いまや出場者を女性に限定したコンテストも開催され、「女性芸人」はお笑いというジャンルの中に確固たるポジションを築いた観があります。しかし、実は彼女たちがこれほどまでに注目を集めたのは、比較的最近のことなのです。
1980年代の漫才ブームをきっかけに、男性芸人に混じって舞台や演芸番組で漫才芸を披露する女性コンビがクローズアップされはじめ、やがて本人のキャラクターに寄ったひとり芸で人気を集めるピン芸人と呼ばれる女性芸人が、その個性を生かしてバラエティー番組へと進出。そうやって急速に活躍の場を広げていきました。
そして現在、まさに百花繚乱と表現してもいいくらい、さまざまなタイプの女性芸人が世に出るようになりました。
今回は、そんな人気女性芸人のみなさんが、それぞれの個性で綴った本をピックアップしてみたいと思います。

新鋭から大ベテランまで、女性芸人エッセイ集5選!

まずはここ最近に刊行された人気女性芸人によるエッセイ集からセレクトした5冊をご紹介します。
40代を迎えてからのブレイクという遅咲きながら、同世代の女性たちの代弁者として熱烈な支持を受け続ける大久保佳代子さん。大久保さんよりもうひとつ上の世代で、今日の女性芸人活躍時代への道を切り拓いたと言っても過言ではない大ベテランの清水ミチコさん、野沢直子さん。お三方のエッセイ集には、それぞれの生き様が感じられる言葉やエピソードが詰まっています。
一方、現在バラエティー番組に引っ張りだこな最新流行の女性芸人からは「納言」の薄幸さんとぼる塾が相次いでエッセイ集を発売しました。ゆるふわなぼる塾とヤンキーキャラ全開の薄さん、それぞれのキャラクターを生かした対極とも言えそうな2冊のエッセイ集は、いまの女性芸人の幅の広さの証明かもしれません。

『まるごとバナナが、食べきれない』(大久保佳代子) 集英社
 発売:2022年10月26日 価格:1,540円(税込)

現在は相方の光浦靖子さんが留学中のため、ひとりでの活動が中心となっている「オアシズ」の大久保佳代子さんが、生まれてからいままでの半世紀を食の思い出ともに、等身大の飾らない文章でユーモラスに描いた本書。自分を育んだ「大久保家の味」への想いや、大福の皮とあんこを分け合うという光浦さんとの関係、OL勤めをしながら出演していた『めちゃイケ』の思い出、そして体力・食欲・性欲……いずれも減退していく40代から50代へ!? などなど、家族・恋愛・友人・仕事について語り、妙齢女子の読者から大共感を呼んだファッション誌での連載を、大幅な加筆・改稿のうえ遂に単行本化!

 

【著者プロフィール】

1971年、愛知県出身。幼なじみの光浦靖子と1990年に「オアシズ」を結成。『めちゃ×2 イケてるッ!』でのブレイク後、数多くのバラエティ番組などで活躍中。お笑い芸人、タレント、女優としての活動のほか、世代を代表する女性としてコメンテーターとしての番組出演も多数。

『思い、思われ、食べ、ぼる塾。』(ぼる塾) 小学館
 発売:2022年10月13日 価格:1,980円(税込)

田辺智加さんの「まぁね〜」で一躍人気者となった「ぼる塾」。田辺さん、あんりさん、きりやはるかさん、加えて現在育休中の酒寄希望さんの4人によるお笑いカルテットであるぼる塾が、メンバーそれぞれの近況や今伝えたいこと、大好きなものへの思いなど、さまざまな内容を自らの言葉で綴り現在も好評継続中の人気WEB連載から、特に人気のあったもの、反響の大きかったものなどを厳選し、36回分を収録して書籍化。さらに巻頭スペシャルグラビアや本連載についての想い、4人が語る“ぼる塾”論インタビューなどなど企画も満載で、いろんな角度からぼる塾を満喫できる1冊となっています。

【著者プロフィール】

2012年結成の田辺智加、酒寄希望によるコンビ「猫塾」と、2016年結成のきりやはるか、あんりによるコンビ「しんぼる」が合流し、2019年より「ぼる塾」として正式に活動を開始。翌年の2020年には『女芸人No.1決定戦 THE W』で決勝進出を果たした。

『老いてきたけど、まぁ〜いっか。』(野沢直子) ダイヤモンド社
 発売:2022年10月06日 価格:1,540円(税込)

何歳になっても自分が好きだと思える洋服を着る、「やりたくはないが、やらなければいけないこと」なんて極力手を抜いていこう……。人生の最終章を思いきり楽しむための、野沢直子流「老いとの向き合い方」。同時期に「老い」をテーマとした小説『半月の夜』を刊行した野沢さんが、本書では還暦を目前にした自身を俎上に載せて、「自由な老後」のすすめを綴ったエッセイ集です。

