新たな「ブンゲイスター」候補、『第三回ステキブンゲイ大賞』最終選考作品決定!!

一般文芸作品に特化した小説投稿サイト「ステキブンゲイ」。
2020年のサイトオープンと同時にはじまった、その投稿作品を対象とした文芸コンテスト「ステキブンゲイ大賞」も、早いもので3回を数えます。
このたび、その「第三回ステキブンゲイ大賞」の最終選考作品が発表となりました。
応募総数769作品の中から、最終選考へと進んだのは以下の4作品です(順不同・敬称略)。
それぞれの作品の導入部分のあらすじをご紹介してみますので、興味を惹かれた作品はぜひ読んでみてください。あなたのアンテナがキャッチするのはどの作品でしょうか?

『湯気を辿る』牛山綾
文具メーカーで営業職を務めている元(はじめ)は、この春、人事異動でほとんど馴染みのない東北にある支店に転勤となった。自分のために開かれた歓迎会で泥酔してしまった元が翌朝目覚めると、そこは同僚の女性・樹(いつき)の家。新居の住所も伝えられないほどに酔った元を、仕方なく樹が連れ帰り介抱してくれたのだった。これ以上ないほどの恥ずかしさを覚えながらも、樹に誘われるまま朝食を共にする元。しかし――。畳の匂い、猫のひげ、サンルームに差し込む陽光、炊き立ての白米と味噌汁の湯気。それらが詰まった、初めて訪れたはずのその家に、元は妙な心地よさを覚えてしまい……。

『隠れかくり湯営業中』ユメノ
大学受験に失敗してから、誉(ほまれ)は家と夜勤のアルバイト先との往復だけの毎日を送っていた。ほんの少し前までそこに「預りものの兎の世話」も加わっていたのだが、その兎は寒い冬の朝に死んでしまった。そんなある日、バイトから帰宅する誉の自転車の前に飛び出してきた影。急ブレーキで止めた自転車のライトに照らされたのは、驚いたように誉を見上げる1匹の兎だった。死んだ兎と似た姿が気になり、追いかけた誉がたどり着いたのは、かなり前に廃業したはずの銭湯。「かくり湯」と知らぬ名の看板が掲げられ、建物も記憶にあるものとは違うが、こんな時間に灯りを点け、営業中の札もかかっている。誉は中に消えたはずの兎を追って、恐る恐るその奇妙な銭湯に入っていった……。

『姉が壊れた。』月島真昼
ある休日、用事で一人暮らしの姉の部屋を訪ねた敦。幼い頃から親の期待に応え続けた姉。その優秀さで出来の悪い弟を威圧し続けてきた姉。5年前、名のある大学を卒業し大手企業に就職、順風満帆な絵に描いたような人生を送るその姉の由美は、いままさに煉炭自殺を図ろうとしているところだった。パニックを起こしたように泣き続けた末に、ようやく由美が寝入ったあと、手がかりを求めて姉のスマホを調べる敦。すると、その日に届いた直属の上司らしい平岡課長なる人物からの未読メッセージが並ぶ。そしてちょうどそのとき入ったその平岡からの着信に出ると、電話の向こうからは恫喝まがいの怒鳴り声が聞こえてきた。姉のパワハラ被害を悟った敦は……。

『カチューシャ――過去と未来をつなぐモノ――』ナカハラ忠彦
27歳の拓馬は、短気が災いして仕事を辞め現在求職活動中。小学校の同窓会に出席したものの、腫れものでも扱うように接せられ気晴らしにもならなかった。その夜、親元は離れたもののもともとの地元である横浜・根岸で暮らす拓馬は、帰り道で小学校低学年くらいの少女と出会う。心細げにすすり泣く少女を放ってもおけず家まで送ることにした拓馬。しかし、奇遇にも中学時代まで拓馬も家族で暮らしたそのマンションの、自分の住むはずの部屋には別の表札がかかっていると少女は困惑する。そして――少女が名乗った遠海結(えんかいゆい)という名前。それは20年前に行方不明となった拓馬の幼馴染みのものだった。

――この中から、『第三回ステキブンゲイ大賞』に輝くのはどの作品か?
注目の結果発表は、以下の選考委員のみなさんによる最終選考を経て、6月13日(火)ごろ、「ステキブンゲイ」サイト内で行われる予定です。

【選考委員】(敬称略)
中村航(小説家)
加藤千恵(歌人・小説家)
いぬじゅん(小説家)
カモシダせぶん(書店員芸人/松竹芸能所属)
河口雅哉(谷島屋本沢合店/三方原店店長)
増山明子(出版プロデューサー/元明正堂アトレ上野店店員)
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ステキブンゲイ編集部

また募集期間中のページビューおよびユニークユーザー数がもっとも多かった作品に贈られる「読者賞」も合わせて発表の予定です。
なお最終選考作選出までの経過なども含めた詳しい情報は下記よりご覧いただけます。

第三回ステキブンゲイ大賞 最終選考までの経過発表(ステキブンゲイ)

過去2回の『ステキブンゲイ大賞』から生まれた書籍をご紹介!

