだろうか」と考える癖があります。

これまで、新生児取り違えを題材としたドラマや映画はいくつかありますが、違う角度からアプローチした作品を考えてみたかったのです。

家族の情愛を描いていますが、ミステリーとしての謎を追っていく楽しさもたくさん詰まっています

――ご執筆にあたって、苦労されたことや、当初の構想から変わった部分など、なにかエピソードがありましたらお聞かせください。

私は詳細なプロットを作り上げてから書き始めるタイプです。でも今作は、執筆しているうちに登場人物の行動や心の動きに引っ張られ、終盤に近づくにつれ、大きく変更しました。

想定していたものを壊して構築し直すことは怖いことでしたが、いつしか、登場人物たちと一緒に物語の渦に巻かれながら、着地点へと導かれた感じです。

――どのような方にオススメの作品でしょうか? また、本作の読みどころも教えてください。

単に「産みの親と育ての親」をテーマにした小説ではありません。家族の情愛を描いていますが、ミステリーとしての謎を追っていく楽しさもたくさん詰まっています。

オススメとしたら、将棋好きの方にもぜひ読んでもらいたいです。どこで将棋が絡んでくるかは、どうぞ実際にお読みくださいませ。もちろん将棋を知らない方でも大丈夫ですのでご安心を。

それと、カバーイラストもとても素敵ですが、中の背表紙が可愛いんです。購入された方には、ぜひおうちでカバーをめくって見て欲しいです。

「ここでこの行動をして欲しい」と思っても、登場人物に拒否される、という感覚を味わうことがあります

――小説を書くうえで、いちばん大切にされていることをお教えください。

作者の都合で人物を動かさない、ということです。

「物語の流れとしては、ここでこの行動をして欲しい」と思っても、登場人物に拒否される、という感覚を味わうことがあります。「私そんなことしない!」と言われているような気がするんです。その感覚は大事にしています。

――最後に読者に向けて、メッセージをお願いします。

デビュー作『青い雪』を読んでくださった皆様から、熱い感想を寄せられたことは、私にとって一生の宝です。「次作も楽しみ」というお言葉も、今回の執筆の大きな励みとなりました。

小説家は作品を通して読者と繋がれると思っています。私の今持っているすべてを注ぎ込んだ、新刊『ブラックバースデイ』をぜひ受け取ってください。どうか楽しんでいただけますように。

初めましての皆様にも、この『ブラックバースデイ』で麻加朋を知っていただけたら幸いです。

Q:最近、嬉しかったこと、と言えばなんでしょうか?

やっぱり、『ブラックバースデイ』が書店に並んでいるのを見たことです。

もう一つ、『青い雪』の繁体字翻訳本が台湾で出版されることになり、台湾版の表紙を見たときは、「自分が書いた小説を他の国の方々にも読んでもらえる」という実感がじわじわ湧いてきて、とても嬉しかったです。

Q:ご自身は、どんな小説家だと思われますか?

ストーリーテラーと言っていただけることがあるので、いくつもの出来事が複雑に絡まる話を作るのが特徴かもしれません。書きたいものはまだまだたくさんあります。

理想としては「この作家、こんな作品も書くんだ」と思われるような、引き出しの多い小説家になりたいです。

Q:おすすめの本を教えてください!

■『Another side of 辻村深月』辻村深月(KADOKAWA)

辻村深月さんの魅力がたっぷり詰まった一冊です。

■『スキップ』北村薫(新潮社)

読みながら、ポロポロ涙がこぼれたのを覚えています。

■『流しのしたの骨』江國香織(新潮社)

登場人物がみんな魅力的すぎて、好きで好きでたまらない。


麻加朋さん最新作『ブラックバースデイ』

『ブラックバースデイ』(麻加朋) 光文社
 発売:2023年05月24日 価格:1,870円(税込)

著者プロフィール

麻加朋(アサカ・トモ)

1962年、東京都生まれ。2021年に「第25回日本ミステリー文学大賞新人賞」を受賞し、翌2022年に受賞作『青い雪』でデビュー。

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