特集「夏に読みたい5冊の小説」

夏の予定は、お決まりですか?

海水浴に出かけたり、花火をするのもいいけれど、冷房の効いた部屋で想像の世界に出かけてみるのは、いかがでしょう。

今回は、夏に読むのにぴったりな小説を5冊選んでみました。 

* * *

1、『サマーバケーションEP』古川日出男

20歳になるまで自由に行動することが許されなかった主人公が、夏休みに、個性豊かな登場人物たちとともに神田川の源流から川に沿って河口まで歩くという、ユニークな設定の作品です。

この作品を読むと、はじめて外の世界に触れる主人公を通して、見慣れている東京の風景を新鮮な視点でとらえることができます。

道中で食べるアイスなど、全編を通して満ちている夏の雰囲気も、この作品の魅力です。

主人公たちと夏の冒険へ出かけてみては、いかがでしょう。

2、『ガールズ・ブルー』あさのあつこ

児童文学を中心に手がける作者のあさのあつこは、幅広い読者から支持されています。

この作品は、高校生である、理穂、美咲、如月の3人の群像劇です。

性格の異なる3人は、それぞれの悩みを抱えながら、ひと夏を過ごします。

描かれているのは、高校生の淡い日常ですが、登場人物たちの描写がリアルで、いま高校生の読者は登場人物たちと自分の状況と比べながら、かつて高校生だった読者は自分の高校時代を思い出しながら、読んでみるのもいいかもしれません。

3、『夏と花火と私の死体』乙一

『GOTH』などで知られる、乙一のデビュー作。

夏休みのある日に殺されてしまった少女の死体と向き合う幼い兄と妹の様子が、一風変わった視点から描かれます。

その後の作者の作品にも見られる、アイディア溢れる設定やダークな世界観は、この作品にて既に垣間見ることができます。

読みやすいタッチで描かれているので、ホラーを読み慣れていない読者にも、おすすめです。

4、『川の名前』川端裕人

小学生5年生の3人が、夏休みの自由研究の課題として自分たちが住んでいるところの近くの川を選んだところから、物語がはじまります。

少年たちの夏の物語といえば、映画『スタンド・バイ・ミー』を思い出す方も多いのではないでしょうか。

この作品でも、少年たちが川について調べていくうちに、意外な方向へ物語が展開していきます。

科学や動物などについての多数の著書のあるノンフィクション作家でもある作者による川の描写は緻密で、その涼しげな描写は、夏の読書にぴったりです。

5、『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

山崎賢人さん主演で2021年6月25日に映画も公開された、SF小説の代表的な作品。

夏へつながっているドアがあると信じて、冬になると家じゅうのドアを開けてほしそうな素振りを見せる猫と、ある思いを抱えたまま冷凍睡眠に就く主人公の物語です。

タイムトラベルは、現在のSFでは定番となった題材のひとつですが、SF小説のなかでも、早い時期にタイムトラベルを題材にした作品です。

SFに触れたことがない読者も、この作品を「扉」にしてSFに触れてみるのは、いかがでしょう。

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夏の想像の世界での冒険の入り口にぴったりな一冊が見つかれば、嬉しいです。

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