これまで第一回、第二回の『ステキブンゲイ大賞』からは、現在までに3冊の書籍が誕生しています! 次なるブンゲイスターの誕生を待ちながら、こちらの作品を楽しんでみてはいかがでしょうか?
(すべて発行・ステキブックス/発売・星雲社、価格はすべて税込みです)

【第一回】

残念ながら大賞受賞作品は出ませんでしたが、作品のクォリティアップを目指し改稿を重ねた末、優秀賞受賞の2作品が書籍化されました。就活と偶然の再会によって新しい自分に気づくひとりの女性を描いた『サンティトル』は今年舞台演劇として上演されました。また「家族のエピソードを描くコミックエッセイ作家」というユニークな主人公のホームコメディ『四度目のうぶごえ』は、どんなに近しい間柄であっても心と心には距離がありすれ違うこともあるという、ちょっと辛口なメッセージが魅力の作品でした。

『サンティトル』一ノ瀬縫(2022年11月30日発売/1650円)
★優秀賞受賞作品(受賞時タイトル「正直な空白」)

進路も決まらないまま大学を卒業し、4月を迎えてしまった高柳芽美。それが気になって身が入らず、ミス続きだったバイトもクビになってしまった。日比谷のファッションビルの屋上、いよいよ追い詰められた芽美が、ついフラフラと転落防止の柵をまたぎ越えたそのとき――。「タカメ?」と、懐かしいどころか忘れかけていた呼び名を投げかけてきたのは小学校時代の同級生、ナルセだった。10年前の、飄々とした胡散臭い男子のイメージのまま成長していたナルセにペースを握られ、気づけば芽美は、彼が運営しているというサービス系のアプリで、なんでも屋のようなバイトをすることに。もう「学生」は終わってしまった。まだ「社会人」とは呼べない。なりゆきで始めた仕事をこなしながら、芽美は自分の将来を模索する。宙ぶらりんの時間を過ごす女性の、小さな自分探し。

決して完璧ではなく、どこか不器用で、けれどどうしようもなく温かい、そんな人々を描きたいと思いました――『サンティトル』一ノ瀬縫さんインタビュー(「ナニヨモ」2022年12月2日掲載)

『四度目のうぶごえ』森春子(2023年2月17日発売/1650円)
★優秀賞受賞作品

「わが家の小さなできごと」を描いてきたコミックエッセイ作家の相田洋子。特に幼い三兄妹によるほのぼのエピソードやプチトラブルが好評を博し、長くシリーズとして人気を集めている。そんな洋子のもとに届いたドラマ化のオファーが、平和に思えていた家族の中に波風を立てるとは! 本の中に描かれるキャラクターの年齢から大きく離れ、すでに微妙なお年頃となった兄妹たち。とりわけ兄妹の真ん中、反抗期真っ最中の長女・桃果にはなんだか特大のわだかまりがあるようで……? たとえ家族といえども、本当の気持ちは口にしなくちゃわからない! ちょっぴりビターなホームコメディ。

兄弟や家族に、ちょっとだけ苦い思いがある人には、どこかに共感してもらえるんじゃないかと思っています――『四度目のうぶごえ』森春子さんインタビュー(「ナニヨモ」2023年2月17日掲載)

【第二回】

初の大賞受賞作品として刊行された『コイのレシピ』。実在する、高校生による創作和食コンテストをモチーフに、過去の自分を乗り越えようとする高校生男女の挑戦を、ほんのりした恋模様とともに爽やかに描いた作品は、ネットの口コミなどで大きな反響を集めました。

『コイのレシピ』塚田浩司(2022年10月5日発売/1540円)
★大賞受賞作品(受賞時タイトル「WASHOKU ~コイ物語~」)

長野県に住む高校1年生の瀬野綾音は、情熱を捧げていたアイドルオーディションの最終審査に落選した半年前から空回りを続けている。新たな夢はそう簡単には見つからず、興味本位で近づいてきた友人を一喝してからクラスでも浮いている。だから今日も、使われていない第二理科室で水槽にたゆたう鯉を眺めながらひとりで弁当を食べる――はずだった。思わぬ闖入者は、イケメン・秀才・スポーツマンで同学年でも群を抜いて目立つ存在の櫻井潤。しかも潤は手製だという弁当を差し出して、思いの丈を綾音にぶつけてきた。「一緒に全日本高校生WASHOKUグランプリに出てほしいんだ」、と。……え?――思いもよらぬ展開で「和食の甲子園」とも呼ばれる舞台を目指すこととなった、アイドル志望だった女子高生と料理上手な男子高校生の悪戦苦闘を描く。栄冠の行方とその先は、「コイ」だけが知っている!?

老舗料亭に生れた潤には、自分の生い立ちも多少は反映されてます――異色の料理人作家・塚田浩司さん『コイのレシピ』でデビュー!(「ナニヨモ」2022年10月7日掲載)

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