『紙の梟 ハーシュソサエティ』(貫井徳郎) 文藝春秋
 発売:2022年07月13日 価格:1,980円(税込)

被害者のデザイナーは目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?(「見ざる、書かざる、言わざる」)/孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになる(「籠の中の鳥たち」)/頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?(「レミングの群れ」)/俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ(「猫は忘れない」)/ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった(「紙の梟」)――一度道を踏み外したら、二度と普通の生活を送ることができないのではないかという緊張感。過剰なまでの「正しさ」を要求される社会に生きている私たち。人間の無意識を抑圧し、心の自由を奪うこの厳しい社会(harsh society)のいびつさを拡大し、白日の下にさらす5編の物語。

【著者プロフィール】

1968年、東京都生まれ。1993年、「第4回鮎川哲也賞」の最終候補作となった『慟哭』が東京創元社の叢書「黄金の13」の1冊として刊行されデビュー。2010年に、『乱反射』で「第63回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)」。『後悔と真実の色』で「第23回山本周五郎賞」をそれぞれ受賞している。映像化作品も多数あり、2017年には『愚行録』の映画化、1995年の『失踪症候群』から始まり代表作でもある「症候群」シリーズが『犯罪症候群』のタイトルで2度にわたり連続ドラマ化されている。そのほかの作品に『修羅の終わり』『転生』『プリズム』『被害者は誰?』『悪党たちは千里を走る』など、近著に『邯鄲の島遥かなり』『悪の芽』『罪と祈り』などがある。

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