■テキストに秘めたチカラを信じて
成海:中村航さんの色々な作品を読ませて頂いたんですが、気になったのが「鬼ガール」です。これは大阪の河内長野の話ですよね? 関西人の僕が読んでも言葉とか、しっくり入ってきましたよ。
中村:河内長野で何日か泊まり込みで取材したんですよ。研修センターみたいなところに泊まって。書くときは児童小説というのもあって、どのくらい標準語を使うのか割合の計算は難しかったですね。イケメンはあまり関西弁を使わないとか(笑)。河内長野弁のチェックも入れてもらいました。
成海:これは、鬼の話を書こうと決めてたんですか?
中村:はい。もともと、鬼の女の子の話を書こうという構想があったんです。昔、オニロックという絵本を創ったことがあって、その頃から構想を温めてました。で、あるとき、河内長野を舞台にした作品を書けないかというオファーがきて。これは本当に偶然なんですけど、河内長野の鬼住という地域があって、僕が書きたかった鬼の女の子の話とピッタリだなって思って
成海:凄い。なんか縁を感じますね。
中村:そうそう。じゃあ、鬼の女の子でいこうとなって。どういう見せ方するかっていう時に、「児童小説」がいいんじゃないかと思って、そうしたんです。大人が読んでも面白いと思いますけど。
成海:めっちゃ面白かったですね。
「鬼バレ」「ツノは出るけど女優目指します」とか、一つ一つ考えられたフレーズが散りばめられてて面白い。ほんと笑いました。中村さんの小説って、結構、映画化されてるじゃないですか?メディアには、自分から仕掛けていってるんですか? それとも先方さんからのオファーなんですか?
中村:一つは、プロデューサーが、映画とかドラマとかの原作を探すなかで、たまたま新刊を目にしてくれて、そこからオファーがくる時がある、という感じですね。あと出版社がプレゼンしたりしてくれていたりすることも、もしかしたらあるかもしれない。もう一つは、「映画を撮りたいんですけど何か原作を書けませんか?」っていう話をされることがあって、じゃあ書きます、となるケース。まさに、この「鬼ガール」がそうなんですけど。
成海:映画化が前提で、小説を書くパターンがあるんですね!?驚きです。
中村:珍しいと思いますよ。ただ、先方の言っていることも、あくまで映画化「したい」ってだけで、本当に映画化されるかどうかはわからない。だから、小説単体でも書きたいかどうかで判断するので、いつもとあまり変わらないです。映像化の申込がきても実現するまでに、何年もかかったりするんですよ。5年とか当たり前の話で。どうなるかはわからない世界です。
だから「鬼ガール」は映画制作という意味においては、凄くうまくいったケースの作品なんですよね。成海さんみたいなタイプの方は、色々持ち込んでみたりしたら面白いんじゃないですか?
成海:得意のガツガツした大阪スタイルですね?
中村:そうそう。
昔とね、時代が変わったんですよ。今はいろんな媒体がありますし、低予算で高クオリティなものも創れる。挑戦する意義とかチャンスとか熱意があったら、やれちゃう時代なんですよ。きっと。どんな時代でも、テキストの作品というものは、まず一番に、旗になれるチカラを持っていると思うんです。私も小説、頑張っていきたいなぁと思ってますけども成海さんも、一緒に頑張りましょう!
成海:文章に秘めた可能性、僕も信じてますよ。頑張っていきたいです。
尼崎ストロベリー
発売:2019年12月03日 価格:1,000円(税込)