【著者プロフィール】

1963年、東京都生まれ。1983年より芸能活動をはじめ、女性芸人としてダウンタウン、ウッチャンナンチャンらとレギュラーを務めた『夢で逢えたら』などで人気を博す。1991年に日本での活動を休業し渡米。結婚・出産を経て、現在もアメリカ在住のまま、現地での芸能活動や年に数か月日本に滞在して番組出演などを行っている。

『今宵も、夢追い酒場にて』(薄幸) 幻冬舎
 発売:2022年09月09日 価格:1,430円(税込)

大酒飲み、ヘビースモーカーなやさぐれキャラとして大注目の「納言」のみゆきこと薄幸さんが、独特の文才を生かし満を持して初の著書を上梓! 彼女の日常に欠かせない「芸人×お酒」のふたつを合わせたまさに酔いどれエッセイ。オズワルド、インディアンス、ジェラードン、空気階段といった同じ第7世代から、カズレーザー、尼神インター渚、バイク川崎バイク、トレンディエンジェルたかしら先輩芸人との、酒にまつわるエピソードが満載! 一方で、かつて挫折した役者の夢、今は会えないあの人への想い、普段は口にしない相方への思いなど意外な本音も酔いにまかせて(?)綴っています。

【著者プロフィール】

1993年、千葉県出身。2017年に安部紀克と男女コンビ「納言」を結成。薄のヤンキーキャラを生かしたネタでブレイクし、2018年から4年連続で『M-1グランプリ』準々決勝進出を果たしている。芸名の「薄幸(すすき・みゆき)」はビートたけしの命名。

『カニカマ人生論』(清水ミチコ) 幻冬舎
 発売:2022年08月24日 価格:1,540円(税込)

主婦にして稀代のエンターテイナーとして人気を集める清水ミチコさんの初めての自伝エッセイ。すぐに「気負け」して泣いてしまう、気の小さい子供だった飛騨高山時代の、家族や友人との懐かしくも笑えてせつないエピソードから、上京して、自分の弱さやセコさにぶちあたりながらも、永六輔さんタモリさん南伸坊さんはじめたくさんの人たちと出会い、武道館でライブをおこなうまでのさまざまな経験を、カラッと笑えてしみじみ沁みる筆致でお贈りします。

【著者プロフィール】

1960年、岐阜県生まれ。1983年よりラジオ番組の構成作家兼出演者として活動を開始。1986年からライブ活動をはじめ、1987年の『冗談画報』でテレビデビュー。同年に『笑っていいとも!』へのレギュラー出演で一躍人気を集める。女優としても多数の映画・ドラマに出演している。2021年に「第13回伊丹十三賞」を受賞。

女性芸人たちが辿ってきた時代の道筋も見えてくるノンフィクション!

最後にご紹介するのは、女性芸人自らが発信するエッセイ集ではなく、フリーライターの西澤千央さんがテーマを持って女性芸人へのインタビュー行った連続企画の書籍化です。昭和から平成、そして令和と、時代とともに変わってきた、変わらざるを得なかった「女性芸人の立ち位置」を、9組の女性芸人が語るノンフィクションです。

『女芸人の壁』(西澤千央) 文藝春秋
 発売:2022年11月09日 価格:1,650円(税込)

時代とともに世間の価値観が変わり、現代のエンタテインメント業界ではコンプライアンスの言葉の下、さまざまに表現の規制を受けるようになりました。
女性芸人といえば、当たり前のように容姿や体型をいじられ「非モテ」キャラを求められた時代は過ぎ、それを笑うことに批判さえ集まるのが現在のお笑い業界です。しかしそのポジションを与えられたことで強烈なインパクトを残し、ブレイクのきっかけを掴んだ女性芸人も多数存在します。
そんな「個人としての感覚」と「テレビが求めるもの」、そして「社会の流れ」という三つの評価軸の中に揉まれながら生きてきた女性芸人たちへのインタビュー企画としてWEB連載された、西澤千央さんによる「女芸人の今」の書籍化が本書です。
山田邦子、清水ミチコ、中島知子、青木さやか、ホルスタイン・モリ夫、鳥居みゆき、日本エレキテル連合、加納愛子(Aマッソ)、薄幸(納言)ら、大御所から新進の女性芸人のみなさんが語る「女性芸人」としての葛藤は、そのまま日本社会の中での「女性」の立ち位置の変遷と言えるのかもしれません。

【著者プロフィール】

1976年、神奈川県生まれ。フリーライターとして雑誌、WEB等で活躍中。

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